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罰ゲーム [ショートショート]
昼休み、私は教室の隅でペットボトルのお茶を飲んでいた。友人の絵里が近寄ってきて、にやりと笑う。
「じゃあ、罰ゲームね。机の中を見て。」
そう言われて、嫌な予感が胸をよぎる。机の中に手を入れると、見覚えのないノートが現れた。表紙には黒いマジックで不気味な絵が描かれている。人体解剖図のような、それでいて妙にユーモラスな落書きだ。
「何これ?」
「昨日、美術室で拾ったの。持って帰ったら中身がもっとすごかった。」
絵里はわざとらしく声をひそめて、私の耳元で囁いた。
ページを開くと、そこには鮮明な内臓や骨のイラストが続いていた。ただの落書きとは思えないほどの緻密さで、妙に惹きつけられる。何枚目かをめくった瞬間、青いインクで書かれたメモが目に留まった。
「ここに描かれる者は罰を受ける。」
一瞬、背筋が冷たくなった。
「冗談でしょ?」
「かもね。でも、試してみない?」
絵里はおかしそうに笑いながらペンを取り出し、私の名前を書き込もうとする。
「やめて!」
咄嗟にノートを奪い取る。絵里の表情が固まる。
その日の午後から、妙なことが起き始めた。階段を降りるときに足を滑らせたり、教科書が消えたり。些細なことだけど、それが積み重なっていく。
「……本当に罰なのかな。」
寝る前にノートを見つめながら、私はひとりごちた。そして、ノートを燃やすべきかどうか考える。
翌日、ノートは教室の机の上から消えていた。絵里も、それについて一切触れなかった。それが罰の終わりだったのか、それとも何かが始まったのか。私は今でも、答えを知らない。