【ダメカノ】Ep2:後輩は好かれたい

「ダメ会長とツンデレ彼女」Ep:2 後輩は好かれたい

〇放課後 生徒会室
6月半ば。
黙々と作業をしている副会長・咲久。そこにドラムスティックを持った生徒会書記・藤田がやってくる。両者とも2年生。

藤田「おっす。」
咲久「あれ、部活は?」
藤田「今日は自由参加。ほら、先輩いないから。」
咲久「行かなくていいの?」
藤田「ほら、俺上手いから」
咲久「よく言うわサボってばっかのくせに。」
藤田「上手いからサボってんの!」
咲久「はいはい」

藤田、窓から校庭の様子を眺める。

藤田「うわ、暑そうだねー。可哀想三年生。」
咲久「明日は我が身だよ。」
藤田「明日は部活行こっかな。」
咲久「許されません。」
藤田「てかなんで放課後に体育祭の練習?これ生徒会がどうにかできなかったのってクラスの奴らにめっちゃ言われるよ。」
咲久「しょうがないでしょ、毎年そうなんだから。自称進学校なんだから。」
藤田「こんなことなら体育なんてやらない別の高校に行ったのに!てか、何でこの6月後半の暑い時期に、梅雨明ける?明けない?みたいな時期に体育祭するの?5月とか、10月とかで良くない?」
咲久「5月なんてクラスの親睦まだ深まってないでしょ。10月は文化祭。」
藤田「体育祭で親睦深めればいいのに。」
咲久「…それは言えてる。」
藤田「あーあ、生徒会ってすべての権限あると思ったから入ったのに、雑用ばっか。」

咲久、仕事してないお前が言うなと言う視線を藤田に送る。

藤田「ん?」
咲久「いや。何の練習してる?」
藤田「んー…(再び窓を眺める)あ、クラス全員リレーかも。」
咲久「出た文科系いじめリレー…。」
藤田「あ、春樹先輩。」

生徒会会計、立花春樹。整った容姿に生まれつきの茶髪でチャラいイメージを持たれがちだが、落ち着いていて仏のようにやさしい。
咲久は立ち上がり、藤田の横に並び窓を眺める。

藤田「珍しい。」
咲久「春樹先輩がどんな走りするのか気になった。」
藤田「…(走りを見て)普通に早いね。」
咲久「うん。普通に早い。」
藤田「けど、普通。可もなく不可もなく。春樹先輩のもったいないとこってそこだよなー。顔もいい、正確も超いい、けどなんか普通。」
咲久「そこが春樹先輩の良い所でもあるんじゃない?」
藤田「そう?」
咲久「うん。だって、ほら」

咲久、春樹の走りに熱いまなざしを送る女子複数人のまとまりを指さす。

藤田「おれにはわからん。俺みたいなコミュ力お化けなイケメンがモテなくて、先輩みたいなトータル普通なイケメンがモテるのが。」
咲久「そういうとこなんじゃない?」
藤田「なにそれ、どういうこと?」
咲久「知らぬが仏。」
藤田「はぁ?…あ、会長じゃん!」

生徒会長・美剣唯葉が走る。男女共わず熱い声援。そして速い。
咲久は藤田にバレないように、釘付けになる。

藤田「カリスマ性しかないよね。」
咲久「ほんとにね。」
藤田「…島ってさ、」
咲久「ん?」
藤田「…いつから会長と距離間バグってんの?」
咲久「…は?」
藤田「いやさ、ずっとくっついてるし、会長島にべったりだし、事あることに「島ちゃん島ちゃん」じゃん。」
咲久「それは生徒会は入ってからずっとで。ほらあれじゃない?生徒会待望の女子じゃん?私。前年度の生徒会も、女子唯葉先輩だけだったし、だからだよ。」
藤田「いや、それにしてもだと思うけど。」
咲久「まぁ、唯葉先輩べたべたすぎるなぁとは思うけどね最近。」
藤田「いや、お前も満更でもなさそうじゃん。」
咲久「はい?」
藤田「嫌だとか、やめてくださいーとか、言ってはいるけど、なんか、なんか嬉しそうと言うか。」
咲久「いや、それはなんていうかその…」
藤田「なんか島のキャラ的に意外なんだよねそれ。もっと突っぱねれば会長だってやめてくれるじゃん絶対。…てことは本当は嫌じゃないということ?」
咲久(なんかすごい芯をついてくるなこいつ。)

校庭から歓喜の声が上がる。唯葉のクラスが1位になったらしい。

藤田「…まあでもそうか、あんな人気者の美少女に好かれて、嫌なわけないか。」
咲久「え?」
藤田「確かにそうだよな。島みたいな根こそぎ真面目!歩く真面目!みたいなやつも、そりゃ好かれたら嬉しいよな。」
咲久(なんか勝手に納得してくれた。)
咲久「まぁ、そう思っとけば。」
藤田「うん、そう思っとくわ!いいなー、そう考えると俺も会長にべたべたされたいな。」
咲久「いやそれはない。」
藤田「なんで?」
咲久「…それは…先輩はアタシを好きだから。」
藤田「…。」
咲久(あ、やらかしたかも。)
藤田「オレ、嫌われてんのか…。」
咲久(ほんと極端自己完結バカだな。)

唯葉と咲久が付き合っているのは、二人だけの内緒。

いいなと思ったら応援しよう!