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第98椀 かつ丼に赤だし

初出:2022年5月8日

<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから

「お味噌汁復活委員会」は、味噌汁の大切さをあらためて発信していこうと、2014年夏にFacebookページにてスタートしました。世話人、お味噌汁復活ライター、一般読者が思い思いの味噌汁を投稿しています。

味噌汁の出汁・味噌・具材を、それぞれに深く楽しく考え広め、毎日の食卓に味噌汁をいただく習慣を復活させるべく、活動の場を広げています。

私コイタは第1期からお味噌汁復活ライターをさせていただいております。ここでは私の書いた記事をまとめて紹介しています。

テーマ:赤だし

『かつ丼に赤だし』

「赤だしって赤味噌で作ったお味噌汁でしょう」という風に思っている方も多いかと思います。これは正解のようでもあり、間違いでもあります。

実は赤味噌とは原材料や製法にかかわらず、赤い色をした味噌のことを指します。東海地方の人なら、まず味噌カツや味噌煮込みうどんで有名な豆味噌をまず浮かべますが、米味噌でも麦味噌でも色が赤かったら赤味噌なんですね。

赤だしと言うのは豆味噌を基本にしたお味噌汁を指します。ちなみに豆味噌とは、原料が大豆と塩と水だけで、大豆に直接麹菌を付けた豆麹を使い、熟成期間が一年から三年と長い味噌のことです。その豆味噌の中でも八丁味噌は、製造にかける手間、そこから醸し出される味わいも別格といわれる味噌のことです。

豆味噌は水分が少なく溶けにくいので、あらかじめ鰹節などを加えて擦りのばしてから汁物に仕立てる方法を、関西で「赤だし」と呼んでいたことがはじまりのようです。また豆味噌は、大豆のうま味を凝縮した濃厚なコクと独特な渋味が特徴で、見た目よりも塩辛さは少なく、甘みはほとんどありませんので、あまり馴染みのない人がいただきますと、クセが強くて敬遠されてしまうようです。なので、関西では白味噌と合わせたり、東海地方では米味噌とみりんを合わせたり、最後に醤油を落としたりして、味を調整して食べやすくしたんですね。このようにお店で合わせていたものを、あらかじめメーカーが調合して赤だし味噌として売り出したということです。

ところで、名前が赤だし味噌と言う商品でも、全国的には「だし」入りではない調合味噌の呼び名ということになっているそうです。ところが本場の東海圏で「赤だし味噌」と言いますと、豆味噌に「だし」の入った味噌を指すことが多いです。それで、豆味噌と米味噌の調合した味噌は「ミックス味噌」と表記されていることが多いです。つまり「だし」が入っているかいないかは、原材料表記を確認しないと分かりません。基本のお味噌汁が豆味噌なので、あえて赤だしとは呼ばないってことです。

ちなみに、天ぷら屋さんやとんかつ屋さんでは、お味噌汁は赤だしというところが多いそうですね。赤だしは旨みがきりっと引き締まっているので、油ものを食べても後味がさっぱりするからだそうです。

と、言うわけで、今回の写真は自分で料理したお味噌汁ではなく、地元の定食屋さんにて、かつ丼に赤だしの一枚。またこういう時の赤だしはあまり具がない方が良いんですよねぇ。


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