鍼灸病症的処置(4)頭痛

おことわり
・分類は独自に利便性向上のために行なっているものであり東洋医学は病名治療を目的とするものではありません。
・記載内容は効果を保証するものではありません。
・筆者は経絡治療を主としており前提として本治法が正当に行われているものとします。

鍼灸病症的処置(4)頭痛

〔頭全体が痛い〕ときは《百会》と《頭臨泣》。頭全体が痛い人の下腹部で中極・関元が凹んでいる。硬結がある。女性に多いが十分水分が摂れないため。《頭維》は胃経と胆経の交会穴。〔偏頭痛〕の治療には必須。〔脳軟化症〕で手首の動きが鈍い人は《遍歴》を使って、親指、人差し指の動きを良くする。〔脳溢血〕や〔脳貧血〕には《風池》《天柱》。すべての頭の疾患によい。

(レッドフラッグ)

頭痛においては最初に2つの質問をする「これまでも同じような頭痛を何度も経験しているか?」「程度は違っても性質は同じか?」両方ともYesであれば片頭痛か緊張型頭痛である。

以下の5つのうち4つを満たす場合、片頭痛に該当すると考えて良い。(1)拍動性(2)持続時間が4~72時間(3)片側のみ(4)吐き気・嘔吐がある(5)日常生活に支障がでる。

片頭痛は女性に多く(男性の4倍)光や音に敏感となり生理や天気で悪化、発作的であり週末やストレスから解放されると発症しやすい。

以下の観点で緊張型頭痛が疑われる
(1)頭頸部の両側性(2)非拍動性(3)日常生活を妨げない(4)日常動作で悪化しない

緊張型頭痛は頭痛の原因の70~80%とされ日本では成人の22%(約2200万人)が抱えている疾患である。(区別しにくいものに混合型頭痛もある)

頭痛では必ず次の3点を確認する。「最悪か」「増悪か」「突発か」これはクモ膜下出血の疑いを問うている。頭痛に意識障害と血圧低下、発熱が加われば髄膜炎を鑑別にあげる。睡眠時、または覚醒時の頭痛は脳腫瘍の可能性も考える。

考察

頭痛は重篤なものが隠れている可能性が高いために経過も慎重にみていく必要がある。

「頭痛は邪気が陽分にあることを示し、身痛は邪気が諸経にあることを示す」「前後左右どこに痛みがあるかによって陰陽を弁別し、熱の有無によって内外を弁別する。単に表邪のみによるものはこれを散ずれば癒える」『景岳全書』

ここでは標治的な資料として上記を列記しているために頭を意識するが、当初より病名治療ではなく、病名は症候のひとつに過ぎないラベルであるという認識から、東洋医学的な病理観において何がどうなっているか?というアプローチをしなければならない。

状態を言葉だけで分類し配穴まで決めてしまうのは施術の運用面では楽かもしれないが現状の患者を置き去りにする可能性があることを常に意識しなければならない。

臨床では頭痛を治す治さないという点よりも重篤なものが隠れていないか?という視点で診ていくほうが間違いがない。

余談として書くが頭痛は本治法だけでも比較的簡単に消失して再発しなくなる。それは肩こりやめまい、眼精疲労や中耳炎のように病名ではなく病因が似ているものとも関係する。逆にいうと病名で見渡すと訴え以外は見えなくなり後手後手な対処に追われる。

事実、頭痛・肩こり・耳鳴り・不眠など比較的同時に訴えるものも多くどれを治すか?ではなく、(根本的な原因を改善するために)いずれも同じ機会に治すというのが本来の東洋医学的価値観であろう。

脈が診れるなら肝、胆、胃、場合によっては大腸の実を整えれば(施術後の改善が確認できれば)頭痛はそれほど難しいものではない。その根底にある息苦しさ、冷え、夜ふかし、うたた寝などさらなる根本的な原因まで改善でき得るので期待以上の成果を示すことができる。そこまですれば宣伝などしなくてもしっかり東洋医学としての鍼灸を評価してもらえるものである。

頭痛は肩こりや腰痛よりも来院動機が高い印象。そして解消し再発が無くなれば一番信頼を得やすいものと実感。レッドフラッグを意識し、医療機関の受療勧奨も頭の片隅に置きつつ対処していけば鍼灸の良さを多くの人に理解していただけるものであろう。

ちなみに開業当初であれば頭痛と坐骨神経痛をしっかり対応できれば、以後の経営などそれほど意識しなくても鍼灸に関する理解は着実に広まるものと経験をもとに感想を持っている。ただし、頭痛は頭痛以外のものも同時に対処しなければならないし、坐骨神経痛も神経痛だけではなく隠れた(当人の自覚のない)冷えまで対処できれば、と考える。まずは病名だけに目を奪われない訓練が必要だ。



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