利己から利他へ。アカボシ珈琲店のカヌレが僕に教えてくれたこと【琴平の旅レポート】
2022年の初旅は、香川県・琴平町(ことひらちょう)へ。
TABIPPOが主催するモニターツアーで、1月21〜23日の丸々3日間、満喫した。
琴平町はもちろん、香川県を訪れるのも初めて。久々に仕事から解放されて、遊び倒したので、めちゃくちゃ楽しかった。が、ただ楽しかっただけではない。たくさんの発見や学びがあったので、忘れないうちに書き残しておきたい。
1.「消費する旅」から「生産する旅」へ。新たな旅のカタチ
モニターツアーのコンセプトは「好きがコトひらく町」。琴平で、自分の「好き」をとことん追求している「人」に焦点を置いたプログラムだった。
そのなかで感じたのが、つくることの楽しさ。このツアーに参加していなかったら一生やらなかったかもしれない、様々なものづくりの体験をした。
香りを楽しんだガラムマサラ作り。
竹をひらく?ことができずに悔しさが残った丸亀うちわ作り。
キャラが濃すぎる小麦の妖精?に教えてもらったうどん作り。
こだわりを込めたノートが出来上がったオリジナル文具作り。
永遠に完成しない気がしたけど、すごくいい感じになったブレスレット作り。
スパイス作りの何がそんなに面白いのか、ビーズの魅力がどこにあるのか、ピンとこなかったし、今も正直よく分かっていない。だけど、ガラムマサラ作りを教えてくれたともやさんがスパイスの魅力に取り憑かれていること、ヒトツブビーズ店の三好さんがビーズを心から愛していることは十分に伝わってきた。
好きなものについて語っている人の目は美しい。こだわりを持って仕事している人の話は面白い。彼女たちを見ているだけで楽しいのだ。
こうしたものづくり体験を通じて、新たな旅のカタチが見えた気がした。
今までの自分の旅はどんなものだっただろうか。
ガイドブックで星3つの名所に行く。訪問国数を稼ぐため、次々と町や国を移動する。インスタ映えするカフェを巡る。
これを否定するつもりはない。だけど、もっとゆったりと地域に向き合う旅もありではないか。というより、そういう方がよりサステナブルで今後のトレンドになっていきそうだ。
「消費する旅」から「生産する旅」へ。どんな特徴を持った町なのか。どんな人たちが暮らしているのか。それらを見つめたうえで、自分はその町とどのような関わりを持っていきたいかを考える。旅した瞬間だけ一時的に関わるのではなく、旅人と地域が長期的な結びつきを持っていく。そんなイメージだ。
2.旅人として地域と、住民とどう向き合うか。
楽しい体験ばかりのモニターツアーだったが、胸にグサッと刺さる言葉もあった。
それは、ボードゲームを企画するワークショップで出会ったカフェKotierのりょうさんのお話だ。
ボードゲームを作ろう!というワイワイガヤガヤな感じかと思いきや、わりと真剣な雰囲気だった(ワイワイ感もあったけど)。ボードゲームを企画するにあたり、旅人が地域住民に求めること、地域住民が旅人に求めることをグループで深く考えていくなかで、りょうさんに大きな気づきを与えてもらった。
地域住民とは誰?という問題だ。気軽に「現地の人と触れ合いたい」とか言うけど、現地の人って誰?という話だ。
一言で現地の人と言っても、観光業に従事する人と、一般市民がいるよねと。たいてい旅人が触れ合えるのは、観光業に従事している人であり、彼女たちは旅人ウェルカムな姿勢だよね、と。じゃあ一般市民は旅人のことを、自分たちが暮らしている地域を見知らぬ人が観光で訪れることを、どう思っているのだろうか、と。
うーん、耳が痛いというか、衝撃というか。
観光地にお金を落としても、潤うのは観光客に従事している人たちで、一般市民にはほとんど好影響を与えていないこと。好きな事業で琴平を盛り上げていこう!という移住者と一般市民の間に大きな壁が存在すること。今回のモニターツアーで交流した素敵な人たちのほとんどが移住者であること。
考えてみれば確かにそうなのだが、そこまで深く考えてこなかった自分がいた。現地人を一括りに捉えていた。
「消費する旅」から、「生産する旅」へ移行したとして。旅人として、地域に少なからず貢献したいという思い。その先にいるのは、観光業に従事する人だけなのか。それとも現地で生まれ、育ち、日常生活を送る一般市民も含まれるのか。
ここで結論を言うことできないけど、大きな宿題をもらった気がした。旅人として生きるなら、心に留めておかなければいけない。
3.旅は、人を利他にする。
このままだとタイトル詐欺感が否めないので、最後にカヌレの話を。
カヌレは、フランスの伝統的な焼き菓子で、めちゃ美味しくておすすめなんだけど、それは置いといて。
最終日の最後のフリータイム。
琴平の旅を振り返る時間をつくりたいと思い「アカボシ珈琲店」に入った。素敵なカフェで過ごす時間自体が最高だったんだけど、何よりカヌレがうまかった。
そこでお土産として、カヌレを4つ買った。もちろん、全部自分で食べるつもりで。
でも結局、4つのカヌレのうち、僕が食べたのは1個だけだった。1つはともに旅した仲間に、あとの2つはシェアハウスで一緒に暮らしている2人の友達にあげた。
琴平の良さを、カヌレの美味しさを伝えながら、シェアハウス仲間と一緒にカヌレを食べた。
その瞬間、ちょっと心が豊かになったような気がした。琴平を旅して、利己的な自分に、少しだけ利他の精神が宿ったのかなと思った。
なぜ今回のモニターツアーに参加したのか。綺麗事ならいくらでも言えるだろう。応募フォームにも多少、いや、かなり着飾った文章を書いたと思う。
でも本心は「無料で旅できるから」である。
僕だけではない、はずだ(たぶん、みんなそうだよね?)。「無料」という言葉は圧倒的に魅力的だ。往復のバス代、宿泊費、たくさんのアクティビティ体験費、ほとんどの食費が無料。最高すぎる。
だから応募した。自分の利益のことだけしか考えていない、まさに利己的な人間だった。
そんな僕も、ちょっとだけ人のために行動することができた。4つのカヌレのうち、3つを分け与えることができた。
旅で色々な経験をして、心が豊かになり、利他的になったのかもしれない。
旅と利他。何か聞き覚えがある気がする。
今回の素晴らしい(無料の!)モニターツアーを企画してくれたTABIPPOが掲げるキーメッセージに、こんなものがあった。
いやー、やられた。TABIPPOの言ってる通りじゃん。
旅は、人を利他にするんだね。すごいなあ。
4.琴平は、また来たい場所。
色々書いたけど、最後に。
琴平を好きになってしまった。伝統的で歴史ある町に「好き」を極める若者が移り住んでいること。2km×4kmのコンパクトタウンで、歩いて探索ができること。美味しい食べ物が多いこと。また行く理由しか見つからない。
琴平で出会ったお店で、一番のお気に入りは「栞や」。本好きにはたまらない空間だった。
せっかく、貴重な機会をもらったので「無料で旅できた。ラッキー」で終わらず、この学びを今後に生かしていきたい。
楽しくて学びのあるモニターツアーを企画してくれたTABIPPOさん、琴平町で交流していただいたみなさん、一緒に旅した14人の仲間たち、ありがとうございました。