短編 金木犀
家の近くに金木犀の木がある。
学生、習い事、遊びに行く時、いつもそこにある木は私に秋を教えてくれる。
しかし近くにあるものこそ、気づかなかったり、気に掛けられなくなるものだ。
彼女はうちに遊びにきた時、その金木犀の木が花を咲いていることを教えてくれた。
帰りに送る時、金木犀の場所を教えてくれた。
彼女は花のことをよく教えてくれた。教えてくれるたびに私の心のノートにはその名前も、意味も綴られては、今でも良く覚えている。
月に一度、私達は記念日に手紙を書き交換をしていて、その時私は金木犀の花言葉を調べた。
「気高い人」
その花言葉に彼女はぴったりだとおもった。彼女に似てる花だねということを書いた気がする。
「初恋」
という花言葉には、彼女への気持ちは初恋のようにずっと燃えていることにも気づいた。
私は金木犀の前を通り過ぎると、その手紙のことを思い出す。
どんなことを書いたかは、正直うろ覚えだけど、でも、この花だけは私は今でも大好きです。
香りとは怖いもので、いろんな気持ちや思い出をフラッシュバックさせる。
でもこの香りを嗅がずして、私は秋を感じられなかった。
彼女と過ごした秋は、今も葉の色のようには色あせず、鮮明に、カラフルに、色づいている。
また花のことを、教えてほしいと思った。