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「缶ワイン」の過去・現在・未来について考えたこと

先日、ツイッターで缶ワインについて、つぶやいたところ、予想以上の大きな反響があり、たくさんのリツイートとコメントをいただいた。

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実際に今、僕がワインディレクターを務めているお店では、テイクアウト需要を含めて、加速度的に消費は伸び続けている。

特に表参道のカフェでは、俄然人気を増してきていて、これからのワインの飲用スタイルの変化の可能性を、充分に感じている。

とはいえ、僕自身、たった半年前までは、缶ワインをお店でお出しするという発想は全くなかった。

「全てはテイスティングに答えがある」

これまでの、ソムリエとしての自身の決断は、すべてここに集約される。

全ては、自分のテイスティングから導いた答えを信じること。

それが、どんな高級ワインであろうと、どれだけリーズナブルなワインであったとしても、判断はティスティングにより導き出す。 

ここがブレなかったからこそ、今の自分が存在している。           

それが「缶ワイン」という、まだ未知なる存在と向きあうのであれば、なおさらのこと。

今日は、僕が考える缶ワインの過去から現在、そして未来について、お話ししたい。


過去 〜缶ワインとの出会い〜

ワインで缶、これはふつうに考えてイメージは良くなりづらい。

「缶といえばビールでしょう」

僕も実際そうだった。

ワインというのは、他の飲みもの以上に、飲むときのシチュエーションを選ぶ。 特に日本では、良くも悪くも、ある種の特別な飲みものとして、そう考えられる風潮にある。

そうさせる原因は、まず、その金額にあるだろう。

ワインは決して安くはない。 そのイメージが先行しているし、データを見ても、日本は、フランスの高級なワインを、多く輸入している実績が見られる。

およそ15年前、初めて缶ワインを飲んだ。そのときに思ったのが、「缶の香りがするし、味にもそれが少し感じられる...」

そもそも、ワイン自体のクオリティに対し疑問を抱き、もし仮に、ボトルワインであったとしても、僕はゲストにそのワインをサーヴはしないだろうと考えた。

ただし、これは今考えれば、「その1種類の缶ワイン=全ての缶ワイン」と位置づけてしまうこと自体が完全に間違った考え方だ。

通常のボトルワインに置きかえて考えても、今でこそ、これほどまでに、日本にたくさんの種類のワインが輸入されるようになったからこそ、その数ある選択肢の中から良いと思えるものを厳選し、セレクトできる。

過去の日本における、ドイツワインやロゼワインのように、数が限られた中で、「そのワイン=その国のワイン」というふうに、大枠で捉えるようなことは、もはや絶対にしてはならない。


現在 〜進化する缶ワイン〜

まさにイメージは激変した。

とはいえ、まだまだ数種類しか日本に缶ワインは存在しておらず、その中でテイスティングしただけの話ではあるが...

しかしその中で、ひいき目なしにクオリティが高く、ゲストにお出しして、それを体感していただきたい。そう思えるアイテムが、こうして目の前に登場したことに、驚きと喜び、そして大きな可能性を感じた。

ツイッターでもご紹介させていただいた、「ヘッドハイ ピノ・ノワール」と「アンダーウッド ピノ・グリ」。いずれも、アメリカで生まれたワインだ。

およそ半年前に、これらをテイスティングし、そのクオリティの高さに驚いた。 昔感じた、缶から由来する香りや味への弊害は、そこにはもはや存在しない。

明らかな進化を感じた。

その後、多くの方々から寄せられた情報によると、アメリカでは、缶ワインを日常的に飲む文化が、かなり定着してきているようである。

世界最大のワイン消費国であるアメリカが、この分野においても、世界の消費スタイルに、大きく影響をおよぼしていくことになる可能性は高い。

未来 〜缶ワインを楽しむ〜

冒頭でお話しさせていただいた、缶ワインにおける、カフェやテイクアウト需要の増加。日本における、流行の発信地の一つとしても知られる、表参道の地で、この動きが出始めていることは、決して見逃すことはできない。

この缶ワインは、「缶のまま飲んでも美味しい」ように造られたということだが、個人的な意見を言わせていただくと、いろいろと試してみた結果、やはりグラスに注いで飲むほうが、あきらかにワイン自体の香り、味わいのクオリティは高く感じられる。そう考えると、やはりワインというのは、その美しい色調と香りが、大きな魅力であり、味わいにも大きく影響を及ぼすことに間違いはない。(缶ビールにおいても、僕は缶のままで飲むよりも、ビールのタイプに合わせたグラスに注いで、しっかりと泡をつくって飲むのが好き)

とはいえ、新幹線での移動中や、バーベキューなどのシーンでは、缶でそのまま飲むというのも、シチュエーションに合っているし、状況に応じて飲み方を選べるのも、缶の強みだと考えている。

ワインを自宅で飲むことが、ますます増えていくであろうこれからの未来。  

「瓶よりも缶」。ビールのように、ワインもそうなる日がくることは、想像にかたくない。  

最後に 

ワインの飲用スタイルは、今後、さらに自由な形へと変化していくことが予想される。 

かつては「ワインは高級レストランで飲むもの」というイメージが少なからずあり、その後、ワイン居酒屋やカジュアルなビストロでの需要が急速に高まった。さらには、和食のお店、お寿司屋さんや焼き鳥屋さん等にまで、ワインの活躍の場が広がり続けてきたことからも、そう言える。

レストランにおいてボトルワインは、高級感や熟成のポテンシャル、周りの仲間とシェアする楽しみにおいて、欠かすことできない存在であり、これに関しては、まず変わることはない。   

しかし、それ以外における、楽しみ方の自由度に関しては、これからますます多様化していくでしょう。

僕はワイン雑誌の取材で、「冷やしワイン」や「ホットワイン」をテーマに、色々とお話しをさせていただいたことがある。

そのときに実際に、さまざまなスタイルのワインをテイスティングして、毎回、新たな発見や、新しい美味しさを発見する喜びを感じている。

冷やしたり、温めたり、缶に入っていたり、ストローで飲んだり。つまりは、飲み手に美味しい、楽しい、を提供できるかが大切。

缶ワインについても、今後さまざまな国の生産者が挑戦し始め、日本においても、国や品種、生産者を、いろいろな種類から選択できる日がくる。

あなたもぜひ一度、缶ワインを試してみてください。

ワインは、もっともっと自由な楽しみ方の可能性を秘めています。

ワインディレクター 田邉 公一

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田邉 公一 🍷 Wine director
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