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初期設定の愛 17.ドロップアウト未遂

どうもやる気がでない。
高校2年春、新クラスにも当然馴染めず、父に正式に相談した。
高校を止めて、大検をうけて大学へは進学したい。そう伝えた。
 
あくまで、前向きな選択であるという印象操作のため “大検” とか “大学” とかの言葉を使った。
“大検” のシステムを良く知らないし、 “大学” への進学にも、それほど興味がない。

そもそも何のために高校へ行くのかがよくわからない。
義務教育とやらではないらしい。それくらい知っていた。
高校へ行くことが、それほど重要なことには思えなかった。
 
嘘ばかり、まやかしの世の中だ。
田舎の町工場の次男坊、どーでもいい人生だ。
無理する必要もないのだ。
 
真剣だった。高校は行く意味がなかった。
  
でも、やめさせてらえなかった。
 
まあ、そりゃそうだ。
 
お前が高校やめて、一人で生きてくことなんかできないんだ。
親に面倒みてもらうしかないんだ。
今は辛抱して、大学までは卒業しろ。
その後はお前の自由だ。
 
そんな趣旨のことを言われた。
 
一字一句、予想通りの言葉。
 
反対されて安心した自分もいる。
 
俺は情けない男だ、心底そう思った。
 
とにかく自分に自信がない。自己評価が低いのだ。
 
 
 
ちょうど、そのころだ。
学校帰りに、女神とすれちがった。
中学卒業以来だから、ちょうど1年とちょっとぶりぐらいだ。
 
片道1車線の地元の県道だ、歩道はない。
車道に少しはみでて、全速力でペダルをこいでいる。
結構早いな。運動センスの良さを感じる。
 
女神は、そのまま見えなくなった。
バイトかな …。私には気がいてないようだった。
 
ブレザーがよく似合う。どこの学校だろうか。
あまり見ない制服だ。
自分の使う電車の沿線ではないようだ。
 
やめろ、考えるな。 そう言い聞かす。

18. 回転寿司 へつづく
 


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KOJI
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