知ってる!環境のこと(第45話)
⁂データや内容は、当時のものとなりますので、ご理解ください。
皆さんこんにちは。いかがお過ごしでしょう。今回は、有機農業について考えて見ましょう。
有機農業とは
家畜のふん尿を発酵させて作ったたい肥で田や畑の土壌養分を補給し、栽培された作物の一部を家畜に食べさせ養分を循環させるというような、合成化学物質を使用せず、なるべく自然の物質循環に合わせる形で、作物や家畜を育てる農業のことですが、その定義は、はっきりせず、細かい部分は、団体や国によって異なります。
1972年に組織された国際有機農業運動連盟(IFOAM:International Federation of Organic Agriculture Movements)[1]は、有機農業を定義する上で、4つの原理を掲げています。
1. 健康の原理・・・土、植物、動物、人そして地球の健康を個別に別けては考えないものと認識し、これを維持し、助長すべきである。
2. 生態的原理・・・生態系とその循環に基づくものであり、それらと共に働き、学びあい、それらの維持を助けるものであるべきである。
3. 公正の原理・・・共有環境と生存の機会に関して、公正さを確かなものとする相互関係を構築すべきである。
4. 配慮の原理・・・現世代と次世代の健康、幸福、環境を守るため、予防的且つ責任ある方法で管理されるべきである。
有機農業は、生産・加工・流通・消費のどの過程においても4つの原理を維持・促進し、各地域の歴史・社会・文化・環境的な相違にも適応する多様なものであるとうたっています。勿論まだ不安定要素の高い遺伝子組み換え技術の使用も否定しています。
有機農業の国際基準
地力の低下や環境破壊など、大量の農薬や化学肥料に依存した近代農業の弊害により、有機農業が脚光を浴びるようになると、農産物の国境を越えた流通を踏まえ、国際的な基準が必要となります。現在主に2つの国際基準があります。
有機農業と加工のIFOAM基礎基準
1982年、IFOAMが作成した基礎基準で、2年一度の総会で改定を重ねてきています。
この基礎基準は、各認証団体の基準や認証プログラムの整合性を審査・認定するIFOAM国際認定プログラム(IAP:IFOAM International Accreditation Program)の基にもなっていますが、実際の審査・認証は、IFOAMから独立した国際有機認定サービス(IOAS :International Organic Accreditation Service)が行っており、IFOAM加盟機関の認証=IFOAM認定農産物ではありません。タイでは2007年現在5機関がIFOAMに加盟していますが、IOASの審査をパスしたのは、タイ有機農業認証事務局[2](ACT:Organic Agriculture Certification Thailand)たけです。因みに、2007年7月現在、51の団体や個人がACTの認証をパスしており、チェンマイからは5つの認証例があります。
有機生産食品の生産、加工、 表示および販売に関するガイドライン
1962年消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、FAO(国際食糧農業機関)およびWHO(世界保健機関)により設置された国際食品規格の作成等をおこなう国際機関、コーデックス委員会が制定した基準ですが、IFOAMの基準を参考につくられたといわれています。
有機農業の長所
美味しい・・・有機農業では、土壌が低養分となり、土は空気をたくさん含んで乾き気味になります。このため、食物がストレスを受け生き残るための防衛反応により、その味が凝縮されて美味しくなるというものが一般的ですが、幾つかの学術論文があるものの、はっきり断定は出来ないようです。
環境保全型・・・資源の循環利用や化学物質の使用を軽減できます。
食の安心・・・生産者が厳しい規格基準に基づいて生産した農産物のみが、有機農産物として認められる検査認証制度などを通して、生産者は食品に対する消費者の信頼=安心を獲得できること。消費者は、より安心できる食品を手にすることが出来きます。
有機農業の問題点
必ずしも安全とはいえない
『有機』という言葉で、安全な食品をイメージする人々が多い中、『有機』という表示がブランド化して悪用されたり、実は有機農産物の中にも天然発がん物質が含まれることや大気や土壌からダイオキシンなどの有害物質を吸収している可能性かあること等のリスクが抜け落ちてしまうことです。有機農産物の食品としての安全性が絶対ではないことを覚えておかなくてはいけません。
タイ政府の統計では、現在、有機農業の作付面積は、14万900ライ(1ライは1600㎡)で、全体の0.103%に過ぎませんが、政府は今年1年で20万ライまで拡大させることを目標に掲げています。また、タイの有機農業製品の市場も年々拡大しており、2006年は、9億2千万バーツ、昨年は10億バーツに上っています。今後ますます成長が見込まれる分野で、私たちもより手軽に有機農産物を手に入れることができるようになるわけですが、『有機』という言葉だけが独り歩きしないよう消費者の私たちももっと勉強しなければいけないのかもしれません。
[1]有機農業に関する世界最大の国際的民間組織。本部はドイツ、2007年年現在、世界 111ヶ国、750の団体が加盟。
[2] 1995年に設立。民間組織でありながら、農業局の有機農産物研究所と共にタイの主な認証機関のひとつ。
CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌
(毎月2回10・25日発行) 2008年2月25日第 117号掲載