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戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン
はじめに
2022年はこれまでに類を見ないほどワインに関する映画の公開ラッシュが続いていますが、長年ワイン業界にいる者として、とても嬉しく思っています。
そのうちの一つ、「戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン」が11月18日より公開。
すでにご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、こちらの映画は、古くから地中海の交易の中心のひとつであった中東の国レバノンを舞台にしたリアルなドキュメンタリー映画です。
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戦地で生まれた奇跡のレバノンワイン
レバノンは度重なる戦争に翻弄されてきた国ですが、非常に長い歴史を誇るワイン産地の一つでもあります。
本作には、世界的に高い評価を受けている「シャトー・ミュザール」の2代目で「レバノンワインの父」と評されているセルジュ・ホシャール氏をはじめ、戦争中もワインを造り続けてきた不屈のワインメーカーたちが登場。
平和をもたらすために内戦中にワイン造りを始めた修道院の神父や、虐殺が起こった故郷の村で村の再起のためにワイナリーを続ける夫婦など、極限の状況でもワインを造り続けてきた11のワイナリーのワインメーカーたちが人生哲学や幸福に生きる秘訣を語る。*公式ホームページより
上映後トークイベント
現地レバノンのワイナリーへ訪問経験のあるソムリエということでご指名をいただき、公開日の翌日、「アップリンク吉祥寺」で開催された上映後のトークイベントに登壇致しました。
2016年に現地訪問した時の経験談、今から10年前の2012年からレストランの料理とワインのペアリングアイテムとして、レバノンワインをゲストにサーヴし始めた時のお話等、20分間のインタビュー形式でお応えしました。
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トークイベントのナビゲーターは今回の映画の配給会社であるユナイテッドピープル代表の関根さん。
関根さんは昨年レバノンを訪問されたばかりということで、私が訪問した後からこれまでにかけてのリアルなお話も伺えて、私自身、とても学びの多い有意義な時間となりました。
それではここからは、当日のトーク内容を一部ご紹介させていただきます。
Q.まずは映画をご覧いただいた今の感想をお願いします。
2016年11月にレバノンのワイナリーを初訪問しました。日本のワイン関係者でレバノンに行かれた方は少ないと思います。
空港に着いた時、フランスやイタリア、ギリシャとは雰囲気が違うと思いました。街並みが美しく、その点は聞いていた通りでしたが雰囲気が違いました。1週間ほど滞在し、映画でこの国の歴史を振り返ることで、戦争やワインについて深く考えさせられました。
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Q.10年前からレバノンワインに注目していた理由は?
2012年に新しいレストランを表参道にオープンしたのですが、全部の料理にすべて違うタイプ、違う世界のワインを提供したかったんですね。例えば、ロゼ、白、泡などですが、全て供出するグラスの形状も変えました。
そんな時にソムリエの友人から「レバノンワインに興味ありますか?」と電話がかかってきたんです。
正直レバノンワインはこれまで飲んだことがありませんでした。ソムリエ教本にも載っていませんし、レバノンワインについて語ったこともなかった。ですから「えっ?」っと、最初は疑問視をしたんです。でも彼のことを信頼していたので、その後インポーターさんとお会いし、実際に試飲してみたんです。
ポリシーとして、常に平等にフラットな気持ちでワインをテイスティングするようにしています。それで良いと思ったのが、ドメーヌ・デ・トゥーレルとシャトー・クーリーでした。
レストランではゲストに新しい発見をもたらしたいと思っていたので紹介を開始したんです。例えばロゼは地中海系の料理に合わせました。当初からゲストの反応も良かったです。
Q.レバノンワインはどんな料理と合いますか?
地中海性気候ということで、ワインが生まれる場所にある食材を意識しています。
レバノンに訪問して現地で食事をした時に思ったのが、ギリシャ料理によく似ているということ。ヴィネガー、オリーブオイルをたくさん使いますし、肉料理よりも酸味のある野菜料理が多かった。
こういった視点からペアリングを考えていくと面白い。ギリシャ料理によくある食材を合わせていく、例えばトマト、ナス、ひき肉を使ったムサカなんかもいいでしょう。
あと、海が近いレバノンはサンソ―から造られた赤ワインもいい。軽やかなタイプのサンソ―は赤身の魚にもよく合うと思います。
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より詳しい内容は公式ホームページの下記リンクよりご覧いただけます。
映画も引き続き上映中です。ぜひ映画館でご覧ください。
ワインディレクター 田邉 公一
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最後までご覧いただき、心より感謝いたします🥂