Vol.4: Resistance and resignation | 抗いと諦念

“わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ”

宮沢賢治「永訣の朝」

Vol.4: Resistance and resignation | 抗いと諦念

「豚を育てる仕事をしています。」

自分のやっていることをわかりやすく伝えるために、そう言って自己紹介をすることがある。嘘は言っていない。でも実態はこうだ。

「豚が育つ『環境づくり』をしています。」

必要なことは環境を整えること。そうすれは豚は育っていく。しかしこの環境調整が難しい。そこでまず「私にできること」と「私にできないこと」を考えてみる。「私の仕事」と「自然の仕事」の整理だ。そして「私にできること」について計画を練り、実行する。

しかしどうだろう。絶えず揺れ動く環境条件によってそれらは裏切られていく。天候はその最たるものだ。農場で働いていると、自然というあまりに大きなものに、命運が握られてしまっているような気がして呆然としてしまうことがある。

当然だが、自然はわたし達の言うことを聞いてはくれない。その茫漠とした世界に住まう自分が、いかにちっぽけな存在であることを否応なく知る。都市で生きている時には感じにくい感覚のひとつだ。

農業はある意味でリベラルアーツだ。従事者に複雑な問いを投げかけ、複合的な視点や長い時間軸を要求してくる。だから自分の足場は常に揺らぐ。「ままならない」がデフォルトの世界観がここにはある。

かつてのわたしの人生の本筋は「抗うこと」だった。音楽は「抗うこと」を、経験は「和すること」を教えてくれた。しかし、自然に近いところに身を置き「わたしにできること」と「わたしにできないこと」のせめぎ合いの中で、新たな自然観が自ずと身についていく。

私の場合、それは「諦念」だった。

知らなかった。「諦念」がこんなにも清々しいものだとは。

K

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Vol.4: Resistance and resignation | 抗いと諦念

“I pray for all my life.”

Kenji Miyazawa 「The Last Farewell in the morning」

'I'm in the business of raising pigs.'

I sometimes introduce myself by saying that to make it easier to understand what I do. I am not lying. But the reality is this.

'I adjust the 'environment' in which pigs grow.'

What you need to do is to control the environment. Then the pigs will grow up. But this environmental adjustment is difficult. So, first, I think about what I can and can't do. This is a sorting out of 'my work' and 'nature's work'. Then, I plan what I can do and carry it out.

But what about the 'what I can do? They are betrayed by constantly fluctuating environmental conditions. The weather is a prime example. Working on a farm, it can be disheartening to feel our fate is in the hands of something so big as nature.

Of course, nature does not care about us. We inevitably realise how tiny we live in such a murky world. This is a sensation that is difficult to feel when living in cities.

Agriculture is, in a sense, a liberal art. It poses complex questions to those engaged in it and demands composite thinking and a long-term perspective. So one's footing is always shaky. There is a default worldview where things don't go as planned.

In the past, my life was all about 'resistance'. Music taught me to resist, and experience taught me to harmonise. But I finally acquired a new view of nature in the struggle between what I can and can't do by being close to nature.

In my case, it was surrender.

I didn't know. I didn't realise that 'resignation' was so refreshing.

K

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