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2006年 日本数学オリンピック本選 第3問 解答例

実数に対して定義され、実数値をとる関数$${f}$$であって、任意の実数$${x, y}$$に対して
$${f(x)^2 + 2yf(x) + f(y) = f(y+f(x))}$$
をみたすものをすべて求めよ。

公益財団法人 数学オリンピック財団HP 第16回(2006年)JMO本選の問題

考え方:

関数方程式に慣れない方はまずは以下の問題に挑戦することをおすすめします。
2004年 日本数学オリンピック本選 第2問 解答例|光捷

この問題はさらに工夫が必要です。

式を眺めていると、$${f(x) = x^2}$$が解になることはわかると思います。$${y = 0}$$を代入してみると、元の式は
$${f(f(x)) =  f(x)^2 + f(0)}$$となります。
この式は、$${f(x)}$$を$${t}$$とおくと$${f(t) = t^2 + f(0)}$$となり、
答えが求まっているように思えます。
しかし、$${t = f(x)}$$が任意の実数を取れません。
例えば最初に見つけた$${f(x) = x^2}$$だとすると、
$${t}$$は負の値を取ることができないので十分ではありません。
さらに、元の式に$${y=f(x)}$$を代入してみると$${f(2f(x)) = 4f(x)^2 + f(0)}$$が、
$${y=-f(x)}$$を代入すると、$${f(-f(x)) = f(x)^2 + f(0)}$$が導かれます。
いずれも$${f(t) = t^2 + f(0)}$$の形をしているのですが、
$${t}$$の値が限られています。

元の式に注目すると、1つだけ$${y}$$が$${f}$$の外に出ています。
これはすべての実数を取ることができますから、
これを活用できないかと考えます。
$${x}$$を固定すると、$${f(x)}$$が$${0}$$でなければ
$${f(x)^2 + 2y f(x)}$$は$${y}$$を動かすことで任意の実数を取ることができます。
そこで、これを$${t}$$と置いてみましょう。
元の式に$${y = \frac{t - f(x)^2}{2f(x)}}$$を代入すればOKです。
すると、$${t = f\left(\frac{t+f(x)^2}{2f(x)}\right) - f\left(\frac{t-f(x)^2}{2f(x)}\right)}$$と書けることがわかります。
つまり、2つの$${f(x)}$$の差は、すべての実数を取りうることがわかります。
ここまでわかれば、以下の解答にたどり着けるはずです。

解答例:

$${f(x) = 0}$$は条件をみたす。
以下、ある実数$${x_0}$$に対して$${f(x_0) \neq 0}$$とする。

元の式に$${y = -f(x)}$$を代入して、
$${f(-f(x)) = f(x)^2 + f(0)}$$
をえる。また、元の式の$${y}$$を$${-f(y)}$$として、

$$
\begin{align*}
f(f(x) - f(y)) & = f(x)^2+2f(x)f(y) +f(-f(y)) \\
& = f(x)^2 - 2f(x)f(y) +f(y)^2 + f(0)\\
& = (f(x) - f(y))^2 + f(0) \tag{1}
\end{align*}
$$

となる。
元の式に$${x=x_0, y = \frac{t - f(x_0)^2}{2f(x_0)}}$$を代入すると、

$$
\begin{align*}
f(x_0)^2 + t- f(x_0)^2 + f\left(\frac{t-f(x_0)^2}{2f(x_0)}\right) &= f\left(\frac{t+f(x_0)^2}{2f(x_0)}\right) \\
\Leftrightarrow t = f\left(\frac{t+f(x_0)^2}{2f(x_0)}\right) - f\left(\frac{t-f(x_0)^2}{2f(x_0)}\right)
\end{align*}
$$

となる。よって、任意の実数$${t}$$に対して、
$${x = \frac{t+f(x_0)^2}{2f(x_0)}, y=\frac{t-f(x_0)^2}{2f(x_0)}}$$とすると、$${f(x) - f(y) = t}$$となるため、
(1)式は $${f(t) = t^2 + f(0)}$$となる。

変数$${t}$$を$${x}$$に書き換え、$${f(0) = c}$$とおくと、
$${f(x) = x^2 + c}$$となる。
これは$${c}$$によらず条件式を満たす。

よって答え、$${f(x) = 0, f(x) = x^2 + c     (cは任意の実数)}$$

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