未来をつくる会社のビジョン02【生成AI】
さて「未来をつくる会社のビジョン」の第2回です。今回は、次の社会インフラとなり未来をつくるであろう生成AIの会社(OpenAI、Anthropic、Inflection)をピックアップしていきます。ちなみに第1回の記事はWEB3なので、興味がある方はぜひこちらも読んでやってください。こんなニッチなテーマを誰が読むのだろうと思いつつ、早速はじめていきましょう。
01.「Creating safe AGI that benefits all of humanity」:OpenAI
OpenAIについては説明が不要なくらい毎日情報が溢れています。そうです。ChatGPTを開発している会社です。ではせっかくなので自社のことをChatGPTに説明してもらいましょう。
ChatGPTも自覚している通り、やはり圧倒的なリーディングカンパニーですね。
Vision -ビジョン
僕的なポイント
「全人類の利益」を目指しているのが大きなポイント。「all of humanity」という言葉から、AGI(汎用型AI)を公共財として捉えているからこその倫理観の高さと民主化の覚悟を感じました。AGIが発達すればするほど悪用リスクや規制の議論に発展しがち。もちろん大切な議論ですが過度な規制はテクノロジーの発展、よりよい社会の実現のためによくない。というわけで、リーディングカンパニーであるOpenAIがビジョンで倫理観を宣言しているのはめちゃめちゃいいなと感じました。また、特定の誰かではなく全人類がAGIの果実を享受できる環境(=民主化)を目指すという点も、エンジニアではない僕も非常に共感するところです。このビジョンから誰でも使いやすいChatUIでの開発につながったのかもしれないですね。
unique capped-profit model -上限利益モデル
ちなみにOpenAIはビジョンで倫理観を宣言するだけではなく「上限利益モデル」という公共財としての意識が強く感じられる独自の営利と非営利のハイブリッドモデルで運営されています。
OpenAI LPの基本的な考え方は、決められた水準以上の利益を非営利団体であるOpenAI Nonprofitに移動しAGIの正しい発展のために投資をしていくこと。投資家や従業員の利益よりもビジョン/ミッションの達成、つまりは社会的な価値を優先するということですね。本当にすばらしい仕組みです。またひとつスキな会社が増えました。
上限利益モデルの詳細はこちら
02.:「Making AI systemsyou can rely on」:Anthropic
さて次の会社はOPENAIというかChatGPTの最大のライバル(といわれている)claudeを開発しているAnthropicです。創業者はOpenAI出身の研究者でAIの安全性に対する高い専門性を有しています。せっかくなのでこちらもclaudeに説明してもらいましょう。
ちなみに、先日(2023年10月)に日本語にも対応されましたね。謙遜していてまだまだ苦手と言っていますがすごく流暢です。
Vision -ビジョン
僕的なポイント
誤用、悪用のリスクが高いという認識もあり、信頼、安全はもちろん透明性、説明可能性も強調しているビジョンになっています。実際にAnthropicはAIの恩恵を最大化しリスクを最小化するために「Constitutional AI(憲法的AI)」が必要であると提唱しています。それは人間の価値観や権利をAIシステムの根幹に組み込み、AIがそれらを遵守するように設計するアプローチです。具体的には、人権、プライバシー、表現の自由、人格の尊重などの概念を学習データや制約条件としてAIに組み込み、人間の幸福や社会の調和のための判断と行動をするように促しています。人間は憲法や法律を守らない例もかなりありますが、AIは組み込まれると必ず守るようになるのでしょうか?それとも将来はAIも人間っぽくなって、、、興味は尽きません。
03.「We are an AI studio creating a personal AI for everyone.」:Inflection
最後はInflecitonです。対話AIに特化した会社で、より人間らしい対話を可能にする技術に焦点を当てています。InflecitonのAIは、パーソナル・インテリジェンスを意味するPiと呼ばれていて非常に共感的な会話をするAIです。実際に使用するとAIに感じがちな事務的な印象はないし、友人との対話のようにAIと自然にコミュニケーションできる心地よい感覚になります。こちらもPiにInflecitonについて説明してもらいました。
ちなみに、日本語でもいけますがまだまだ英語のほうが精度は高そうです。絵文字を使用しながら軽やかに会話が進みます。さらに音声読み上げ機能があり、声や話し方のバリエーションも豊富です。心地いい。
Vision -ビジョン
Inflecitonサイトのビジョンは非常にシンプルです。対象はやはり「すべての人」で自社がやることを「パーソナルAIを創造する」と具体的に定義しています。さらに背景も含め理解しようとPiにもビジョンを聞いてみました。
僕的なポイント
当然のように倫理観、人の価値観は大切にしつつ、Pi(パーソナルAI)という呼び名の通りユーザーの日常に自然と溶け込む人感のあるAIの実装を目指しているようです。それはツール、テクノロジとしてのAIというよりは人間らしいAIとの新しい共生を実現しようという宣言にも感じて、やさしいやわらかなビジョンだなと感じます。まあ、ビジョンの言葉そのものというよりもPiを触ってみての感覚が僕にそう思わせているのかもしれません。実際にPiに感情移入もできそうだし、孤独などが社会的な課題がAIで解消されるような効果も期待できそうですね。
番外編 サービス比較
3社のビジョンを調べるうちに、サービスを触ってみたくなったり、資金調達額を調べたりしてたので、ビジョンとはあまり関係ないですが番外編として一部を共有します。
資金調達
OpneAIが圧倒的ですがInflecitonは会社設立から1年で15億円以上と非常に調達スピードが早いです。
OpenAI 113億ドル:Microsoft、YCombinator、Sequoia
Anthropic 55億ドル以上:Amazon、Alphabet(Google)など
Infleciton 15.25億ドル:Microsoft、Nvidia、Bill Gatesなど
サービスを利用してみての雑な比較
それぞれのAIに共通の質問をした結果、回答に違いがあるのかを確認してみました。ちなみに、Piのみ精度の関係上、英語で質問をしています。
Q:Anthropic、Inflection AI、OpenAIの違いを教えてください
ChatGPT、claude、Piの順番でキャプチャを貼っていきますね。この質問では、ChatGPTがさすがです。自ら比較項目を設計して会社ごとにわかりやすくまとめてくれます。claudeは非常に簡潔です。少し精度が低い情報も含まれていそうです。Piはさらにザクッとしていますね。本当の人みたいです。
あまりにもザクッとしたていたので、Piだけ追加の質問をしました。(実際は、精度を上げるためすべて英語です)。すると、わかりやすく回答してくれました。人間の会話と同じように少しずつ進んでいく感覚ですね。ただ、個人的には会社別のまとめてほしかった。まあ、これもプロンプトの書き方で解決できると思いますが、自然対話を追求するPiとしてはうまくまとめてほしかったというのも本音です。口語的に親しみを感じさせながら、しかし整理するっていうのはなかなか難しそうです。
Q:目標、主要製品、収益源、特徴の4点に整理して違いを教えてください。
あと、機能的な価値とはあまり関係ないのかもですがUXとしては大事なそうな「ありがとう」と言われたときの回答にもそれぞれ特徴がありました。やはりPiが最もやわらかで友達感覚ですね。
まとめ、というか感想
WEB3に続き、生成AIの会社についてみてきました。3社ともに共通していたポイントとしては、社会インフラ、公共財としての非常に高い倫理観が宣言されていた点です。その意識はWEB3の会社よりも具体性があり力強く感じました(あくまで個人の感想です)。おそらくすでにマスアダプションにはいっているChatGPTという存在が大きいのかもしれません。
一方、OpenAIはリーディングカンパニーとして自律した仕組みの構築、Anthropicは人に害を及ぼさないようAIに「憲法の遵守」を組み込むアプローチ、Inflecitonは本質的な人とAIの共生を実現しようとしているなど、3社の特徴的なポイントも理解できて楽しかったです。しかも、それは各社のサービスにきちんと反映されていました。
乱暴に言えば、現状はAIの回答の正確性が競争ポイントになっている段階かなと思います。ただ「正確性」は間違いなくコモディティ化する、もしくは一般の人々にとっては過剰品質となるでしょう。全人類が使うであろう汎用型AIがそのフェーズに突入すると使いやすさ、心地よさが最も重要な競争ポイントになるはず。ただ、会話、対話の心地よいUXは簡単に提供できることではなく、それすらAIによるコントロールが必要なことだと考えるとPiを開発しているInflectionの感情的なアプローチがすごく腑に落ちています。でも、ChatGPTもカスタムインタラクションである程度人格が設定できるし、、、、などなど、未来をワクワク妄想をしながら第2回を終わりたいと思います。また第3回で。
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