臨床ファッシア瘀血学(7)波動医学再考
先日書いたブログの内容について、院内カンファレンスで話題になったことについて考察してみたいと思います。「波動医学再考」として、電子が意志を持つという山田先生の著作に関する議論をしていたときの話題です。(メモ的なものですので興味ない方はスルーしてください)今回は「ファッシア瘀血」の概念というよりは、その周辺の歴史的な流れといったところでしょうか。
電子が意志を持つことを肯定すると、量子力学において無理に量子の二重性を仮定しなければならないわけではない、とする山田先生の論理が展開されるのですが、すると、生命の波動性のようなものも無理に仮定する必要がなくなるのではないか、という意見をのべたところ、カンファレンスにおいて質問が出ました。
では、アストラル体やエーテル体のようなものを否定することにならないか、という質問です。ホリスティックムーヴメントにおいて、重要な書籍である「バイブレーショナルメディスン」に基づいた質問なのですが、ここに「波動医学」の諸問題が現れてくるように感じます。まさに波動性の再考です。
私自身は、生命を考える際には物か?波か?という二重性ですら十分ではない、という考えを述べられていた中田力先生のご意見に、大賛成という立場です。ところが代替医療を含めた統合医療という視点から見た場合、色々な意見があるのも事実です。
そして多元的な視点を推奨する上では、それらを一概に否定するわけでもありません。しかし波動であるという立場に強くこだわる方々もまた少なくなく「波動医学」という分野を形成しているわけです。そして同書は、まさに混迷していた代替医療の世界において「波動」という用語により、多彩な代替医療群を整理分類したものです。
こうした同様の視点を有する理論により「波動医学」が形成されてきているので、あらためて同書を読み直してみました。
これをあえて、ファッシア瘀血学の項目として書いたのは、この波動概念こそ、ファッシアに至る歴史的潮流の一つとして考えられるのではないかと思ったからです。
つまり、多彩な代替医療を何らかのキーワードの下に統一的に記述する、という意味では同書は重要な書籍であると考えます。しかし広義のファッシア、もしくは生体マトリックスという視点の導入により、それらの概念を「フック」として多彩な代替医療を分類することも可能になってきました。波動といういわば「無形化」した概念と比較して、具体的なイメージを持ちやすい概念のフックです。
では、なぜ波動性をスキップすることが可能か。その理由こそが電子が意志を持つという仮説です。科学史的には、量子力学における物質と波動の二重性は、或る意味でアインシュタインの考えをも超越したものでもあり、すべてのモノは波でもあるという「考案」のような考えは、広く代替医療の世界へと浸透していきました。こうした潮流の代表例が、東洋思想と現代物理学とを融合させたカプラ『タオ自然学』でしょう。
このような当時の先端科学の思潮が、代替医療に取り込まれるさまは、その少し前、明治日本における霊術と「放射線」との融合などにもみてとれます。つまり科学的新概念との融合は、代替医療という領域は結構得意だったりします。
それゆえに量子力学における粒子と波動の二重性を必要としない理論が展開可能であるならば、無理に「波動」概念も持ち出す必要もなくなるわけです。
代替医療側のこの辺りの概念の混同を、すでに見越して解説されているのが、ほかならぬ『バイブレーショナルメディスン』の翻訳者である真鍋太史郎先生であったりするのも、また一興です。
真鍋太史郎先生は「訳者あとがき」において、シュレディンガーの「波動関数」と、作者であるガーバーのいう「波動医学」とは直接の関係はないということを明確に述べています。(この真鍋先生、医療全般に関する適確なコメントから放射線・核医学について極めて造詣の深い医師であることが推測されます)
いずれにせよ二重性が必要ないとするならば、波動性の必要もなくなるわけですが、そうした過程の上で展開される世界観が、一般の方にとって本当に受け入れやすいものなのかは別問題です。何せ、電子に意志を仮定したわけですから、そもそも我々が普通に考える意志と似ているのかどうかすらわかりません(笑)
ただし、この過程は意外な方向に論理を展開していきます。それが「対話」というものの重視です。平たく言うと、波動概念を不要にすると、万物の「対話」概念が必要になります。ここにジャングルカンファレンスの思想的な基盤があることは、ここを読まれてる方にはおおよそ察しが付くところでしょう。
電子を「対話」する意志を有するものであるとの仮定は、電子そのものへの「個性」をも仮定するものでもありますし、それが身体内部を流れるのがファッシアを形成するコラーゲン線維ということになります。また量子医学と称される分野における量子は、結合水における量子的な挙動の記述であるので、波動性とは少し異なる論理の展開になるわけです。
ちょっとまとまりませんが、あくまでもメモ的な記載ですので、ご興味ある方は直接お尋ねください。日曜夜なのでこのへんにします・・・
バイブレーショナル・メディスン: いのちを癒す〈エネルギー医学〉の全体像
リチャード ガーバー 日本教文社 2000-10-23
タオ自然学―現代物理学の先端から「東洋の世紀」がはじまる
F・カプラ 工作舎 1979-11-15
配信元:Wikipedia