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初期設定の愛 16.絶望は半分だけ

 高校に行っても女神はいない。
女神はきっと別の高校へ進学したのだろう。
 
高校生になり、「学校へ行く意味」「生きる意味」それがない。
割とすぐに気がついた。高校はつまらないのだ。
 
このころ『死」について考え始めた。死ぬのが怖くなった。
いつか死ぬ。なんだか絶望的な気分だ。
 
高校の休み時間、早弁(注1)するか、ボケっとするかだ。
ひとりの時間が多かった。
自然に『死』に想いを馳せる。
 
いてもたってもいられない。
学校帰りの最寄り駅、本屋へ駆け込んだ。
手持ちの資金で、ちょこちょこ本を買う。
『守護霊』『死後の世界』『占い』『手相』、目に見えない世界の本だ。
 
『三島由紀夫の霊界からの大予言―地球は死の星と化し、生命は他の惑星へ移住する!』 (太田千寿著) 
 
この時すでに故人である三島氏の霊界からのメッセージ。当時の新刊本だ。
 
この本をむさぼるように読んだ。

ここでは、ネタバレになるので、内容には触れない。
当時の私のバイブルだ。内容的に信じるに値する内容だと感じた。
妄信した訳ではない。
ただし、少なくとも、学校の教科書よりは信頼を置けた。
 
現在に比べれば、この手の情報は限定的だ。インターネットはない時代だ。
逆に、それが幸いしたのではないか。
 
限られた情報の中で、いったんの結論を出そうと考えたのだ。
そのうえで、前を向いて進みたい。そんな思いだったと思う。
 
人はどうも、生まれ変われるらしい。前世もあるらしい。しかも守護霊が守ってくれている。占いで自分の運気もわかる。
なんだ、安心じゃないか。
 
なんだか、気が楽になっていった。
 
寝る前に 『守護霊様、本日もありがとうございました。』
小声でむにゃむにゃ唱える。 ベットの上で、正座して手を合わせ、目をつむり祈る。そして寝る。
 
このころ開始したことだ。
 
読んだ本に、そうすると、守護霊が喜んで、しっかり働いてくれると、書いてあったのだ。
守護霊も元は人間だったらしい。我々と何も変わらない。
礼をつくしたい。そんな気持ちもあるが、平たく言えば、守ってもらいたいのだ。
 
いつからか、ベットの上に、横になって心の中で唱える方式に変更した。

今は、入浴中やトイレで済ますこともある。手も合わせない、簡易バージョンに変更したうえで、今でも続けている。たまに忘れるが。
すでに守護霊とはツーカー(注2)の関係なのだ。
 
女神はきっと、絶望などしていないだろう。希望に満ちて生き生きと高校生活を送っている、そう確信している。だから、“絶望は半分だけ” だ。
 
注1:2時間目の終わりの休み時間に、お弁当を食べること。
注2:すでに死語である。昭和中期から後期にかけて使われたビジネス用語、お互いをよく知る気心が知れた2人の人間の間柄を指す。語源は諸説あり。

 17.ドロップアウト未遂 へつづく


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