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岩手旅行記(5)-山口集落で姥捨のファクトを知る-
遠野の旅の記録もこれで最後だ。
遠野土淵山口集落を訪ねた。遠野物語は、柳田国男の著作だが、その成り立ちは土淵山口集落の出身の佐々木喜善(ささききぜん)の口承である。佐々木氏は本集落の出身であり、数々の怪異を体験し、柳田翁に語った。山口集落はその舞台だ。
遠野物語を読むには
ちなみに、下が京極夏彦によるRemixと原文を併載したもので一番おすすめ。(原文は難しく、水木しげるの漫画かこれが良いと思う。)
遠野駅から距離があるから、この集落を旅程に入れない人も多いかもしれない。ただ、僕はここに来たかった。
見どころなどは以下を参照してほしい。
土淵山口集落に到着!
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車をしばらく走らせると分岐に出会う。分岐には看板がある。車を降りて写真を撮り、どちらへ行くかを決める。
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この分岐を右に向かうとデンデラノへ向かう看板が見えて来る。
デンデラノへ到着
道を進むと、拓けた空の下に橋がある。
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橋には男が老人を背負うシルエットが刻まれている。ここがかつての姥捨の野なのだ。
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余談だが、先日長野から松本に向かう途中で姥捨という駅があった。絶景の駅だ。ただ、そこは名前とは裏腹に姥捨山的なものが存在したという事実がないという。
ただ、デンデラノは事実が存在したと思しき場所なのだ。
姥捨についてはこちらの動画を見てほしい。
姥捨のイメージが覆った
ただ、そう聞くと、残酷な東北の口減らしをイメージするかもしれないが、実際はそうでもなかったようだ。以下を見てほしい。
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僕はこうした風習は動けなくなった老人を泣きながら捨てるものかと思っていた。一人山の中で死を迎える老人のイメージがあった。
ただ、この記載からはそうした雰囲気は感じられない。ひとりでもなく、家族と隔絶されるわけでもなく、里に降りてくることすらあったのだ。
ただ、そこが「ハカ」であることは間違いなく、ハカを出ることをハカダチ、戻ることをハカアガリと書く。(ハカを仕事の意味の方言という説もある)
これは僕の中で認識がひっくり返った体験だった。ただ、であればどうしてわざわざデンデラノに運んだのかという疑問は拭えないが。
大きな枯れた枝が道を塞ぐ雪の坂道を登り、車を降りてデンデラノから遠くを見渡す。
人が住んでいた感覚はない。ただ、自然の広がりがあるだけだった。
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余談だが、デンデラノはカタカナ表記でなんだか気になる。柳田国男は蓮台野といったらしいが、風葬地の代表格に蓮台野があるからその連想は誤っていなさそうだ。蓮台野が訛ったのだろう。レンは口に出すとデンに聞こえる。ダイはaiがeに転訛するからデンデーノ。声調を整えるのにデンデラノになったのかなと思った。
雪!
デンデラノで呆けていると急激に寒気が流れ込んできた。遠野物語で有名な孫左衛門の家の跡地や佐々木家(子孫の方がまだ住んでいる)の脇を通り抜け、山口の風車を眺めていたら、一気に雪が降り出した。
まだ15時台でこれからしっかり観光するつもりだったが、突然あたりが暗くなる。人気もなく、雰囲気のありすぎる場所なので迷いたくないと感じた。とりあえず暖を取りに車に乗り、直進した。この先は天狗がでた峠だと気が付き引き返す。
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念は残るが、そのまま、帰路につくことにし、車を走らせ、宮守のメガネ橋につく頃には雪は減っていた。
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高速に乗った。雪の高速は向かってくる雪の中を突き抜けるような感覚に襲われた。16時すぎには前が見えにくいほどになった。スタッドレスタイヤの偉大さを思い知ったのだった。
到着した盛岡でわんこを食べたのはこの後の話である。
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