鍼灸病症的処置(1)発熱発汗

おことわり
・分類は独自に利便性向上のために行なっているものであり東洋医学は病名治療を目的とするものではありません。
・記載内容は効果を保証するものではありません。
・筆者は経絡治療を主としており前提として本治法が正当に行われているものとします。

)発熱・発汗 (寝汗・乳腺炎)

〔風邪の熱〕は《大椎》で取る。熱がひかなかったら取り方が悪い。〔高熱〕〔微熱〕に関わらず、微熱が取れないという人がいる。風邪をひいた後、鞭打ちの後の微熱。これらは全部《孔最》で取れる。まず孔最に補鍼。『圧痛のある方に、圧痛のない側の倍やる』回旋術の補鍼をやる。次に《合谷》に回旋術の補鍼を5呼吸。胃経の《陥谷》を使う。そして三焦経の《関衝》に瀉法。それだけ覚えていたら高熱でも微熱でも取れる。〔乳腺炎〕で乳が腫れて熱が取れないときも必ず《魚際》。乳腺炎の熱というのは『胃家実』という胃の実証で《陥谷》も取るけれど魚際の補法を十分やれば熱がさがる。乳腺炎には魚際に圧痛が出ているのが特徴。〔熱の高い扁桃腺〕のときには必ず《少商》と《合谷》と《翳風》、これらをあわせて使う。汗が出ないときは《風門》を先に補って、合谷を3分くらい回旋術で補う。その次に糸状灸で3壮くらい《大椎》を補う。《陥谷》を3分くらい回旋術で補い、最後に《商陽》を瀉法する。非常に熱が高い風邪ひき、扁桃腺などの痛み熱を取ることができる。合谷は発汗させて真熱ではなく、表熱を取るツボ。表熱は体温計に出てくる熱。患者さんが微熱と言ってくるのは体温計に出る熱のこと。体温計にのらない真熱はまた別にとる。合谷ではない。〔寝汗〕をかく人は《陰郄》に必ず圧痛があって、揉んでやると気持ちがいいという。朝から晩まで〔微熱〕があるのは《労宮》を使う。午後に微熱がでるのは《陰郄》を使う。労宮や陰郄を補ったら、三焦経の瀉法をやる。

(考察)
発熱といったらまっさきに思い浮かぶのが大椎。これはこれで間違いないと思っており、他に魚際の瀉法を候補に考える。小児であれば金門の瀉法、水かきの瀉法(指の又に瀉的散鍼)を行うが出典は失念。

発熱は教科書どおりに考えれば禁忌にあたるが現実的にはよくある話。鑑別を間違いないように。鍼灸では脈が沈んでいれば厄介なものと判断。過去に発熱の小児の脈が沈んでおり、医院へ行くよう勧めた。結果水疱瘡の初期であり対応が早く感謝されたことも。

発熱の意味を考え熱を下げることが目的ではなく他の症状や背景を知ることも大切。人迎気口脈診によれば(私でさえ)内因か外因か判別ができるので有用かと。

『景岳全書』によれば「寒によって傷られる場合はおおむね熱を伴う病気となる」とあり、寒邪が経にあるため頭や身体が疼痛し、邪気が皮毛を閉ざすため拘急して発熱すると考える。このことから寒邪にあたったか否かという問診が必須であり、初期(経にある段階)であれば散鍼にて邪気を処置することが有効だといえる。またこの理屈で小児では水かきの瀉法も有効なのであろう。

ほかに乳腺炎では天宗に多壮灸など聞いたことがある。筆者の施術症例は少ないが効果はある。

発熱に関しては陽明経を疑うことがあり、発汗を促すことができればそれほど難しいものとは思わないが、功を焦らないのは本症例に限った話ではない。

発熱よりも熱感のほうがコントロールが難しいものであり、なかでも寝汗などは虚労の証左ともなるので、他の症状、相手の状態など慎重に全体像を検討する。

また発熱といえば足の冷えを疑うものであり看護法(冷やさない・あたためる等)としてもその指示は欠かせない。頭を冷やすのは解熱に関係なく心地よいからやるわけで無理に冷やすものではない。施術後の経過としては唇の乾燥に注意を払い(特に小児の施術後の経過は親に説明する)脱水にならないよう配慮を促す。

余談だが、今では珍しいがかつては水銀の体温計が存在した。ちょうど37度の数字が赤字となっているものだ。それではなぜこの数字が赤くなっているのかというトピックを調べてみるのも面白いものである。この話題で発熱に対する興味を持ってもらうことがある。




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