【3分で読めるショートショート】予知夢ロボット
ある研究者が、予知夢を見るロボットを開発した。
ロボットが、夢を見るとは、どう言うことかと思うかも知れないが、ネット上に溢れるさまざまな情報、映像、音声、などを解析し、少し未来を予測した映像を作り出す仕組みだ。
普段は、色のついた霧のような、おぼろげで意味を持たない映像を流し続けているが、時折り、はっきりとした人物の映像などが映し出される。
それが、予知夢として現実に起こるのだ。
これまでに、震災や、芸能人・政治家の死亡など、78回の予知夢を見て、全て的中させてきた。
特に、最初の震災の予知夢では、そのおかげで、多くの人が助かり、ロボットの信頼と人気は、一気に上昇した。
ロボットの映像は、動画配信サイトにLive中継で配信されており。誰でも見ることができる。
初めは、信用していなかった人々も、震災から始まった予知夢の、恐るべき的中率には、考えを変えるほかなかった。
今では、朝の番組の一つのコーナーで、流されるほど、国民的なものになり、ロボットの予知夢は、近々必ず起こる現実であると、認識されるようになった。
そして昨日、新たに予知夢が映し出された。
人気の男性タレントの映像だ。
まだ若い彼が、近々亡くなることになると、
ネットでもテレビでも大きく話題になった。
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程なくして、タレントの元に2人の警官がやってきた。
病死や事故死の可能性もあるが、事件の可能性もありうると、しばらくの間の保護を申し出てくれたのだ。
さすがは、国も認める予知夢ロボット。
何かが起こる前に、警察が動いてくれるのはありがたいと、快く2人を招き入れた。
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「今回は、刺殺される映像だっけ?」
「そうそう、ナイフのようなものが、見えたって。」
床には、男が倒れている。
「この前の政治家さんは、上に楯突いたせいで、映像流されちゃったんだってさ。こいつもなんかやったのか?」
「さあ?あのロボット、名前がよく上がるやつの映像とか、適当に流すからな。」
「結局、当たったのは最初の震災だけ。あとは全てハズレか、金を払って流させたか。」
「国としても、最高の隠れ蓑。これから起こる幸も不幸も予知夢のせい。しかも、それが自由自在に操れる。」
目を覚ました男は、己の状況が掴めずにいた。
自分を保護しに来たはずの警官の手には、鋭い刃物が握られている。
「ロボットの予知夢は必ず当たるんだよ。」
翌日、人気タレントの遺体が、近所の公園で発見された。
予知夢ロボットは、さらに人々の信頼を得た。