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「株式会社サカマル」のご紹介

こんにちは。坂本です。

私は2023年7月20日に「株式会社サカマル」という会社を設立し、代表取締役を務めております。
本記事では、どういった会社か、どのような取り組みをしているか、皆さんにお伝え致します。



何をする会社ですか?


株式会社サカマルは、バイオ、ライフサイエンス研究の全てを自動化することを目指す会社です。
アカデミアに普及できるように、低価格で販売できる自動研究機器の開発を目指しています。

研究に不可欠な実験では、研究者が大量の反復作業を手作業でこなすことが度々発生します。
たとえ反復作業でなくとも、たった1つの実験でさえ数多くのステップを手でこなす必要があります。
この時間を我々は自動化することにより、研究を効率化させたいのです。

創業メンバーの紹介

以下の2名(坂本光士郎とヌネス板丸)が創業メンバーです。



大学の研究ってそんなに手作業が多いの?


あくまで、私の見えている範囲(バイオ実験系、老化研究)の話ですが、非常に多いです。
独身の方も家庭を持っている方も、学生も教職員も朝から晩まで(時には真夜中も)手を動かしています。



例えば私が現在行っている老化研究プロジェクトの中で、出芽酵母の老化細胞を集める実験をよく行なっています。
スケジュールは以下のような形です。時間は目安です。この時間以外に薬剤反応などで待機する時間があります。


1日目:数十本の試験管にサンプルの名前を書き、5mLずつ培養液を入れる。(30分)
    それらの試験管に、丁寧に細胞を入れて培養器に入れる。(20分)
2日目:細胞の培養状態を調べる(30分)
    細胞の培養液を薄めて再度培養させる(45分)
    細胞の培養状態を調べる(30分)
    試験管から必要な細胞を取り、特別な薬剤を入れて処理する。(90分)
    老化させるための特別な培養液を作る(45分)
    特別な薬剤処理をした細胞を洗ってから培養液に入れる(60分)
3日目:培養状態の確認(30分)
    老化細胞と若い細胞を集める(60分)
    老化細胞だけ分離させる(120分)
    老化細胞の加齢状態を調べる(150分)
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    (老化細胞において坂本が研究している特殊なDNAを調べる場合)
    老化細胞と若い細胞のDNA以外の部分を溶かす(150分)
4日目:DNA以外の部分を溶かした後の洗浄処理(120分)
    DNAを見やすくするための切断処理(120分)
5日目:DNAを大きさごとに分離(90分)
    分離されたDNAを染色し確認(60分)
    分離されたDNAを膜に移しとる(120分)
6日目:膜への前処理(30分)
    
DNAを標識するための薬剤作り(30分)
    膜についているDNAの標識(30分)
7日目:膜の洗浄(60分)
    DNAの確認(15分)   

これら一連の作業で行われる、たった1回の実験に合計1535分、時間に直すと25.6時間が単純作業に費やされています。

もちろん実験方法を構築し、評価・検討する上で頭を使うことはあります。
ですが、それは実験を始める前と後の話で、実験中は構築されたマニュアルを基に、ただひたすら手を動かすのみです。
やっている間はほとんど頭を使っていません。ただの作業です。


これ以外にも、実験の待ち時間、データの解析時間、ノート作成、図(グラフ)の作成などを含めるとかかる時間は更に膨大になります。

これら一連の作業で一回の実験しかできず、当然一回の実験だけじゃデータとしては不十分だったり、失敗したりすることもあります。

考えてみてください。

この作業時間を全て機械に任せて浮かすことができたらどんなに良いことでしょう?


文句言わずに手作業でやるべきでは?


この中でサーマルサイクラーを使わずに手作業で数十回PCRチューブの温度を変化させていたり、細胞培養のためにフラスコを数時間手で振り続けたり、メンブレンをひたすら手で揺らしている人のみが石を投げてください。



分子生物学の実験はPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法で用いられるサーマルサイクラー(自動で温度を上下させる機械)や、

フラスコを自動で揺らしてくれる振盪機(シェーカー)、


メンブレンという膜を洗ったり反応させたりするために自動で揺らしてくれるシーソー台など

ほとんどの人が実験自動化の恩恵にあずかっているかと思います。

「便利さの追求は人類の発展の歴史」という言葉も昔、祖母が話してくれました。
便利さの追求は悪いこととは全く思いません。


そして、「研究の自動化」は単に作業が楽になるという利点だけではありません。

・機械が行うことによる正確性の向上により実験のエラーが減り、結果の信憑性が増す。
・危険な薬剤など人間が扱うにはリスクがある試薬を代わりに扱ってくれる。
・身体的機能にハンディキャップがある方にも実験系研究者の道が開かれる。

といった利点もあります。



また、個人的な話になりますが…

私は家庭の事情で日中実家に行かなければならないことがしばしばあります。緊急の用事で実験を中断しなくてはならないこともあります。それにより、研究の進捗に遅れが出がちということも否めません。

実験の自動化は私の研究者人生を円滑化させるために最も必要なことなのかもしれません。


具体的に研究のどの部分を自動化させたいのですか?


研究の自動化でまず目指しているのは実験やそれに係る雑務の自動化です。

データの解析や図の作成の自動化も興味はありますが、Prismのような便利なソフトが存在するので、そちら側の方々に任せてもよいかもしれないと個人的に思っています。

実験の自動化では、2つの方向性があると思っています。

(A) 単一の実験や作業を自動化してくれる機器
 
  (例:分注機、細胞測定、撮影を自動で行う機械)

(B)どのような実験でも自動化できる機械、施設
  
  (例:研究者がコマンドを入力することで好きな実験を実行可能)

(B)の方向に関してはロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社のLabDroid「まほろ」が目指している、というかほとんど実現に近い状態だと思います。

引用:ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社 https://rbi.co.jp/service/

まほろが1つのラボに1台、欲を言えば1人に1台あればとてもいいと思いますが、なかなか現実的ではなさそうです。

私どもも、「まほろ」ほど凄いロボットでなくとも、小さな箱の中でどんな実験でも行えるようなマシンの開発には非常に興味がありますが
私たちの技術はそのようなマシンを開発できるほどまだ高度ではありません。

ですので、戦略としてはまず(A)のような単一の実験ないし作業を自動化できる機械を次々にリリースしていきたいなと思っています。

どんな実験、作業を自動化させますか?


直近で開発を検討しているのが、
・全自動チップ詰め機
・全自動分注機
・全自動培地調製機
です。

他にも「全自動ウェスタンブロット」「全自動継代機」「全自動ゲノム抽出」など、開発したいものがたくさんあります。
研究の現場にいるので「こういうものを作ってほしい!」という現場の生の声が聞きやすい環境です。
作りたいものリストがどんどん埋まってしまうので頑張らないといけませんね。

詳細についてはまた後日書くと思います。お楽しみに。



自動で実験する機器は大企業が既に作っているのでは?


はい、おっしゃる通りです。

ただしその多くが、未だ高価格、高機能、高品質です。
そのため、アカデミアのラボにはほとんど行き渡っていないのが現状です。

ですので私どもは

低価格(競合より遥かに安い価格で)

省機能(本当に必要な機能のみに絞ります)

高品質(見た目は安っぽいかもしれませんが、優れた品質)

を目指して開発しております。

どんな素晴らしい機器を作っていても、研究機関に幅広く行き渡らなければ意味がないと考えております。
日本では大学の研究費に乏しく、そのような優れた機器の導入など夢のまた夢、といったラボも存在するのが残念ながら実状です。

このまま、資金力のある企業や一部の超ビッグラボと、そうでない研究費に乏しいラボの差が拡大する一方でよいのでしょうか。

私はそうは思いません。みんなで便利な機械で楽しく研究しましょう。


その他

自動研究機器以外にも研究関連の小物(チューブラック、試験管立てなど)の製造や、製造に使う各種機器のリースなどいくつかサービスを考えております。
売上・利益は自動研究機器の開発費に充てる予定なので、もし応援してくださる方は弊社の研究関連商品を購入してくださると有り難いです。
宜しくお願いします。


株式会社サカマル

代表取締役 坂本光士郎

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