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宇宙の新作 [ショートショート]

リビングのテーブルに並べられた機材を見つめながら、私は息をついた。目の前には自作の装置が鎮座している。ディスク状のアンテナと、怪しげなLEDが輝くコントローラー。これは、宇宙人が送ってくるアニメを受信する実験用装置だった。

「本当にこんなので動くと思う?」友人の里奈が、半ば呆れた顔で訊ねてきた。彼女はいつも私の奇妙な実験に巻き込まれている。私は肩をすくめて答える。「わからない。でも、やってみないと。」

装置をオンにすると、低いモーター音が響き始めた。アンテナが微妙に動き、空のどこかを捉えようとしている。画面には砂嵐が広がり、何も見えない。「やっぱり無理だってば」と里奈が言う。その瞬間、画面がチカチカと光り、何かの影が浮かび上がった。

映像は鮮明ではなかったが、明らかに何かのアニメだった。青い肌を持つキャラクターが、無重力のような空間で踊っている。地球のどのスタジオでも作れない、不思議な動きだった。

「え、本当に?!」里奈が叫ぶ。私は言葉を失っていた。未知の言語でセリフが流れ、キャラクターたちは複雑なジェスチャーを交えて話している。「翻訳できるの?」と里奈が訊くが、私にはその余裕すらなかった。

さらに驚くべきことが起きた。画面のキャラクターがこちらを向き、何かを指差したように見えた。同時に、装置が異音を立てて停止する。画面は真っ暗になり、部屋には再び静寂が戻った。

「今の……見たよね?」里奈が低い声で確認する。私はうなずいた。何かが送られてきた。それがアニメなのか、メッセージなのかはわからない。でも一つだけ確かだった。実験は成功したのだ。

その夜、私は再び装置を調整しながら、新たな映像が来るのを待った。それが答えをもたらすか、それともさらなる謎を呼ぶのか、それだけが気がかりだった。

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