『サンリオ男子』を読んで、サンリオピューロランドに行ってみた
前回は、『サンリオ男子』の存在、そこから派生したノベライズの新感覚について書いた。
今回は、リアルでのサンリオ体験、サンリオピューロランドの魅力を私なりにお伝えしたい。
ノベライズ第二弾の「勇気と奇跡のサンリオピューロランド」でピューロランドへの想いが強くなった、と前回記したが、実はそこを強く後押ししてくれた存在がすでにあった。2018年に放映されたサンリオ男子のアニメーションである。
雨に打たれながらポムポムプリンへの愛をぶちまけたり、冬でも庭先で稽古をつける寡黙な父親が唯一(無言で)連れて行ってくれたのがピューロランドだったりだとか(この父親の話、掘り下げてほしかった!)、アニメーションということでなかなか激しめのメロい展開が多かったが、サンリオ主体で動いていくストーリーがやはり目を引いた。
何度か見逃しつつも私は神回に遭遇できた。サンリオ男子たちがピューロランドへ行った回だ。(※リンク先はdアニメストア)
アニメ主人公の長谷川康太は、ピューロランドのショーを観た帰りの電車で自分をコントロールできないほどの高揚を覚えていた。どうにかしてこの気持ちを処理したい、自分もああいうものが作りたいと。
人はよいものを見たとき「素敵だった」「良かった」という気持ちを越えると、「いてもたってもいられない」「何をしたらいいか分からないけど自分も行動に移したい衝動に駆られる」という苛立ちにも似た気持ちになる。康太にとってサンリオピューロランドはまさにそれだった。
この回はサンリオへのリスペクトを随所に感じる作りになっており、何を観させられているんだ?と思うほどに愛に溢れすぎていた。DKたちを苛立たせるほどに魅力な場所ー、ピューロランドは行ってみたいところのひとつになった。
そこから月日が流れ、またピューロランドと出会う機会に恵まれた。先述した2冊目のノベライズである。小説はこれまた面白い構成で、本筋のストーリーにピューロランドのガイド的側面が絡んでくる。
これをお供にすれば、私でも未知なピューロランドの扉を叩けるかも…!
そして2023年、私は友人と多摩センターに降り立った。
初心者は朝から行け
実は、せっかくの神奈川だ!と意気込んで、藤子・F・不二雄ミュージアムとの二本立てを企てた私たち。ピューロランドには14時からのアフタヌーンパスポートを買うと決めていた。
予定より少々時間が押していたが予想の範疇で入場できたにも関わらず、入場してすでに「失敗」の二文字が頭をかすめた。「ボートライド50分待ち」の文字が目に飛び込んできた。
ほとんどのキャラが出るとなると、たしかにこれを乗っておけば間違いない感がある。しかし入場してすぐに目に入ってきたのはボートライドの列!
「こんできるときは列がエントラスから続くくだり階段の上までのびている」とノベライズにあったが、本当にその通りだった。
ノベライズ、信頼できるガイドブックでもある。
平地に広がっていると勝手に想像していたピューロランドはなんと4階建て。方向音痴も相まってノベライズでの予習が線にならない。
どう動き出したらいいか分からない私たちは現実逃避するように右のショップへ導かれ、とりあえず夢の国でも買ったことがない浮かれカチューシャを購入。サンリオではかなり新しいキャラ「こぎみゅん」をチョイスした。
顔のパーツが果てしなく下に集まっている愛くるしい「こぎみゅん」は、本当はおにぎりになりたいと思っている小麦粉の精という「どういうこと!?」と突っ込みたくなる設定だが、炭水化物を愛する私にはピッタリなキャラだろう。ちなみに、カチューシャの天辺にはエビ天が載っていた。どういうこと!?(2回目)
準備は万端だ。エントランスの看板前で写真を撮ってもらっていざ出陣!
ピューロランドに行くに伴って、私はノベライズで描かれていた行動範囲を書き出していた。
ノベライズに登場したアトラクション名は、ボートライド、フェアリーランドシアター、ディスカバリーシアター、〜キキ&ララ〜トゥインクングツアー、ハローキティの幸せの鐘、身長計にもなっているキャラクターのパネル(フォトスポット)、ハローキティーハウス。それにパレードとレストラン…
閉館は17時、あと2時間ちょっと。なぞるどころか半分こなすのも無理なことは明らかだった。これは朝から来るべきだったな…早くも後悔の念に苛まれたが、サンリオ男子オススメのアトラクションがいくつなぞれるか、いや、ひとつでも体験できるのか!?私は武者震いした。
サンリオキャラなしの魅惑スペース
私たちの一番の目当ては15:45から始まる「KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~」だった。KAWAII KABUKIってなんだよ!?タイトルだけでもう掴まれている。
これだけでも乗れれば、と思っていたアトラクションのボートライドは大人気ゆえに諦めるしかなかった。
時間はもうすぐ15時。KAWAII KABUKIが定員いっぱいになることだけは避けたい。というわけで、劇場のある1階で時間を潰すことにした。
ピューロランドはアトラクションだけでなく、視覚や嗅覚を刺激する「ファクトリー」という名のブースたちがある。ちょっとアメリカンなアンティーク風の動物や擬人化たちがキャンディーやアイスクリームなどを製造している。この空間の香りのインパクトがすごい。ここにずっといたら私の食欲も減るのではないか?というくらいの香料!ファクトリーダイエット、できる気がする…!
とても興味深いブース群だった。誕生のきっかけを知りたい。
突如誘われるコネクトタイム
右も左も分からぬ私たちはタイムスケジュールをほとんど把握していなかった。ファクトリーを巡っていたら突如夜空になった。15時から「Nakayoku Connect」があったのだ。
こういうとき屋内というのは面白い。屋外と違って、音を出さずとも照明で空気を一変させることができる。サンリオキャラたちによるリアルライブと中央スクリーンのバーチャルが繋がりながらのショーが始まった。
サンリオの理念「みんななかよく」を芯にした構成で、曲の合間のやりとりが次の曲への導線となっており、どんなバンドより繋ぎが滑らかであった。いや、コンサートというよりミニミュージカルなのかもしれない。
周りを見るとスチャッとハート型のペンライトを出す人がちらほら見受けられた。そして曲が始まると控えめながら流暢に振り付けどおりの踊りを始めるのだった。通い詰めている猛者たちがいる…!
ライブなどに行っても人間観察をしてしまう悪い癖がある私は、憧憬の眼差しで祈るようにコンサートを楽しむJKと思われる女子に釘付けになった。元気をもらいたい時には気軽に来ているのかな、とか妄想しながら、サンリオキャラのコンサートを楽しみつつ、それを楽しむ人々の多幸感を味わった。
コンサート終了時間的にKAWAII KABUKIに流れるだろうと察知した私たちは、購買部にフライング買い出しする学生のように先手を打って「メルヘンシアター」へ向かった。
舞台だけでもチケットの価値あり
スタートダッシュに成功した私たちはなかなか良い席を確保、しかし、斜め前を見るとさきほどペンライトを持っていた女子がいた。流石だ。熟練の技を見る思いだった。
私の隣を見ると、大人ギャルが2人。SNSで美容記事をチェックしていた。サンリオと無縁に思えた2人に私はちょっともじもじしてしまっていた。
そんなこんなしているうちに開演。今回出演のサンリオキャラであるキティ、ポムポムプリン、バッドばつ丸、シナモロールらが登場して私は思わず悶えた。統一感のある衣装を着ると際立つ多様な頭身バランス。私は思わず漏れ出た。
「「かわいー…」」
隣のギャルと思わずコネクトしてしまい、心が跳ねた。
そして私はノベライズ『サンリオ男子』に出てくる一節を思い出していた。
まさに、今の私たちこれじゃん…!!思わぬリンクに感慨深い気持ちになった。
舞台の内容はというと、歌舞伎をモチーフにしているがテーマはやはり「みんななかよく」。敵と思われる存在がでてくるが最終的には手と手をとりあう。相手を理解し許容していくというサンリオが掲げる「世界平和」が作品全体から漂う。
舞台端にあるスクリーンを駆使したり、緞帳に映像を映して趣向を凝らしたり、今の時代だからできる演出が多分にあった。構成としては、ストーリーを見せていく本編の後、登場していたキャラがそれぞれの歌舞伎ミックスのエンターテイメントを魅せていく。まるで宝塚のような構成だ。
ピューロランドにはサンリオキャラだけでなく、人間の踊れる脇役たちがいる。その演者たちの隅々に渡る演技は目を見張るものがあった。
以前、観劇した歌舞伎では、比較的古典だったせいか今まさにやりとりしていない演者たちはモブに徹ししているように思えた。萩本欽一の劇団でもセリフを言っていない演者は無になれ的な指導を受けたと聞いたことがあるが、映像のように鑑賞者の視点をスムーズに移動させるためだろう。そういう様式美が歌舞伎にはあるように思う。
しかし、このキティ一座の歌舞伎は違った。遠くいいる演者まで顔がうるさい。それぞれの心の動きが性格に基づき可視化されており、それが客席に伝わるよう、性格設定ごとに顔はもとより体の角度まで徹底されているのだ。
これは何度も観に来ても発見があって楽しい…!
大なり小なり見所が多く、エンターテイメントに徹している舞台はハレがあり、これだけでチケット代を払った価値があるように思えた。
まだなんのアトラクションも体験していなかったが、私たちは満足した。
君はどうだ?サンリオ愛を図るアトラクション
満足はしたが、もっとこの場を楽しめた方が良いに決まっている。余韻に浸っている時間は私たちにはなかった。パンフレットを見ると受付はほとんど16時半まで。あと30分ほどでどこへ行けるかー。
ノベライズ『サンリオ男子』にも出てきて、あと1週間ほどで終わってしまうことを知った「~キキ&ララ~トゥインクリングツアー」へ向かうことにした。
すぐに通してもらったその空間は、キキララ色で染められた撮影スポットなどがあるブースであった。ちなみに、『サンリオ男子』に出てくる説明はこうだ。
語り手・西宮諒(キキララ推し)のフィルターを通した解説がやたらと魅力的である。たしかに、すてき。すてきな場所だが、何時間だってここにいたいかと言われたら…私は他の場所にも行きたい(笑)
『サンリオ男子』ノベライズを読んだ上でピューロランドを訪れると、登場人物たちのサンリオ愛がどれほどか肌で感じることができるので、そういった面でもダブルで楽しめておすすめだ。
諒のキキララ愛を当てられつつ、急いで次の場所へ。
今のところ満足だが…ひとつでもいい、乗り物に乗りたい!ワンチャン乗れそうと見込んだ「~マイメロディ&クロミ~マイメロードドライブ」へ足早に向かい、無事間に合うことができた。
乗り物アトラクションは遊園地ならではな楽しさがある。中年になってくると揺れに敏感なので、マイメロのストーリーに合わせて左右に揺られながら進んでいく乗り物に充分スリルをもらう。
そしてピューロランドの乗り物アトラクションの特徴は、撮影してくれるスポットが随所にあるところだろう。
最初に説明をもらっていたが、カメラを見つけるのが遅い&撮影カウントのタイミングがずれるの中年クオリティを発動してことごとく中途半端な面白写真になる私たちであった。
マイメロカーを降りると撮影された写真群を専用機で確認して、チョイスし、ペンでメッセージなどを入れ、そのシートを1000円で購入することができる。そんなプリクラみたいな楽しみ方が!(プリントせずに楽しむだけでもよし)
今日の記念に、と友がプリントしに行き戻ってくると袋を2つ持っていた。なんと私の分も買ってくれていたのだ…!
想像もしていなかったサプライズに喜びつつ、私はここでもサンリオ男子のことが頭をよぎっていた。
向こうはボートライドの写真だが、ノベライズを読んだことない友が聖地巡礼のようにフォトフレームのサプライズプレゼントをしてくれるとは…!
二重にジーンとくる私であった。
そして「みんななかよく」なった
一人で行っても複数で行っても「誰かに撮影してもらいたい」タイミングというのがあるものだ。誰に頼もうか、もじもじタイムが発動する。
このピューロランドではそこのストレスがなかった。「撮りたい」を察知して「撮りましょうか?」と自ら名乗り出てくれる人たちが多かったからだ。
サンリオキャラに絆されて人を思いやる心がいつも以上に開花したのか、人の優しさに溢れたひと時であった。人に優しくされるとその気持ちを人にも分けたくなる。思いやりというのは連鎖するものだと身を以て実感できる一日だった。
「みんななかよく」の先に「戦争を繰り返してはいけない。みんなで平和な世界を作ろう」の理念があるサンリオの想いの片鱗が感じられるユートピア、それがサンリオピューロランド。
ギスギスしたこの世において、みんな行くべし!