今回は「DX経営戦略」(2020年)という本を読んでみました。
著者はハーバードビジネススクール客員研究員でボストンカレッジ教授のジェラルド・C・ケイン氏ほかの皆さんです。
「MITスローン・マネジメント・レビュー」誌とデロイト社が提携して実施した、4年間にわたる16000人以上を対象にした調査結果に基づいて書かれたものです。
本書は「デジタル成熟度」にフォーカスしたデジタル組織論になりますが、
「デジタルディスラプション」といった現象や「デジタルトランスフォーメーション」といった取り組みではなく、組織の「デジタル成熟度」にフォーカスを移すことを薦めています。
「成熟」という概念が、競争が激化するデジタル環境にて適応しようとする組織に対して、適用しやすいものであるとしています。
本書では「デジタル成熟度」の測定方法についても示しています。
デジタルDNAの23の特質に対して、4段階の成熟度を社員に評価してもらうというものです。
全社員を対象に実施することで、経営陣が気が付かない、デジタル成熟度を実現するための要因と障害を特定できるとしています。
それに加え、経営陣にインタビューすることで、包括的で充実したデジタル成熟度の全体像が生み出されるとのことです。
デジタル成熟度を高めていく上では、デジタルDNAの特質全てを一度に取り組むのではなく、短期的にもっとも影響を与える少数の特性にフォーカスし、小さな実験的介入を考案し、実行してくべきとのことです。
本書の構成は以下のようになっています。
本書では、アンケート調査結果に基づいて、大変論理的に議論が展開されています。内容としても正しいと感じられるものです。
「デジタルに成熟している組織に共通する特徴を明確にしよう」という著者の目標も達成されているのでしょう。
ただ、逆に、個人的には特段新しいものを見つけることができず、読書としても、今回は、あまり楽しめなかったように思いました。
本書のもとになった調査の報告書がネットに公開されていますので、最後にご紹介させていただきます。
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/fr/Documents/strategy/dup_strategy-not-technology-drives-digital-transformation.pdf
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/pe/Documents/strategy/Aligning%20Digital%20Future.pdf
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/za/Documents/technology/za_DUP_Achieving-digital-maturity.pdf
https://www2.deloitte.com/us/en/insights/focus/digital-maturity/coming-of-age-digitally-learning-leadership-legacy.html