極端に具体化することから思考する重要性
「あなたの好きな3人が住む、20人の集合住宅を設計してください」
という設計課題を学生時に恩師より与えられたのを今更思い出した。
(というか最近ホテルを中心としたマーケティングについて考えていたらこの課題の時の思考にたどり着いたという感じ)
この課題は今もプロジェクトの進め方の参考になる考え方なので、noteに残しておこうと思う。
▼1.どんな場面で起こりうる課題?
あらゆるプロジェクトにおける、検討スタートの段階の話である。特に規模が大きいプロジェクトほど陥りやすい。
今回の場合は集合住宅を作りましょうという内容なので、設計条件は何か?というところからスタートする。
この条件を読み解いているうちに気づいたら陥ってしまう(あるある)問題について、である。
▼2.当たり前の認識は何か?
ここで一旦実際の設計となると普通どうなるっけ?と考えてみると、
当然いろんな条件に縛られる。敷地面積、容積率、建蔽率など法令をおさえるのは当然のことながら、さらに賃料を合わせるために部屋数や部屋面積を要求される。
気づいた時にはその土地に最大容積を立て、いかに部屋数を多く広く、どんなお客様でも対応できるように効率的に割り付けて、、とまぁ大体こんな調子になる。
当たり前だし、とても重要な作業なのだが、マス的な思考回路にとどまってしまいがちではある。20戸の集合住宅だとしたら20という数字から始まり全体をどう割り付けるか、という流れになる。
ホテルの開発案件も大体そうなりがちですね。もちろんマス思考も大切な作業なのでそれを否定するつもりはありませんが。
▼3.解決のアイデアは?
初回の授業では「次回までに自分の好きな人を3人誰でもいいから調べてプレゼンすること」だった。
通常設計の条件になりうる敷地条件、床面積、設計要望などは全く設定はなし。ただ好きな人についてとことん教えてくれ、ということのみ。
家族、友人はもちろん、芸能人でも良いし、アニメのキャラのような架空の人でもok。
つまり、まずは全体の条件を忘れて具体化することから考えましょう。極端に。という課題だったのである。
▽事例1:キャラクター設計
当時は出会えなかったが、この課題においてとても参考になる本があった。
最近還暦を迎えたとYahooニュースにも上がっていた荒木飛呂彦さんだが、キャラクターを考えるときのポイントをこの本で教えてくれている。
「身上調査書」という名のキャラクターの履歴書的なものを1キャラごとに細かく設定しているらしい。項目はなんと60項目におよぶらしい。
出典:荒木飛呂彦の漫画術
名前、年齢、性別、身長、体重、生年月日や血液型などはもちろん学歴、好きな音楽、家族関係から抱えているトラブル、結婚、恋人、クセ、利き腕、声の質、、などかなり詳細な情報。
漫画のストーリー全体からキャラの辻褄を合わせるというのではなく、最初にキャラを事細かに設計することからストーリーにどう絡んでいくかを考えるそう。マス思考ではなくまさに部分の具体化を先にしっかり行うプロセス。
キャラは本当に独特だけど、どこか共感する部分もあるんですよね、ヒーローだろうが悪役だろうが何かリアリティがあって見入ってしまうというか。
▽事例2:1人のためにメッセージを届ける
また、(確か)知り合いのラジオパーソナリティの方がコメントが言っていたことで印象的なのは
特定の1人に向けたメッセージを意識していつも語っています
とのことだった。パブリックに発信されることだからといって万人向けを意識すると響かない。特定のコアな人に向けたメッセージとすることで具体的な話になり、わかりやすくなるそうだ。これもよくわかる。
▼4.まとめ
この課題は実務の設計プロセスに対する先生の批判的態度でもあり、一旦は極端にまで具体的に物事を掘り下げないと本質は見えてこないよ?という先生のメッセージであった。
3と20という数字は当時の学生課題として適当な規模というだけで、深い意味はないのだけれど、20ではなく3から考えることの重要性を教えてくれるものだった。
設計実務の場合ターゲットももちろん検討されるものだが、ざっくりと会社員、学生、主婦、みたいな解像度で話が進むことも割と多い。
そうではなくて、
40歳で、男性で、ずっと日本で生活してて、背は高く、タバコ嫌いで、独身で、音楽好きで、ワイン好きで、デザインの仕事してて、家には割と遅めに帰ってきて、コミュニケーション苦手で、家の中には誰も入れたくなくて、お風呂はシャワーだけで済まして、、、、
みたいに一旦掘り下げましょう的な。なんなら本当に履歴書作ってもいい気がする。
今思い出してみると、以前公共施設の設計だったので特に特定の人について考えるというのは難しいものだった。公平性とか言われるし。
みんなの〇〇。みんなの△△。みんなの、、
みんなって誰?!ってなる。笑
みんなの〇〇って使いやすい言葉なんですよね。自分も大学院の入試の製図試験でコンセプト「みんなの〇〇」使っていたのをふと思い出した。。
1人のことを具体的に考える方が話がグッとくる。10人みんなに喜ぶプレゼント選ぶより、特定の1人が喜ぶプレゼント考える方がやりやすいに決まってる。
全体にどう展開させていくかはまた考えるとして、とにかく具体的に考えるぬくことの大切さを忘れぬようにこれからも取り組もうと思い記しました。
ちなみにーー
当時自分の前の発表の学生は「おじゃる丸」が好きだったらしく選定しており
平安時代の貴族だから〜
電ボといつも行動をともにしており〜
とかなんとか言っていたのを今でも何となくおぼえてる。。
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