仕事で大切にしたいこと2つ
僕は現在、アメリカの医療機関の研究所に、博士研究員として所属しております。そこで、これまでの研究生活における経験に基づいて、「仕事で大切にしたいこと」を2つご紹介したいと思います。
「人との関わりを丁寧にすること・疑うこと」
僕が仕事において最も大切にしたいことは、「人との関わりを丁寧にすること」です。仕事である以上は、その過程で必ず他人と関わることになります。そこでお互いが心地よく仕事をできるようにしたい、ということです。すなわち、丁寧というのは、相手のことを考えて行動し、嫌な思いを極力させないふるまい、ということになります。
また僕がもう一つ大切にしたいことは、「疑うこと」です。この”疑う”には主に3種類があります。まず、自分の行動が正しいか省みること。起きている現象に対する自分の認識にズレがないか冷静になること。そして、もし相手の言っていることが間違いだったら、と考えること。それによって、ひとつひとつのふるまいが洗練されると思います。
わかりやすい例としては、メールにファイルを添付して送るときです。誰しもファイルを添付し忘れたメールを送ったり、送られたりした経験があると思いますが、送信ボタンを押す前に一度冷静にメールを見返せば添付の忘れに気づくはずです。そして、危うく忘れるところだった、という経験から、メールの本文や宛先を書く前に必ず添付を済ませるようにしておこう、という改善策に気づきます。
小さなことですが、このような試行の積み重ねによってこそ、仕事の質が上がると思っています。
この疑うという行為にはもちろん、気をつけるべきと思うことがあります。それは、相手がいること、つまり人を疑う時は、まず相手の意見を受け入れてから、ということです。そうでなければ、大切にしたいことの1つ目を守らないことになります。
「人的ネットワークが将来の成功のカギ」
人との関わり方は、自分の将来的な成功をも決めると考えています。「成功の普遍的法則(アルバート=ラズロ・バラバシ著)」に書かれているように、成功という現象には、ネットワークが重要な役割を果たします。これは単なる人脈ではなく、口コミや評判などに代表される、表面化しないネットワークが人の価値を決めるということだと考えています。ある研究者にポジションを与えるときは、その判断材料として過去の業績はもちろんとして、それ以上に将来性や周囲への影響力が期待できる、と思わせる人物であることが重要なはずです。これは目に見える業績だけでは測れない資質であり、その評価は日常的な人との関わりの中から育まれるものと思っています。
そして何より丁寧さは、お互いにベストな状態で仕事ができるようにしてくれます。誰しも、気持ち良く仕事ができればそれに勝るものはないでしょう。僕の大学院生の頃の学位論文は、多くの協力者とともに出した成果です。いろんな人と協力して大きな仕事をしていくという共同研究が重要です。自分自身が、協力したいと思わせる人物になる必要があると思います。
「疑いを省略すると大きな過ちの芽となる」
疑うことのメリットは仕事をする上で大きなものです。メールの例に続いてもう一つの例として、例えば集合時間。集合時間8時に対して、7時59分にその場にいればよいのか、15分前に着いておくべきなのかといった、人によってあいまいとなる定義について、お互いに確認ができていなければ約束事が成立しません(愛媛県に住んでいた頃、暗黙の了解で15分前にその場にいなければ遅刻とみなされることがあり焦りました)。いずれも疑いを省略した場合、大きな過ちにつながります。
この疑うという行為を意識的に行うため、僕は行動前に3秒から5秒考えるようにしています。
例えば、自分の発言は質問に対しての回答になっているだろうか。この操作で機械は壊れないだろうか。などを、わずか数秒だけでも考えるようにしています。それによって、議論がより的確となり、実験の精度も大幅に向上した経験があります。
慣れたころが危ない、とよく言われる理由はこれで、作業が無意識化してしまうことで考える癖が抜けるからなんです。仕事に慣れるということはとても大切ですが、慣れの落とし穴に落ちないためにも、考えて疑うことがベースになるように仕事に取り組みたいですね。