2008年 日本数学オリンピック本選 第4問 解答例
考え方:
関数方程式に慣れない方はまずは以下の問題に挑戦することをおすすめします。
2004年 日本数学オリンピック本選 第2問 解答例|光捷
この問題も処理として難しい発想が必要な部分はなく、
式がシンプルになるように色々代入すれば解が絞れていきます。
ただし、いろいろ試してみるとわかる通り、
変数や関数の値が$${0}$$になる場合に例外が発生するため、
丁寧な場合分けが必要となり、混乱します。
使える条件も多くなり、迷いやすいです。
発想力よりもミスのない思考が求められる問題となっています。
最終的な答えも、丁寧な論証をしていない人をひっかける落とし穴があります。
解答例:
条件式に$${y=0}$$を代入して、
$${f(x)f(f(x)) = xf(x)}$$
を得る。よって$${f(x) \neq 0}$$ならば$${f(f(x)) = x}$$となる。
特に、さらに$${x=0}$$を代入すると$${f(0) = 0 または f(f(0))=0}$$を得る。
元の式で$${x=0}$$とすると、
$${f(y)f(f(0) - y) = -yf(y) (1)}$$
であり、元の式で$${x=f(0)}$$とし、$${y}$$を$${-y}$$とおくと、
$${f(f(0)-y)f(-y) = f(0)f(f(0)) +yf(-y) = yf(-y)}$$
となる。この二式の左辺は一致するので、
$${-yf(y) = yf(-y)}$$
を得る。
よって、$${x\neq 0}$$となる任意の実数$${x}$$に対して$${f(-x) = -f(x)}$$となる。
さて、(1)式より$${f(x) \neq 0}$$となる実数$${x}$$に対しては
$${f(f(0) -x) = -x (2)}$$
となるが、さらに$${x \neq 0}$$である場合、
(2)式から$${f(f(0) - x) \neq 0}$$であるから
$${f(f(f(0) - x))= f(0) - x}$$となる。
さらにこれと(2)式を合わせ、
$${f(0) - x = f(-x) = -f(x)}$$
を得る。つまり、$${x\neq0}$$であれば、$${f(x) = 0 または x - f(0)}$$となる。
(i) $${x\neq 0}$$であるすべての実数$${x}$$に対して$${f(x) = 0}$$のとき、
$${f(0) = c}$$とおくと、$${c}$$の値に拠らず$${x}$$と$${f(x)}$$の少なくとも一方は$${0}$$になるので、
元の条件式の右辺は$${0}$$になる。
左辺も、$${x+y}$$と$${f(x)-y}$$が同時に$${0}$$になるには
$${x+f(x) = 0}$$が必要である。
$${c\neq 0}$$ではこれはありえない。
また、$${c=0}$$ならば$${f(x)}$$は常に$${0}$$なので左辺も$${0}$$になる。
いずれにしても、元の条件式は成立するため、これは解である。
(ii)ある$${0}$$でない実数$${y_0}$$に対して$${f(y_0) = y_0 - f(0) \neq 0}$$のとき、
$${f(f(y_0))= f(y_0 - f(0)) = y_0}$$となるが、 これは$${0}$$でないため
$${f(y_0 - f(0)) = y_0 - f(0) - f(0)}$$となる。
よって$${f(0) = 0, f(y_0) = y_0}$$を得る。
さらにある$${0}$$でない実数$${x_0}$$に対して$${f(x_0) = 0}$$となるとする。
元の式に$${x = x_0, y=y_0}$$を代入すると、
$${f(x_0 + y_0)f(-y_0) = -y_0f(y_0)}$$
であり、かつ$${y_0 \neq 0}$$より$${f(-y_0) = -f(y_0) \neq 0}$$であることから
$${f(x_0 + y_0 ) = y_0}$$となるが、これは矛盾である。
よって、すべての実数$${x}$$について$${f(x) = x}$$となる。
これは元の式を満たす。
以上より、答えは$${f(x) = x}$$または
$$
f(x) = \begin{cases} 0 (x\neq 0)\\ c (x=0のとき。 cは任意の実数)\end{cases}
$$
である。
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