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夫が買ってきた月餅を食べながら思う 1.17

阪神・淡路大震災のさまざまな映像や記録を見ていると、あのどこかに当時5歳だった夫がいたのかと想像して胸がギュッとなる。

30年目の1月17日の朝。目覚ましが鳴るより少し早く目覚めた。

隣ですーすー眠っている夫を見てなんとなくホッとした。昨夜、本人が今でもこの日を迎えるのは憂鬱だと話していたから。

30年前の朝、5歳だった私はニュースで被害の映像を見て父親を質問責めにした。

「これどこ?」「なんでこうなったの?」「地震って何?」

あの時、遠くの街で起きていたことが大人になって、大事な人の身に起きていたことになった。

でも、当時の出来事を夫本人から詳しく語られたことはない。たまにふと客観的事実として起きたことだったり、日にちが経ってからの様子だったりを口にしたことはあったけど。

私から根掘り葉掘りは聞かないことにしている。でも本人が話したいと思った時にいつでも聞く準備はできている。

そうは思いつつ、これから先ずっと、話さなくていいとも思っている。

同じ屋根の下で暮らし、同じ苗字を名乗る間柄になったとはいえ、そもそも相手の全てを正しく理解するなんてきっと無理。自分のタイミングで「わかりたい」気持ちを押し付けるのも違う気がするし、もしそれを実行して話してもらったとして、自分が相手の過去をわかったつもりになってしまうのも嫌だ。

夫が買ってきてくれた月餅をもぐもぐ食べながら、いろんな思いがぐるぐる巡る。

そういえば、私は「月餅」という食べ物を、夫と結婚するまで知らなかった。神戸にも中華街があるから、夫にとっては馴染みがあるのかもしれない。好きな食べ物らしい。

今回はチョコ好きな私のために、チョコ味の月餅を買ってきてくれた。

夫が夫のタイミングで私に「あげたい」と思って持ってきたものを、私はありがたく受け取る。

お互いに知り合う前のことについては、多分、そういう距離感が私たちにとってちょうどいいのかもしれない。

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Koimizu Shiori
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