鍼灸病症的処置(2)めまい

おことわり
・分類は独自に利便性向上のために行なっているものであり東洋医学は病名治療を目的とするものではありません。
・記載内容は効果を保証するものではありません。
・筆者は経絡治療を主としており前提として本治法が正当に行われているものとします。

2)めまい(立ちくらみ)

〔水によるめまい〕、左季肋部に硬結があったときには《尺沢》を使う。水の場合はグラっとまわっても天井は一回転しない。瘀血の場合はグルグルまわる。〔瘀血によるめまい〕は《血海》を使わないと治らない。

(レッドフラッグ)

・血管迷走反射…副交感神経優位になり血圧低下、脈拍低下(失神、ふらふら、吐き気、発汗)横になると回復
・蝸牛障害…突発性難聴、ステロイド治療が通常の医師の選択
・1割が中枢性(危険なめまい)…小脳障害(物を見るほど眼振「注視眼振」小脳出血は頭痛を伴う頻度が多い疾患)
・5割がBPPV(良性発作性頭位めまい症)耳石が動いたため

(考察)
「なにかの病気の最中に眩暈するのは清陽が昇り難くなって上が虚したためになる」『景岳全書』

朱丹渓「痰なければ暈なし」これは不眠の原因にもなる。痰の原因は五志七情、七情の鬱。津液が火の熱により痰になる(痰は外邪では湿)。治療は(1)火を消す(2)気をめぐらす。つまり中焦整えることとなる。脾、胃、肝に着目する。胃の働きを旺盛にして小便を出るように仕向ける。三焦経を補い全体の水のバランスを取る。小腸経を補い水を運ぶ作用の正常化を試みる。

頭痛と同じくらいめまいには危険なものの可能性があることを知り、的確に除外して当該医療機関への受診をすすめる。

経絡治療を習ううえで尺沢の取穴だけが通常よりも曲沢ということは無意識に気血水でいう水の処置を負っていた意味が大きいのではないいかと本症状について気づく。また一般的にはめまいは多様な訴えがあるのは、水によるもの、瘀血によるものなど訴えは「めまい」であってもその成り立ちが全く違うために施術アプローチもさまざまなものとなり、その目的(水を流す、瘀血を取る、痰を除く等)をしっかり理解したまま臨むべきである。

臨床上、患者は不安であり、また姿勢に安定がない場合が多く、鍼灸師側も苦慮する点がある。ドーゼ(治療量)の過多に注意し的確に目的を達するよう心がける。めまいが主訴な患者は、その症状が軽減、消失したあとも(印象として)半年ほどは、まためまいになるのではないかと不安を訴えることが多く、症状が回復傾向にあってもそれらの予後を伝えておくべきである(例えば「カーテンが風で揺れるのを見て自分がめまいが起きたと驚かないように』等)

臨床では立ちくらみも浮遊感もすべて「めまい」という言葉が出てくるので、そのあたり鑑別を含め相手の表現していることをしっかりと理解すること。めまいであれば肝経、立ちくらみであれば腎経の影響が想定されるのが自然な流れか。病症としてめまいは五行的にいうと肝木の影響を大いに受けるので春、朝、風、怒りなど色体表をしっかり咀嚼しながら問診や説明に活用する。

施術を悩む前に相手の心理が不安定であることまで考えが及ばないと回復は難しい。逆にいうと来院してくれるめまい患者は治しようがある場合が多いので着実に病態把握と改善に努める。

めまいは肩こりをはじめ頚肩背部のコリが影響している場合が多いけれど、それを直接、目的とするのは臨床上簡単ではない。先述した『景岳全書』の「清陽が昇り難くなって上が虚したため」を助長してしまい症状の悪化を招きやすい。その点を考慮して奇経、経筋、子午など補助的なアプローチを候補として処置することも有用。

ちなみに患者さんはメニエルというカタカナの言葉だけ知っているので、何かとメニエル、メニエルと騒ぎ立てる人が多い印象。実際にはメニエル症候群であり、メニエル病ではないことがほとんど。このあたり病名にたじろがず、冷静に聴取して必要があれば説明し、東洋医学的な見地からアプローチすることを忘れないようにしたい。









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