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「心が動いたものを素直に」琴線に触れたコト・モノを、素直に表現してみたい。ガラス作家・藤井友梨香さんの創作・暮らしとの向き合い方#ゆたかさってなんだろう

 暮らし方の豊かさや美しさが、作品からも十分に読み取れる女性に出会った。

 その方の名前は、藤井友梨香さん(以下、友梨香さん)。彼女は、ガラス作家。「ガラス胎有線七宝」と呼ばれる技法の第一人者だ。

 初めてガラスに魅せられたのは大学時代にガラス工房を見学したとき。
1400度の溶けたガラス。それは炎のような色でパワーに溢れていた。まるで魔法のようだと感動し、この道を築くきっかけとなった。

 一般的に、七宝焼は銅の下地に銀線や金線で模様を焼き付けるという手法をとっている。
だが、友梨香さん常識にとらわれず、下地を銅からガラスに変えてつくることもできるのではないか?と考え、試作を重ね、ようやく技法を完成させた。

 2020年春を経た作品からは、春の朗らかさ、自然の伸びやかな成長を感じる。

懸命さゆえの苦しみ

 「七宝焼の下地をガラスに変えようと試みてから、3年はできませんでした。」と友梨香さんは語る。
そもそも、ガラスと異質な金線や銀線をくっつけるのは非常に難しく、割れたり、変色したりとなかなか上手くいかない日々が続いたそう。
それでも友梨香さんは、ガラスと七宝焼の魅力にとりつかれたように、焼き付ける温度や線の薄さなどの実験を繰り返した。

 はじめて作品として納得する形となったのは、2018年のこと。作品を発表して以降、個展やオーダーが決まるなど、ガラス作家として順風満帆な生活が始まった。

 ……ように見えたのだが、もともと、生粋の職人気質の友梨香さん。制作に没頭し始めると、仕事以外の暮らしの中の余白が、なくなっていく危うさも感じ始めていた。寝ても覚めてもガラスづくりのことを考えるように。頭が冴えて落ち着いて眠ることができなくなっていった。


新たな暮らしへ

 このままではいけない、と考えた友梨香さんが始めたのは、「自分の内側からの欲求に従ってみる」ことだった。            

 まずは、ガラス一色だった今までの暮らしを変えた。

 SNSを始め、人と会う機会も多くした。すると、ガラス一筋でいるために、意識的に閉ざしていたという世界は、大きく変わっていったという。

 「普段の生活で出会えるものが変わりました」と友梨香さん。自分の内側にあった本当は好きだったもの。カメラ、文章、旅――。少しずつ、関わる世界を増やしていくと、ガラスづくり以外にも心がときめくものはたくさんあった。

 「小さなことでもいいんです。たとえば、散歩の際にいつもの道ではなく、気持ちやすそうと感じる道を選ぼうと決めるだけで、気分は上向きます」。

 心の赴くままに歩む。その先で出会った新しい幸せを吸収しようという姿勢こそが、真の豊かさなのではないか――?インタビューを聞きながら、筆者は、今の友梨香さんが、満ち足りた笑顔でいる理由を突き止めた気がした。

 この心境の変化は作品づくりにも現れる。「暮らし方を変えてからは、作品ののびやかさが全然違う気がしています」。最近の作品であるこのぐい呑みからは、生き生きとした草花が描かれ、しなやかさが感じられる。

 

 2020年9月4日(水)〜13日(日)には暮らしのあり方を変えてからの初めての個展が開催されるという。心と体をゆるやかに保ちながら、制作を続ける友梨香さん。穏やかな微笑みがそこにはあった。

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こふく
とてもよろこびます!!