赤いリボンの秘密 [ショートショート]
駅前の雑貨屋で見つけた赤いリボンのついた小箱。それは今朝、同僚の中村さんから手渡されたプレゼントと同じものだった。少しの違和感とともに、私はまた職場のデスクに戻った。小箱は机の端にそっと置いたまま、まだ開けていない。
中村さんは無口で、私も人見知りなので会話は必要最小限だった。だからこそ、このプレゼントの意図がわからない。職場の人たちとランチに行く彼の後ろ姿を見送るたび、私は疎外感を感じていた。それなのに、どうして私に?
「開けないの?」隣の席の山田さんが声をかけてきた。私は少し驚きながら、小さくうなずいた。リボンをゆっくりほどき、箱を開けると、中には小さなキャンドルが入っていた。甘い香りがふわりと漂う。
「これ、特別な意味があるのかな」山田さんがそう言うので、私は首をかしげた。メッセージカードが入っていたが、単に「お疲れ様です」とだけ書かれていた。深読みする必要はないのかもしれない。それでも、この小さな心遣いに気持ちが少し温かくなる。
帰り道、再び雑貨屋の前を通ると、同じ小箱が目に入った。「疲れていそうな人に贈る癒しの一品」と書かれたポップが目に留まる。なるほど、きっと彼も無理なくできる範囲で気を使ってくれたのだ。
家に帰り、キャンドルに火を灯した。部屋に広がる香りとともに、疎外感が少し薄れるのを感じた。こうした小さなつながりも悪くないのかもしれないと思った。