ChatGPTとの対話で、魅力的な新事業を構想するプロセス 第1回 導入・準備【新事業構想とAI】
さて、OpenAIが発表したGPT4-Turboなどを考えながら、なんとなくソワソワしている小池です。「スマートフォンがもたらした大きな変化を超える何かが起きる。これは時代の転換点になるぞ」と確信しています。けれど、言語化できていないし、まだ準備もできていない。ざわざわ。そわそわ。NEWhでもChatGPTなどAIを活用した全く新しい新事業構想のプロセスを発表できるといいなー、っていろいろ実験はしています。この記事はそんな実験を少しだけまとめていく【新事業構想とAI】シリーズです。今回は、ChatGPTとの対話で、魅力的な新事業構想を検討するためのプロセスを全3回の連載で書いてこうと思います。単純なプロンプト集ではなく応用できるノウハウに昇華していくことを目標にしていきます。この記事は第1回ということでプロセスを考えるスタンスとChatGPTとの対話の準備について解説します。まずは、基本スタンスからはじめていきましょう。
事業構想の新プロセスを考えていくスタンス
1)代替ではなく、ヒトとAIの思考に最適化した新しいプロセス
これは考えていく上で実感したことです。新事業構想のプロセスって、当たり前なんですが、ヒトが考えるのに最適化されているんですよね。言い換えると、ヒトの思考の特性や限界がプロセスの前提条件になっている。例えば、複雑な問題は一気に考えるのではなく、なるべく単純化してシンプルに考えられるようにする、などです。ただ、これからはヒトとAIが共同で新事業を考えていくようになります。つまり、前提条件が異なっているんです。ヒトの限界突破。僕らは真の”Bicycle For Brain”を手に入れつつあるのかもしれません。だったら、それに最適なプロセスが必要というわけですね。
以下の記事にもある通り”AI システムは、データのパターンに基づいて学習し、推論し、意思決定を行う能力を備えています。彼らは膨大な量の情報を分析し、人間には見えない複雑または微妙な関係を引き出し、この方法で実際に人間のオペレーターに洞察を提供”できます。つまり、ヒトにはできないことができるということ。このシリーズでは、従来のプロセスを単純にAIで代替するのではなく、ヒトとAIの特性を活かして新たなプロセスを構築していきたいと考えています。
2)すべてをAIで考えるのではなく、ヒトとAIの役割を常に意識する
そして、2つめ。先日ファミリーレストランでよく見かける猫型の配膳ロボについてこんなまとめがありました。
タイトルの通りで説明するまでもないのですが、配膳ロボットを猫型にすることによって、お客さん(人)が自発的に配膳してもらう状況を創出しているということです。これは本当にすごい。今までは、ウエイターがすべて担当してた役割を、配膳ロボットは席に運ぶまで、お客さんがテーブルに配膳するというように分担しているということです。しかも自発的に、です。すべての工程をロボットに任せると技術的な難易度がグッと上がるし、何よりコスト高になってしまいます。その課題を「猫」というアイデアでブレイクスルーした非常に良い事例ですね。
この事例のようにロボットが関わるサービスを検討する場合には、すべてをロボットで対応するのではなく、ヒトとの役割分担を設計することが非常に重要です。AIも同じです。このシリーズは新事業構想におけるAIを活用をテーマにしていますが、すべてをAIで考えるのではなくヒトとAIの最適な役割分担を考えていくというスタンスで考えています。ただ、その役割分担、線引きはAIの急速な発達により常に変動していきますので、あしからず。。。
というわけで、スタンスの話はここまで。
全体プロセスと検討テーマ
ここから、プロセスの全体像を説明します。ヒトのみで考える新事業構想と同様に、事前準備・課題の定義・解決策の検討の3フェーズで進めていきます。基本的にはヒトが枠組みをつくりChatGPTがクラフトするという役割分担になっています。あらためてですが、第1回のこの記事は、基本スタンスと事前準備、第2回で課題定義、第3回で解決策の検討という感じで書いていきます。たぶん、第2回、第3回の方がおもしろいはず。。。
また、具体例をベースに説明したほうがわかりやすいので、VDSケーススタディでも分析したChocoZAPが取り組んでいるフィットネス業界の課題をテーマに新事業を検討していきます。それでは事前準備の説明にはいっていきます。
事前準備:3つの定義
まず、いきなりChatGPTと対話を始めるのではなく対話のための準備をします。具体的には、目的・ChatGPTの役割・前提となる言葉の3つの定義をしていきます。
1)対話の目的
対話についての目的を明確に定義します。目的を設定することで、ChatGPTは目的を考慮して回答するようになります。ここでは、シンプルに新事業を検討している市場と課題仮説の視点を拡げていきたいという目的を設定しました。
2)ChatGPTの役割
次に、ChatGPTにどんな役割を期待しているのかを明確に定義します。ここでは、プロセスによって役割や視座を柔軟に変えていきたいため、あえて「事業開発の専門家」という抽象的な定義をしています。この定義をすることで、ChatGPTは役割を考慮して回答してくれるようになります。期待する役割に応じてUXデザイナー、意思決定者など職種や立場で具体的に定義してもOKです。
3)前提となる言葉
ヒトと会話する際には、言葉の定義は曖昧なまま進むことが多いですが、ChatGPTと対話していくには言葉を明確に定義することが重要です(本来はヒト同士でもちゃんと定義したほうがいいのですが嫌がられます。しかしChatGPTは嫌がらないので…)。今回は、課題の定義からはじめるので、重要な言葉である課題仮説・問題・課題を3つの言葉を定義しました。
以下が、具体的に作成したプロンプトです。
ChatGPTの回答はこんな感じですね。目的と役割を理解してくれているので安心感があります。
次回予告とまとめ
というわけで、第1回は割りとあっさりなんですが以上です。いかがでしたか?
この先のプロセスを考えていて、事業環境の大きな変化と現在の新事業構想のプロセスにギャップが生じていると感じています。従来のように新事業構想で取り扱う問題が単純であったときは、一つの強い課題の解決策を考えることがソリューションや事業の構想になっていました。けれど、現在の複雑な事業環境だとそれではうまくいかなくて、複雑な問題に対して複数の「弱い」課題を整合性をつくりながら解決していくのが重要になっている感覚があります。
その環境の変化に対して、ヒトだけだと複数の課題に対して優先順をつけて、機能レベルでアイディエーションして、組み合わせながらソリューションをつくるプロセスが一般的ですが、どうしても視点、視座に偏りがでてしまいます。ChatoGPTをつかうと、課題仮説の多様性・網羅性をあげながら、複数の課題に対する統合的なソリューションを考えられます。さらに、多様性のある視点・視座により整合性を高めながらアップデートすることも可能です。つまり、今までのヒトのベースの事業構想の常識を破壊しながら、事業環境とのギャップを埋められる新プロセスがつくれる可能性があると感じています。
次回以降の記事で、そのあたりを解説していこうと思いますが、ちょっとだけだけ予告です。以下のキャプチャのように、ChatGPTが仮想BTCブレストしながら、整合性の高いソリューションを提案してくれています。また、このブレストから気になるキーワードを抽出して、さらなるブレストの継続や新たなソリューションの発散が可能になります。衝撃です。というわけで、長くなりましたが第1回を終わります。第2回は課題の定義について書いていきたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございます。では、また。
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