春を見つけに
はじめに
※このお話は、『小説家になろう』で行われた『春の旋律』という企画モノに参加した時に書いたものです。なろうさんで、まだ読めました。(今はパスワードとかメアドを忘れてログインできません。)
『春の旋律企画』…何かの曲をイメージして小説を書く…というモノでした。この小説の背景を流れる曲は何か…。その辺も考えながら読んでいただけると、楽しみが増すかもしれませんよ⁉
*春を見つけに*
雪にすっぽりと覆われた地帯に、久しぶりに温かな陽射しが差し込みました。
雲の切れ間から顔を覗かせた太陽が、みんなを笑顔にしてくれます。
それから、ニコニコの太陽は温かく大地を包み、雪を溶かしていきました。
――もうすぐ、春がやって来る!
その気配を感じた、あやちゃんと、あっくんは、楽しみでたまりません。
そうしてぽかぽか太陽に照らされて、雪の下で眠っていた大地が、目を覚まします。
「ねぇ、おかあさん? まだなの?」
あやちゃんは、お母さんのエプロンを引っ張って、跳びはねながら尋ねます。
「そうねぇ…。
今日は天気もいいし、お散歩に行きましょうか?」
お母さんは、優しく答えました。
『温かくなったら、三人で手をつないで、お散歩に行こうね!』
雪の降る寒い日に、外で遊びたいと駄々をこねる、あやちゃんと、あっくんに、お母さんがそう約束していたのです。
その約束をあやちゃんと、あっくんは、きちんと覚えていたのでした。
「やったぁー」
そう叫ぶと、ふたりは外に飛び出しました。
「ちょっと待って!」
お母さんが、その後を慌てて追いかけます。
一歩外に出ると、春の柔らかな陽射しが頭上に降り注ぎます。
空を見上げると、お日様がニコッと微笑んでくれました。
「おかあさん! 早く早く!!」
のんびり歩くお母さんを、二人はピョンピョンしながら手招きします。
それでも待ち切れずにお母さんの元に駆け出すと、右手をあやちゃんが、左手をあっくんがつかんで、歌いながら歩きます。
その歌は、あやちゃんもあっくんも大好きなので、何度も何度も、繰り返し歌います。
と、
「お母さん! つくしんぼ」
あっくんが、突然叫びました。
「あっ! こっちにも!」
雪解けの大地にひょっこり顔を覗かせた、つくしを見つけて、大はしゃぎの、あやちゃんとあっくんです。
「ああ! ふきのとう♪」
「わあ。本当だ!!」
「あれが、おかあさんで…」
ずいぶんと、大きな顔のふきのとうを指差す、あっくん。
「じゃあ、あやちゃんは、あれね!」
お母さんのふきのとうの近くで、ちょっとだけ頭を出したふきのとうを見つけて、あやちゃんは言いました。
「じゃあ…。…あっくんはコレ!」
あっくんも負けじと、頭が出たばかりで、さっきより小さなふきのとうを指差しました。
「ふきのとうの親子だね!」
自分たちのふきのとうを見つけて、満足顔のふたりです。
それから三人は、目覚めたばかりの緑の大地に包まれて、たくさんの春を探して歩きました。
たんぽぽ、スイセン、クロッカス。
パンジー、ビオラ、芝桜。
チューリップ、つばき、さくら…。
きれいな花を咲かせようと、雪の下でじっと耐えてきた花々が、ようやく芽を出しはじめます。
これから、色鮮やかな季節になりそうです。
お母さんに教えてもらいながら、覚えたばかりの花の芽を見つけると、その名前を叫びながら春探しは続きます。
春の陽気に誘われて、虫達も活動を開始しようとしているところでしょうか?
てんとうむしサン、ハチサン、ちょうちょサン…。
おたまじゃくしは、雪解け水でできた水たまりの中で、うようよとうごめいています。
「足は生えたかなあ?」
「まだ早いよ!」
たんぼに水が張る頃には、りっぱな カエル に成長していることでしょう。
たくさんの春を、見つけるとこができました。
「ちゃんと雪の下には、春がかくれんぼしていたでしょ!?」
「うん!」
「本当だね!」
得意気なお母さんの質問に、あやちゃんとあっくんは元気よく答えました。
「お散歩って、楽しいね」
「また、お散歩に行きたいね」
ふたりは、散歩が大好きになっていました。
「ねぇ、今度はいつにする?」
「明日にしようか?」
勝手に計画を立て始めたふたりに、お母さんがあわてて言います。
「保育園がお休みの時ね」
「じゃあ、今度の赤い日ね」
「約束だよ!」
「はい。はい」
ふたりは大喜びで、お母さんの手を強くにぎりしめると、大好きなあの歌を歌いはじめました。
「この歌、歌ってると、ずーっと遠くまで歩ける気がするの」
いつもは一番に疲れてしまうあやちゃんが、そう言いました。
「あっくんはねぇ…。
この歌、歌ってると楽しくなるよ」
いつもはすぐに飽きてしまうのに、本当に楽しそうに、あっくんは言いました。
「じゃあ、もう一回歌いましょう♪
」
お母さんの掛け声で、ふたりは声を張り上げて歌います。
まだどこか肌寒い街に、柔らかな温もりを含んだ、温かい風が吹きました。
春が一斉に目覚める太陽の光が、どこまでも降り注ぐ道を、陽気な歌声が響きました。
☆fin☆
おわりに
この小説のイメージは『となりのトトロ』より
エンディングテーマソング『さんぽ』 でした。
当たった方、います?