クリームソーダの午後 [ショートショート]
昼過ぎ、私は商店街の古びた喫茶店にいた。半分ほど飲みかけのクリームソーダがテーブルに置かれ、そのメロン色の液体は、じわじわと溶けていくアイスクリームと混ざり合い、濁った緑色をしていた。外では陽射しが強く、歩道を行き交う人々はみな軽装だ。空調の効いた店内は快適で、ここだけは季節感が薄い。
今の仕事に就いてから半年。最初は新しい環境に興奮していたけれど、最近はただの中だるみだ。次々と舞い込むタスクに追われ、終わったと思えばまた別の仕事がやってくる。今日も休みだというのに、何をする気力も湧かず、ただ時間を持て余している。何か始めなければと思いながら、何も浮かばない自分にうんざりしていた。
「失礼します。おかわりいかがですか?」と店員が声をかけてきた。私は少し驚いて顔を上げる。まだクリームソーダは半分残っている。「大丈夫です、まだありますから。」と答え、曖昧に笑った。店員は丁寧に頭を下げて去っていく。彼のTPOに合わせた無駄のない動作を見て、なんとなく自分の気持ちが引き締まった気がした。
再び、クリームソーダのグラスに視線を戻す。アイスクリームはほとんど溶け、底の方に甘い緑色の泡が残っている。ふと、こんなにダラダラしていても仕方ないと思い立ち、私はグラスを持ち上げ一気に飲み干した。冷たい甘さが喉を通り過ぎ、ほんの少しだけ気持ちが軽くなった気がする。
会計を済ませ、喫茶店を出ると、まだ日差しは強かった。しかし、外に出てみると新しい風が吹いているような気がした。商店街を抜け、次はどこへ行こうかと考えながら、私は足を進めた。
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