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解剖生理の「図と地」 最新トピックスへの俯瞰

 今週はクリニックで解剖生理学の勉強会があるのですが、その準備をしていて感じるのは、知識体系には「図と地」の関係がはっきりとあること。解剖生理というと、学生時代にやったこんなこと、みたいなイメージが色濃くありますが、それだけのイメージでは少しもったいない。 

 まずは、大方忘れているのでその復習的な意味合い。加えて、従来の重要事項から外れたところで出現している、現在のトピックス。「図」ばかりの学習に目が行っていた学生時代と異なり、トピックスと言われるものは、その「地」から発生していることがほとんどです。最近のファシア、マイクロバイオ―タなどはまさにそのいい例。

 筋骨格ばかりに注意していると、その「地」であるファシアには気づきにくいもの。従来、気のせいとか、ストレス・自律神経とか、臨床的になんとなく思い付きのストーリーで処理されている諸症状の多くが、ファシアなど「地」的な概念によって、かなりが説明可能です。
 そこへの具体的なアプローチとして漢方や鍼灸、その他ハイドロリリースなどを適応していくと考えると、無理に東洋医学の「併用」とか「統合」といった肩ひじを張らなくても、必然的に、実践、統合されていくように思います。

 腸内環境におけるマイクロバイオ―タの役割も同様で、消化器疾患の諸症状のみならず、内臓疾患幅広く、炎症、腫瘍などあらゆる面での深い影響がうかがわれます。
 現状としては、まだ限定された疾患だけですが、その重要度も含めて、より影響力は強まっていくでしょうし、これまでの病態生理的な説明の逆転もあるかもしれません。とりわけ、糖尿、ダイエット、肥満などは、その摂取カロリーでの議論が久しいですが、遺伝子以上に、「体質」として扱われていた不確定要素へのマイクロバイオ―タの重要度は増すばかりではないでしょうか。

 また、免疫系の本質と消化器系の役割、生命の源としての腎の役割なども、中医学で言うところの先天・後天の気という概念にもつながってきます。とりわけ、近年の長寿遺伝子としてのクロト―遺伝子の役割から展開してきた腎臓の(とりわけ老化物質としてのリン排泄の)役割は、まさに先天の器としての腎そのものと言えそうです。

 無意識への関与に関しても、思弁的なものに限定されず、グリア、とりわけアストロサイトの役割や、脳腸相関の知見、ニューロセプションの概念などは、その具体的なアプローチを可能にしていくのではないかと考えられます。

 「図」としての解剖生理に対して、「地」としての視点から眺めたトピックスを含めて、今月は統合医療学会主催の認定講演会としてのパート5「解剖生理」も開催予定です。2時間という短時間ですが、問題演習をふくめて、ここで述べたトピックスも駆け足で紹介する予定ですので、ご興味のある方は、統合医療学会のホームページをご覧ください。

統合医療の考え方活かし方
―新しい健康デザインの実践

小池 弘人
中央アート出版社 2011-07-10


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