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「いまがスタートライン」。対話を大切にしてきた知佳さんが描く日常【#わたしたちの厄年 インタビュー】
この記事は、2021年に本厄をむかえたライターふたりによるインタビューサイト『わたしたちの厄年』に掲載した内容を、一部再編集したものです。現在、サイトの公開期間は終了しており、noteでのみ記事を読むことができます。内容は原則、公開当時の情報となります。
自分と丁寧に向き合い、これからのために何をするか考える西野知佳さん。2020年12月からフリーランスとして活動を始めました。2018年に結婚した夫の聡(そう)さんと夢を叶える過程をSNSで発信するなど、さまざまな挑戦の真っ只中にいます。
本厄を迎えたなかで、全力疾走してきた上半期やこれまで、思い描いている”これから”についてうかがいました。
< 西野 知佳さん >
平成元年生まれの福岡県出身、神奈川県在住。株式会社星野リゾートに新卒入社。ホテルの基本サービス業務から、お客様の滞在を演出する企画の立案・運営、広報を経験した。現在は、フリーランスとして広報・ブランディング支援を中心に活動している。
フリーランスになって、走り抜けた半年間
──知佳さんの活動をSNSでよくお見かけしていました。2021年は特に忙しそうでしたが、実際どうでしたか。
2020年12月からフリーランスになって、前職のつながりから広報のお仕事をいただいたり、コーチングにたずさわったり、クラウドファンディングのプロジェクトに参加したり……。
厄年ってことを忘れるくらい忙しかったです。その分、とても充実していましたね。母から厄除けのお守りをもらいましたが、残りの数ヶ月で何か起きないか不安です(笑)
──厄年を忘れるほどの忙しさと充実感!すごいですね。フリーランスとしての働き方は、始めてみていかがですか。
正直、フリーランスになる前は、もっと後悔するかと思っていました。
たとえばお金の面で不安になったり、家庭のことで思い通りにいかなかったりするんじゃないかと。でも今のところまったく後悔していないです。
仕事と暮らし、ベストなかたちを求めて
──新卒から勤めてきた会社を辞めるのは、大きな決断ですよね。そこにどんな経緯があったのでしょうか。
1年くらい前に、仕事について「このままでいいのかな?」と思ったんです。
不満はなかったのですが長い目で見たときに、そのままでいるのはワクワクする選択肢じゃない気がしました。
夫とは職場で出会って結婚後もお互いに仕事を続けていたのですが、ホテル業というのもあって、勤務時間がばらばらなのも悩みの一つでした。
一緒にご飯を食べるとか、当たり前のような家庭の時間を持てていなかったんです。仕事についても暮らしについても「これがベストではない」と夫婦ともに感じていました。
──知佳さんは、そこで行動を起こしたのですね。
仕事では異動の可能性もあったのですが、一緒に行くとしても異動をやめるにしても、夫婦のどちらかが、何かをがまんすることになるのが心配でした。
それで、2020年3月にSHElikesという女性向けのキャリアスクールに入会しました。Web系のスキルを身につけられたら、夫がどんな選択をしても、自分も場所にしばられずに好きな仕事をできると思って。
それにSHElikesのサイトにあった「『私にはこれくらいが丁度良い』って選んだ花は本当にあなたが心から咲かせたい花ですか?」というメッセージににハッとさせられたんです。
──ドキッとするメッセージですね。知佳さんの気持ちに対して、聡さんの反応はどうでしたか。
そのときの夫は、積極的に応援してくれるというよりも、静かに見守るような感じでしたね。
結婚前からふたりで対話する時間を設けるようにしてきたのですが、わたしから「いまの状況を変えたい」と声をあげたかたちでした。
緊急事態宣言が、ふたりで未来を考えるきっかけに
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──今ではご夫婦ともに夢があって、SNSの発信も積極的ですよね。聡さんにとっては、知佳さんの影響もあったのかなと思ったのですが、意識が変わったきっかけはありましたか。
2020年のコロナ禍で最初の緊急事態宣言が出て、思いがけず家で一緒に過ごす時間ができたのは大きかったです。
有名なシェフがおうちで作れる料理のレシビを発信していて、夫はそれを見ながら料理に打ち込んでいました。わたしが「おいしい!」って言って食べるのも喜んでくれて。
夫は料理が好きだって改めて自覚できたようでした。
──ふたりでゆっくりご飯を食べられる時間の豊かさ、好きなことに打ち込む楽しさを味わえたのですね。
頭の片隅に思い描いていた時間を経験したことで、仕事が再開されて忙しくなってきたときに「やっぱりこの状況は変えたいよね」と確認もできました。
いろいろな思いが重なって、ふたりの活動を発信するInstagramアカウントを開設したのもこのころです。
──タイミングの巡り合わせがあったのですね。ふたりそれぞれが発信するだけでなく、夫婦としてのアカウントを開設されたのがいいですよね。
結婚したころから「5年後くらいに何かふたりでやりたいね」と話していたんです。
──「5年後」を目処にしたのなぜですか?
夫は人に飲食を提供するには、どこかのお店で修行をしないといけないと考えていました。その修行期間を踏まえての「5年後」です。
「修行が必要」という条件は、あしかせになっていると感じたので、わたしは修行は絶対ではないと考えていたのですが……。
──真剣に考えているからこそ、遠回りだとしても修行期間が必要だと思われていたのですね。逆に知佳さんが、お店の修行は必須ではないと思われたのはどんな理由からですか。
周りの人から「なんで今じゃないの?」「小さくでもやってみたら」と言われたんです。
自分でお店をやっていたり、個人でお仕事をされている”先輩”のような方たちの意見だったのもあって「その通りだな」って思いました。
でも、わたしから夫に伝えても、なかなか受け入れてもらえませんでした。
言葉で足りないなら行動して伝える
──夫婦だとお互いの距離が近いから、というのもありそうですね。
ライフコーチとして、人の話を聞いて「実現したい目標のために行動を導く」というのをしていますが、夫との話し合いはコーチングのようにはいきません。
そこで、わたしが「この人たち、いいよね」と思う夫婦ユニットや飲食を提供している人を調べて、夫に見てもらいました。
「百聞は一見に如かず」な夫なので、その人たちに連絡をとって一緒にお話を伺いに行きました。
──すごい!調べるだけでなく、会いに行ったのですね。
そのなかに、夫の考えをときほぐしてくれた人がいたんです。
本業はライターさんですが、料理が好きで月のうち10日間だけお店をされている方で。実際に食事をしたら、すごく美味しくて!
飲食店で修行していなくても、心に残る料理をつくれることや、居心地のいい時間と空間を提供できるんだって身を持って知って、夫は「修行」へのこだわりを手放せました。
──聡さんにとって、体験を通して納得できる答えを得られたのですね。知佳さんも言葉で伝わらないからといって、諦めなかったのが素敵です。聡さんの好きなことを心から応援しているのですね。
「夫婦で何かしたい」というのは共通の思いですから。相手のことも自分と同じくらい大切にしたいと思っています。
新しい暮らしを、足並みをそろえて
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──春には物件も探されていましたね。結婚してから、かつ わたしたちの年齢のころに引っ越するのは、今後の生き方への影響も大きいと思います。どうやって決められましたか。
生活の中心を「暮らし」に据えたいとふたりで考えていたので、地域のコミュニティが判断基準になりました。
引っ越し先に決めた場所は、前職の尊敬する先輩やライター兼料理人の方などがいる町です。好きな人たちがその土地ですでに生活していたので、暮らしぶりについてお話を聞いて、自分たちの新しい生活もイメージできました。
──ライフプランやキャリアについても、おふたりでよく話し合われてきていた印象なので、すぐに物件も決められそうですね。
物件探しの日にケンカをしてしまうような、波長が合わないときもありましたよ。
それで、1日かけてふたりがどういう暮らしをしたいのか、イメージに近い画像を集めながら話し合ってみました。お互いが思い描く暮らしを言葉だけじゃなくて、ビジュアルでも共有できたのは良かったです。
その後に物件を見に行ったときは、キッチンがイメージに近いとか「これがあればこんなふうに過ごせるね」とか言いながら、驚くほどすんなりと決められました。
──ちょっと気まずくなったときこそ、対話をしっかりされているのですね。難しそうですが真似したいです。
言いにくい話もきちんと伝え合うようにしています。そういう話ができる人だから結婚したのはありますね。
その積み重ねをして、やりたいことを尊重し合って、暮らし方から足並みをそろえているところです。土台が整ってきて、やっとこれから夫婦がスタートできると感じています。
手の届く距離で伴走する意味
──ちなみに引っ越しをすることで、知佳さんご自身のお仕事のスタイルは変わりそうですか。
もともと、フリーランスを目指したのは「好きなこと・得意なことで場所を選ばず働ける」という理由がありました。
実際にいまの仕事はほとんどオンラインでできることばかりです。でも、これからブランディングに重きを置こうとしたときに「地域に根づいてかかわっていきたい」と考えが変わってきました。
──ブランディングにさらに力を入れるのですね。知佳さんが考える「ブランディング」とはどういうものですか。
あれこれ付け加えるのではなくて、サービスや商品が持つ魅力の純度を高めて、それを求めている人に届ける手段だと考えています。
「より多くの人」ではなく「求めている人・届けたい相手」とつなぐのも大切です。「より多くの人」を相手にした場合、本当の魅力が伝わらず、提供する側・受け取る側のどちらか、もしくはお互いが悲しい思いをすることもあります。
そうならないためにも、提供する人たちにしっかり伴走したいです。
──モノ・コトの価値に共感している人へ届けられたら、届ける人も受け取る人もハッピーですよね。
ブランディングは共感した人をつなぐ手段で、「愛から始まるコミュニケーション」だとも思っています。それを実現するには、伴走者として自分自身が商品やサービス、提供する人たちに共感できるかも重要だと考えるようになりました。
そしたら、オンラインだけで完結するのは何か違う気がしたんです。もっと近くで寄り添いながら一緒に考えていけたらいいなと。
──どこにいても仕事はできるけど、直接コミュニケーションをとれる距離で伴走することを選ばれたのですね。
新しい生活では、働くことと暮らしの境界線をゆるやかにしていきたいです。例えば、自分が暮らすまちにある素敵なお店とお客さんをつなぐお手伝いをしたり、暮らしのコツを地域の人から教わったり。
──生活そのものが豊かになっていく気がしますね。知佳さんの新しいステージでの活躍が楽しみです。
共感と愛を持って、自分の力をしっかり発揮していきたいですね。
「ブランディング」という言葉は認知され始めましたが、その価値まで理解されているかという面では、まだまだだと思います。わたし自身がブランディングが価値あるモノだと体現していきたい。
そのレベルに達することが当面の目標です。
言葉にした思いに、何度も立ち返る
──「駆け抜けた」という言葉がぴったりな上半期でしたね。おふたりのこれからがますます楽しみになりました!知佳さん自身、たくさんのことに取り組まれていますが、大切にしている軸ってどんなところにあるのでしょうか。
「自分が何を大切にしたいか言葉にする」価値を、実感できた日々でしたね。実は、今年のはじめに大切にしたいことを3つ掲げていました。
自分のwantを大切にして行動する
共感できるヒトモノコトを選んで生きる
余白を大切にする
仕事だけじゃなくてあらゆる場面で、何度もその言葉に立ち返って「ズレたことをしていないか」確かめています。
ちょうど1年の半分が経つので、いろいろと棚卸しして改めて自分と向き合いたいです。
夫もやると決めたらやる人なので、これからが本当に楽しみ。一番のファンでいたいですね。
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自分も大切な人も一緒に幸せにしていく力 - インタビューを終えて -
幸せの価値は人それぞれあるものだと思います。知佳さんと聡さんは、それを理解した上でお互いを尊重し、応援し合っているのが伝わってきました。
「言葉にしなくてもわかる」関係ではなく、とことん伝え合うことで前に進もうとしているのがふたりのスタイル。ふたりが思い描いた未来を、どう実現させていくのか、さらにその先に築いていく未来の夢も楽しみです。
「自分が何を大切にしたいか言葉にする」のは、わたしたちもすぐにでも取り入れられることです。自分がブレないように、立ちかえることのできる指標を持って1年を過ごしてみてはいかがでしょうか。
< 西野 知佳さん >
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「厄年」という人生の節目に
思うことをありのまま みつめていく
"コロナ禍"で始まった2021年
厄年をむかえたわたしたちは
この1年をどう過ごしていくのだろう
不安も 悩みも 喜びも ワクワクも
ゆれうごく世の中も ライフステージも
ありのままの思いを 言葉にしてみよう
等身大のわたしたちのまま ここでつながろう
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