乾燥注意報の朝 [ショートショート]
朝の光が薄く部屋に差し込んでいた。彼はいつものように、無言でベッドから起き上がった。窓の外では、天気予報が淡々と伝えられている。今日は乾燥注意報が出ているらしい。特に驚くこともなく、彼はシャワー室へと向かった。
バスルームに入り、手に取ったのはボディソープだった。いつものものだ。キャップを開け、少し手のひらに出して泡立てる。泡は無色透明に近く、軽く香る。それを身体にまんべんなく伸ばしていく。湯の温度も、いつも通りだ。手の動きはリズムよく、無駄がない。全身を泡で覆い、シャワーを再び浴びた。ボディソープはすぐに流され、排水溝に消えていった。
シャワーを終えた後、彼はいつも通りの手順で身体を拭いた。鏡に映る自分の姿は特に変わらない。髪はまだ湿っているが、タオルで軽く拭いて放置する。そのままバスルームを出て、次はコンピューターの前に座った。デスクトップには昨日のまま開いていたウィンドウがそのまま残っている。何も変わらない。彼はその画面をしばらく見つめてから、キーボードをゆっくりと叩き始めた。
乾燥注意報について書かれたニュースが、画面の片隅に表示されていた。スクロールすることもなく、それをただ視界の隅に置いたまま、彼は作業を進める。画面の文字は次々と入力され、消され、また入力された。何かを作っているわけではない。ただ、指が動いている。それだけだった。
しばらくして、ふと手が止まった。時計を確認すると、もう昼が近い。外は相変わらず乾燥した空気に包まれているのだろうか。彼は一瞬そんなことを考えたが、すぐにまた画面へと目を戻した。
注意報が出ているからといって、特に何かが変わるわけでもなかった。彼は再び指を動かし、今日もいつも通りの時間を過ごすだけだった。