ChatGPTとの対話で、魅力的な新事業を構想するプロセス ‐ 課題の定義【新事業構想とAI】
さて、ChatGPTとの対話で、魅力的な新事業構想を検討するためのプロセスの第2回ということで、課題の定義フェーズでのChatGPTの活用について書いていきます。ちなみに、この記事では、自分が考えた課題仮説がある状態から対話を進めていきます。そのため、全く課題仮説がない状態ではあまり参考にはならないと思います。ChatGPTと対話する際は、精度は高くなくても構わないので、ある程度の枠組み・仮説があった方がよいアウトプットに繋がりやすくなるという印象があるので、ぜひ意識してみてくださいね。
↓第1回の導入・準備編はこちら
では早速、本題にはいっていきましょう。
課題の定義
課題の定義のフェーズは、1)課題仮説の視点を広げる・深める、2)トレードオフ関係を把握する、3)課題仮説をアップデートするの3ステップで進めていきます。
1)課題仮説の視点を広げる・深める
課題仮説の解像度を高めるためには、一般的に大きな問題の原因である課題を広く・深く・構造的に把握し、さらに解決した際に大きな影響がある課題を特定することが重要です。しかし、ヒトが考える場合は、広く・深く把握するには限界があるため魅力的な課題仮説が定義できない場合もあります。本当にこれでいいのかな?と感じたまま進んでしまうプロジェクトも多いと思います。ChatGPTは世の中のあらゆる情報を把握しているため、課題仮説を広げる・深めるには最適なパートナーとなるでしょう。
以下が、課題仮説の視点を広げる・深めるためのプロンプトです。はじめに自分が考えた課題仮説を定義し、その後ChatGPTにお願いしたいこと(あなたがやること)と出力形式を指示しています。ちなみに、一般的なプロンプトでは「#命令」とかよく使われていますが、パートナー感がなくて個人的にスキじゃないのであえて使用しません。
課題仮説のプロンプトの書き方を解説していきます。
プロンプトのコツ
#課題仮説
・あえて複数の課題を書く
その原因となっている課題は、複数書くとChatGPTから提案される課題に拡がりがでます。ヒトに対して複数の課題を提示すると議論、視点が分散してわけがわからなくなりますが、ChatGPTはそんなことはありません。今回は、態度変容=はじめる課題と行動変容=つづける課題で意識的に書き分けています。
・課題だけではなく原因もあわせて書く
課題だけではなく原因を書くとことでChatGPTの理解が深まり次工程の精度がよくなると感じます。課題の定型文としては「{課題}である。なぜなら{原因}だからだ」がよいと思います。
#あなたがやること
・一般的なフレームワークを転用する
解像度を高めるための一般的な手法である「広げる」「深める」をアプローチとして指示しています。このようにヒトの思考方法、既存の新事業構想のフレームワークなどを転用していくと狙い通りのアウトプットに繋がりやすくなります。
#出力形式
・数を指定する
5つの課題、3つの要素、など数を指定するのは非常に有効です。どのプロンプトにおいても、明確に数を定義するようにしていきましょう。
・知りたいことを要素に分解してもらう
また、課題をさらに3つの要素(現象、原因、影響)に分解するという意図は、ChatGPTとの対話からヒトが多くの視点を抽出しやすくするためです。単純に課題を挙げてもらうよりも、3つの要素から得られる視点も多くあります。他のプロンプトでも、最終的に知りたいこと=今回の場合は課題、を要素分解して説明してもらうほうが得られることが多いと思いますので、ぜひ活用してください。
以下が、ChatGPTからの回答の一部です。現象・原因・影響に分解して説明されて非常に多くの視点が抽出できると思います。今回の場合は、ジムの雰囲気が初心者にとって圧倒的で歓迎されていないと感じる、体力に自信がないと運動を始めるハードルが高くなる、など気づかなかったインサイトがあり、自分の視点が少し広がりました。
2)トレードオフ関係を把握する
次に、課題仮説をより魅力的にしていくために、トレードオフ関係を把握していきたいと思います。ユニークな事業を構想するためには、両立が難しそうなトレードオフ関係を解決していくのがポイントです。ただ、自分で「うーーーん」って考えてもなかなか見つけるのが難しいし、時間がかかってしまいます。そこはやはりChatGPTのほうが適正があるといえるでしょう。
トレードオフ関係把握のプロンプトの書き方は、あまりポイントがないのですが少しだけ解説します。
プロンプトのコツ
#あなたがやること
・一般的な回答には「具体的に」「AではなくBで対応」
ChatGPTと対話していくと、いきなり一般的な回答や抽象度の高い回答になってしまう場合が結構あります。トレードオフ関係を聞いたときも、フィットネス業界のトレードオフ関係となっていたので「理由を具体的に」「一般的なフィットネス業界ではなく、、、」という文言をプロンプトに追加しています。
以下が、ChatGPTからの回答の一部です。数秒でトレードオフ関係が提案されます。なるほど、なるほど。
でも、どうやって解決すればいいのだろう?というわけで、こちらもChatGPTに聞いてみましょう。
注意したいのは、フィットネス業界でのトレードオフ関係の解決事例を聞いても競合がすでに実施していることが多いので、他業界の事例を聞いています。他業界からのノウハウ転用を狙っています。こちらも、新事業構想における鉄板の方法ですね。また、このプロンプトも「AではなくB」と定義しています。
以下が、ChatGPTからの回答の一部です。数秒でトレードオフ関係の解決アプローチが生成されました。まあ、多くは一般的なのですが、いくつか参考になる視点があるのでは? いかがでしょうか?
プロンプトのコツ
ちなみに、プロンプトを書くときに一番重視しているのは、参考になるキーワードをたくさん獲得するように書くことです。最終的に仕上げるのは自分であるという意識で、ChatGPTには視点を拡げてキーワードを提供してもらっている感覚です。
なので、上記の回答であれば「自宅でも集団運動の経験を再現」「ゲーミフィケーションの要素を導入することで(中略)短期的な興味から長期的な週間へ」みたいなキーワードを触媒にしながら、自分の発想を拡げたり、ChatGPTのプロンプトをあらためて調整したり、そんな感じで活用していきます
3)課題仮説をアップデートする
課題仮説の定義の最終ステップです。いままでの対話(課題を広げる・深める、トレードオフ関係)から、ChatGPTに課題仮説をアップデートしてもらいます。このステップはChatGPTにお願いしてもいいですし、ヒトがやってもいいと思いますので、やりやすい方法を選択してください。ただ、ヒトがやる場合は、ここまでのステップでChatGPTからどのくらいキーワードが獲得できているかがポイントですね。
もはや、プロンプトの書き方の解説はありません。いままでのポイントの応用で書けると思います。
以下が、ChatGPTの回答です。かなりの数の課題が続きます。この課題の定義を受けて、ヒトが優先順位をつけてアイディエーションしてもよいですが、あえて優先順位をつけずにChatGPTにソリューションを考えてもらう方がおすすめです。
その理由は、第1回でも書いた通り、事業環境や取り扱う問題が複雑化している時代において、もはやヒトのみでの思考に限界がありAIを活用したプロセスに転換していく必要があると感じています。課題仮説〜ソリューション発想はまさにその影響を受けるフェーズで、ヒトだと、複数の課題に対して優先順をつけて、それぞれの課題に対して機能レベルでアイディエーションして、組み合わせながらソリューションをつくるるのが一般的ですが、どうしても視点や視座に偏りがでちゃう。ChatGPTをつかうと、複数の課題を同時に、しかも多様性のある視点で、かつ短時間で考えられるので、効率的に検証に進められると考えています。
もちろん、アイデアだけを提案してもらうのではなく、”参考になるキーワードをたくさん獲得する”ために、ChatGPTに仮想でブレスト会話しながら提案してもらうなどの工夫が必要です。(以下の画像参照)
次回の記事で、そのあたりを解説していこうと思いますが、ちょっとだけだけ予告です。以下の画像のように、ChatGPTが仮想BTCブレストから、整合性の高いソリューションコンセプトを提案してくれています。また、このブレストの気になるキーワードをつかって、さらなるブレストの継続や新たなソリューションの発散がいくらでも可能になります。衝撃です。というわけで、長くなりましたが第2回を終わります。最後まで読んでいただきありがとうございます。では、また第3回で。
「スキ」「フォロー」をいただけると励みになります。「ビジネスデザインマガジン」の他の記事も興味があればぜひ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?