初期設定の愛 36.隠密と茶屋娘
風をかすかに感じている。
どこか屋外を歩いている。
ん~、水かな、水がある。
池の水か、いや海のようだ。右手に海が広がる。
ぼやけた映像はしだいにクリアになる。
波の高さ、 潮の満ち引きをざっと計算したあと、沖をゆく舟を見ている。
頭の回転が速い、理系脳の男性、頭脳明晰のエリート。
理路整然とした思考回路だ。
少し引いた視点になる。
清水の次郎長の映画とかドラマに良くでてくるような、江戸時代の粋な旅姿だ。
ちょんまげ、笠をわきに抱え、草鞋を履いている。
伊達男、若くていい男だ。自分に自信がある、自己肯定感の高さを感じる。
旅人か?
いや、なにか、正義感、使命感が強い。仕事中だろう。
その時、 スパイ と頭に浮かぶ。
情報収集をしているようだ。
場所は三保の松原、これは間違いない。
遠くに富士を望む海辺、左手に松原がある。
ここへは今世何度かいっている。
海岸線を一人で歩きながら、情報収集をしているようだ。この場所での情報収集はルーティーンのようだ。定期巡回だろうか。海岸線の警備上の情報収集だろう。
担当エリア そんな言葉が浮かぶ。
周りをやや警戒しているように感じる。
不審人物と思われないように気をつかっている。
きっちりした身なりも、このためのようだ。
(シーンがかわる)
街道筋にたつ、一軒の茶屋。
ここが目的地のようだ、茶屋から赤い着物の女の子が、慌てて飛び出してきた。うれしそうだ、はしゃいでいる。
茶屋の仕事をおっぽり投げて、10メートルほどかけてきた。
そして、私の目の前に立ち、一心に私を見つめてる、両手を胸の前に合わせ、見つめている。距離は非常に近い。
かなり親しい関係のようだ。
前世の筆者はこの娘に会いに来たようだ。こころが高鳴っているのがわかる。これはどうも両想いだ。
この赤い着物の娘、自分を好いている。
そんな気持ちを利用して、諜報活動を手伝わしている。そんな感じだ。
こちらは、あくまで仕事のはずだった。
そんなイメージがわく。
そんな関係が何年続いたのだろうか。
いつしか、私もこの娘に特別な感情を抱くようになったようだ。この娘、年の頃は12―15歳くらいか。出会ったころは、まだ子供だった。だんだん大人の女性へと成長したのだろう。
自分は大人の男である。しかも武士階級の隠密、在所の江戸と任地の駿河をいったりきたりしているイメージだ。あまり目立ちたくない。ひっそりと活動している。
年の差、身分の差、出世への渇望、体制への忠誠心、見事に洗脳状態である。
リスクはおかせない。いつしか、この娘から距離を置くようにした。本気になってしまったようだ。
自ら身を引く決断をしたようだ。仕事、出世を優先したのだろう。
この娘は、いつまでも純粋に私を待ち続ける。 何か将来の約束をしたのか? 仕事のためなのか? 歓心を得るためにだましたのか? わからない。はっきりとはしないが、いたしかたない事情があったのだろうか。自分の中に何かやましさ、後ろめたさを感じる。
強烈な罪悪感に押しつぶされる。 なんてことをしてしまったんだ。後悔、懺悔。
自然に流れる涙。そして、嗚咽がもれる。こんな涙ですべてか浄化できるのだろうか。できやしない。
まだ、この娘は待っている。私を信じて今でも待っている。
この娘は一心に、私を慕い、信じている。
この前世の自分もこの娘を愛している。
この二人のストーリーは今世に持ち越したのか。
それともこのストーリーには続きがあるのか。
わからない。
この生涯では、結ばれていないような気がする。
必ず、迎えに行きたい。
信じて待っていてほしい。
思わず、そう伝えた。 今世の筆者からの嗚咽にも似たメッセージだ。
これは、昨年8月のヒプノセラピストAさんのセッションである。
すでに記述した、”魂の分離” (注1)のイメージを見たあとに飛んだのが、この江戸時代後期ごろの前世である。
ちなみにこのセッションは動画化していただいている。
ご興味あるかたは動画もご覧ください。
後に、自分なりに調べたところ、
幕府の正式な役職に”目付”という役職があり、この役職が幕府の隠密活動、諜報活動を担当していたようだ。その配下に”小人目付”とか”徒目付”といわれる役職に就く武士が数十人程度いたようだ。こちらも正式な幕府の役職で、代々武士が世襲していた。
また、幕府天領であった駿河を担当とする駿府目付と、その配下が数人ほど存在したようである。彼らは、文献によると江戸と駿河を定期的に往復しながら、任務にあたっていたようである。
小生のヒプノセラピー中に得たイメージでは、担当地域と在地の江戸をいったりきたりしていたイメージなので、おそらく、駿河目付傘下の小役人スパイだろうか。
茶屋は江戸のような気がする。江戸での任務もあったのだろう。
また、目付とは別に御庭番という役職もあったようで、吉宗の時代に創設され、将軍直属の隠密で、将軍の命を受け地方へも出かけていたようである。
実は、江戸時代の茶屋というのは、幕府の隠密行動の隠れ拠点として使われてることがよくあったようだ。呉服屋なんかもそうらしい。呉服屋で変装衣装一式、着替えをして任務にあたる、そんなことのようだ。
身分を隠して、茶屋のおやじ、あるいは茶屋娘として隠密行動、情報収集をしているケースがあったようなのだ、潜入捜査のような感じだろうか。
そのような茶屋で生まれた娘は生涯、自然とそのような任務にあたる運命であったであろう。当然、御庭番や目付配下の隠密とも自然につながる。
また、目付や御庭番の支援活動、情報収集の手となり足となり行動していたのではないかと想像できる。
調査の中で一つ面白い情報を見つけた。
当時の茶屋娘はアイドル的な人気となる娘もいたようだ。
”笠森お仙”
浮世絵にも描かれた、美人のようだ。
20歳の時、忽然と姿をくらました。
実はなんと御庭番と結婚したようなのだ。
裏の任務がきっかけで恋仲になったのであろうか。
想像を掻き立てられる。
そんなことが史実としてあるようだ。
詳しくは下記サイトに譲る。
注1:下記もご一読ください。