【ダメカノ】Ep1:先輩と私

「ダメ会長とツンデレ彼女」Ep:1先輩と私


男女共学、自称進学校の蒼東高校
放課後の生徒会室では、今日も会議が行われていた…。

「あーーーーちーーーー」
「…。」

いた…?

教室のソファーに横になり、スカートをひらひらさせ涼む、栗色のゆるふわロングヘア―の超絶美少女、美剣唯葉。彼女が蒼東高の生徒会長。
その隣で頭を抱え呆然と立ち尽くしている、セミロングのインテリ黒髪眼鏡、島根咲久。生徒会副会長。

「…あの、生徒会長。」
「なんじゃーらほいっ」

ひらひらひら。校庭からは放課後を謳歌する生徒たちのはしゃぐ声。
気まずい。席に着きノートを開き、いかにも唯葉を見ないようにしている生徒会会計、イケメンな好青年、立花春樹も、同じ顔をしている。彼は唯葉の小学校の頃からの幼馴染だ。
ソファーに寝っ転がり、スカートをひらつかせるこの堕落した生徒会長を、どうしたらよいのか。

「唯葉先輩。」
「島ちゃんもやれば?ほら」

と、咲久のスカートをめくろうとする唯葉。

「やりません!会議は?先輩が起きないと始められないでしょ!」
「えー、このままでもできるでしょ。今日はここからお送りしまーす。ね、いいでしょ春樹?」

急に呼ばれて驚いたのか、肩をびくつかせた春樹。

「ま、まぁ会長がいいならいいけど。」
「ほら、いいって。」

なぜそこで得意げになる。2対1だとでも言いたげに!

「…じゃあ、じゃあせめて、そのひらひらやめてください!ひらひら!!」

咲久は満を持して声を挙げた。

「え、なんで?…あ、もしかして気にしちゃうんだ、島ちゃん、私のこのスカートの中身が、見えちゃうんじゃないかなーって、ドーキドキしちゃってるんだ?」
「そ、そんなこと」
「違う?」
「違います!!男の子もいるから!いくら幼馴染でも!」

咲久は唯葉の机の上にあった生徒会ノートを取り、ニヤニヤしている唯葉に突き出す。私のポーカーフェイスを舐めないでほしい。

「ほら、やりますよ、唯葉先輩。」
「やだ!やるって何を?も、もしかしてこの生徒会室で愛の物語を…?」
「紡ぎません!!!!」

何でこの人が生徒会長になったんだろう。起き上がり咲久の足をがっしりとつかみ、イチャイチャしたいモード全開の唯葉と、必死でそれから逃れようとする咲久。この二人がこの高校の生徒会長と副会長だ。

「…俺、藤呼んでくるね。」
「あ!春樹先輩!」

なるべく唯葉と咲久のことを視界に入らないようにしながら、春樹は部屋を出ていった。申し訳ない、気まずかったろう。

「行っちゃったよ?…咲久」

唯葉が咲久のことを、咲久と呼ぶ。
甘えた声で、咲久と呼ぶ。まるでさっきのだらしないだけの人と、同じ人だと思えないような。

「離れてください、暑いです。」
「じゃあ離れれば?」

試すように上目遣いで咲久のことを見つめる唯葉。
その視線が、ずるいんだ。
少し汗ばんだ咲久の足を唯葉の腕が解放し、咲久がどうするか、暫く観察することに決める唯葉。
どこを見ればいいかわからない。目線が会えば、からかわれるに決まってる。
咲久の膝裏に、唯葉の人差し指が悪戯に来る。

「ねぇ、どうするの?春樹帰ってきちゃうよ。」

私は今、先輩に遊ばれてるんだ。ここで逃げるわけにはいかない。
咲久は唯葉の隣にすとんと腰を下ろした。

「先輩は?私とどうしたいんですか?」

まだ顔は見ない。見たらきっと…

「ちゅーしたいに決まってんじゃん。」

先輩はこういうところがズルいんだ。
唯葉は、真っ赤になった咲久の頬を両手でつかみ、目を合わさせる。
がっちりガードした咲久の顔に、唯葉は自分の唇を近づける。
少しずつ近づく唇にあわせ、目を瞑る咲久。

あわさるまで、あと2㎝…

「遅れましたー!」

生徒会書記、藤田紘。こいつのタイミングはいつも良い。

「イヤー藤君遅かったじゃん!っていつものことかーあはは」

秒で咲久の頬から手を放し再びソファーに横になる唯葉と、すっと立ち上がった咲久。この状態は、春樹が行く前と何も変わっていない。

「今日ずっとこんな感じなんだよ。」
「会議やらないなら部活行っていいすか?」
「ここからお送りするよー!ねー春樹!」
「春樹先輩が良くても私がダメです、ほら立って!」
「うーんー!咲久のいけずー!」

このダメダメだけど、変なところがちょっと賢い生徒会長と、ポーカーフェイスが得意なクール女子、と思いきや会長にでれでれな副会長が、この作品の主人公です。




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