合コンの観客 [ショートショート]
合コンの終盤、私は一人きりで店の隅に座っていた。目の前には、やたら華やかな飾りが施されたカクテルのグラス。合コンも、終わりに近づくとこうなる。みんなそれぞれ気になる相手と打ち解けていき、私の存在は背景に溶け込むように消えていく。店内を見渡すと、席を共にしていたはずの友人も、気づけば私から少し距離を置いた場所で楽しげに笑っていた。
私は、一度だけ自分の席に戻ってきた友人に笑顔で生返事を返す。「うん、楽しんでるよ」と。それ以上は何も言わず、再び一人の時間に戻った。二人組や三人組が店内を盛り上げている中で、私はどこか観客のような気分になっていた。合コンの場にはいるものの、そこに参加している意識は薄れていく。
ふと、隣の席の男性が話しかけてきた。「一人でいるの?疲れちゃった?」彼の言葉に、私は自然に笑みを作り、「そうですね、少し疲れました」と答えた。すると、彼もこちらに視線を合わせて頷きながら「たまにはゆっくりするのもいいよね」と言う。どこかで会ったことがあるような気がするが、誰だったか思い出せない。
その後、会話は途切れ、彼は再び誰かと談笑し始めた。私は、目の前にあるカクテルのグラスを指先で回しながら、店内を眺めた。にぎわう音、笑い声、時折聞こえる乾杯の音。そのすべてが、まるで自分に関係のない映画のワンシーンのように見えた。
「楽しんでる?」とまた別の友人が聞いてきた。「うん、まあね」と私は再び生返事を返した。
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