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お母さんが書くわたしの名前 | 金曜日のひとりごと

結婚して東京に来てからのお話。

実家から送られてきた荷物の宛名に書かれていたのは、結婚する前の名字だった。

「お母さん、おっちょこちょいだからなあ」

クスクス笑ってお母さんにそのことを連絡した。

そのあとすぐに、あることに気がついた。

お母さんがずっと書いてきたわたしの名前はこっちなんだよなあ──。

当たり前のことだけれども、そう思った途端になんとも言えない感情が込み上げてきた。

わたしは、お母さんが書いてくれるわたしの名前が好きだ。

流れるようなはらいが好き。
軽やかな跳ねが好き。
繊細で優しい曲線が好き。

わたしは小学3年生から大学3年生まで習字を続けて、行書では教授補の免許までとったけど、ペン字はとんとうまくならなかった。

自分で書く名前は、不恰好であまり好きになれないまま。

あの日から「お米とうどんと、それから味どうらくの里を送ってー!」とお母さんに連絡するたびに、ちょっと期待してしまうのだ。

お母さんが書き慣れていた、わたしの名前宛に荷物が届くのを。

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Koimizu Shiori
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