短編 ツマガリ
私たち2人を繋いでくれた物に、お菓子がある。
まだお付き合いをする前、私は彼女に本を貸した。本と共に帰ってきた物、それはお菓子とひとつの手紙だった。
手紙にはお礼と、今の私たちの関係が彼女にとって大きな出来事になっていることが書いていた。
そして入っていたお菓子は彼女が1番愛したお菓子だ。
私はその中のクッキーを一つ口にして、手紙を読んでいた。
よくわからないが涙が出た。人からストレートに感謝を受け取ることも、お菓子をもらったこともなかったから、嬉しかったんだと思う。
その1ヶ月後、自分がお返しの手紙で告白をし、付き合うことは私には予測もして無い未来だっただろう。
もしかしたら、そのお菓子と手紙がなく、ただ本だけ帰ってきたらどんな未来だったのか。
そして付き合って半年の記念日に、そのお菓子屋さんの本店に2人で行った。
そこは唯一、喫茶がありケーキは本店でしか食べれないということで、2人の大好きなお菓子のケーキ、美味しいに決まっていると思い足を運んだ。
着いた時、彼女の目は、キラキラしていた。
あっ。本当に楽しみにしてたんだな。
そう感じた。
2人で四つのケーキ。全て別の種類。
私はシフォンケーキを食べた。
しっとりふわふわ、雲を口の中に入れているのかというくらい柔らかい感触は、過去食べたケーキを過去の物にした。
今でもそのケーキは人生の1番のケーキです。
そこには色々なタイミングで行くことになる。
運動したいねという話をしたり、硬いケーキを切るのに苦労する彼女を見て笑ったり、少し不機嫌で、ケーキを写真で撮ろうとしたら怒られたり、砂糖入れすぎないように心配されたり、帰りの電車でお互いの家族のことを話したり、話しに夢中になって電車が往復してることに気づかずまた同じ駅に着いて笑いあったり。
その思い出の喫茶店は先月に閉まってしまった。
コロナの影響かな。
すごく苦しかった。また一つの思い出の場所が消えて、本当に思い出の中でしか生きられないのだ。
私はすぐにnoteに綴った。
この多くの思い出たちを忘却しないために。
沢山の思い出をありがとうございました。
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