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2004年 日本数学オリンピック本選 第2問 解答例

$${f(x)}$$は実数に対して定義された実数値をとる関数であって、すべての実数$${x, y}$$に対して
$${f(xf(x)+f(y)) = (f(x))^2 +y}$$
が成立する。$${f(x)}$$としてありうるものをすべて求めよ。

公益財団法人 数学オリンピック財団HP 第14回(2004年)JMO本選の問題

考え方:

関数方程式の基本問題といえます。
最近の数学オリンピックの関数方程式の問題では、
この問題で使うような考え方はもはや前提として考えられている印象があります。
(さらに一工夫がないと解けなくなっています。)
高校数学では馴染みが薄いため、
慣れているかどうかでかなり差がついてしまうと思います。

基本的には、$${x, y}$$に様々な値や式を代入して必要条件を整理していくことしかできません。
代入するときの基本は、項が消えて式が簡潔になるもの($${x=0}$$など)や、
導いた関係式を別の部分で活用するようなもの(この問題での$${x=f(x)}$$など)です。

関数方程式の問題は、答えの候補自体はすぐ見つけられそうなものばかりです。
それをヒントにしつつ、でも余計な思い込みは排除して、
ぜひそれらの答え以外に解があるかを処理しきってください。

解答例:

条件式に$${x =0}$$を代入して

$$
f(f(y)) = y + (f(0))^2\tag{1}
$$

を得る。さらに$${y=0}$$を代入すると、

$$
f(f(0)) = (f(0))^2 \tag{2}
$$

を得る。(1)の右辺は任意の実数を取りうるので、$${f}$$は全射である。
よって$${f(\alpha) = 0}$$となる実数$${\alpha}$$が存在する。
元の条件式に$${x=\alpha}$$を代入すると、

$$
f(f(y)) = y\tag{3}
$$

を得る。元の式の$${x}$$として$${f(x)}$$を代入すると、

$$
f(xf(x)+ f(y)) = (f(f(x)))^2 + y = x^2 +y \tag{4}
$$

となるが、これと元の式から

$$
\begin{align*}
(f(x))^2 &= x^2 \\
\Leftrightarrow f(x) &= \pm x \tag{5}
\end{align*}
$$

を得る。

ある$${x_0, y_0 \neq 0}$$について$${f(x_0) = x_0, f(y_0) = -y_0}$$のとき、
元の式で$${x=x_0, y=y_0}$$とすると、

$$
\begin{align*}
f(x_0^2 - y_0) &= x_0^2 + y_0 \\
\Rightarrow \pm(x_0^2 - y_0) &= x_0^2 + y_0 \\
\Rightarrow  x_0 =0    ま&たは   y_0=0
\end{align*}
$$

となり矛盾。
よって、ある実数$${x_0}$$について$${f(x_0)=x_0}$$のとき、
すべての実数$${x}$$に対して$${f(x) = x}$$であり、
$${f(x_0)=-x_0}$$のとき、
すべての実数$${x}$$に対して$${f(x) = -x}$$となる。
これらは条件式を満たす。

以上より、$${f(x) = x または  f(x) = -x}$$

追記:

解答の(5)以下にあるように、$${f(x) = \pm x}$$が導かれるだけで満足してはいけません。
$${f(x) =\pm x}$$と式だけ書いても、以下の2通りの解釈ができます。
①任意の$${x}$$について、$${f(x) =x}$$か$${f(x) = -x}$$のどちらかとなる。
②すべての$${x}$$について$${f(x) =x}$$となるか、すべての$${x}$$について$${f(x) =-x}$$となる。
(5)の段階では、$${f(x)}$$は例えば$${f(1) =1  かつ f(2) =-2}$$となるかもしれないということです。

関数方程式の問題では様々な必要条件を導出して条件を絞っていくことになりますが、
慣れないと文字においた変数の定義域がわかりにくくなります。
特に、任意の実数を取る変数は$${x, y, t}$$など、
ある特定の条件を満たす変数は$${\alpha, \beta}$$など、
固定した値は$${x_0, x_1}$$などとして、
文字を使い分けて見やすくするとミスなく処理できると思います。

なお、上記解答例では$${\alpha}$$を定義しましたが、
これは全射の議論をしなくても$${\alpha = -(f(0))^2}$$という定数になるのは明らかでした。
いちいち$${\alpha}$$とおくかは好みによると思います。
問題によっては、$${f(\alpha) = 0}$$となる$${\alpha}$$の存在は示せても、
それが1つの数にならない場合も考えられます。

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