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ラブごっこきみこ

タイトルは、昔ちょりにつけられそうになったペンネーム。苗字もあった気がするけど思い出せない。当時関西に住んでいた若手の詩人の集まりで勝敗がつくイベントをして、負けるとペンネームを変えられてしまうという内容だったのだ。

ふざけてるけど本質をついているし何となく憎めない名前だから、今更ながら襲名してもいいかもしれないと思った。わたしの暑苦しさが出てる。

今年の8月は酷かった。もうこれより酷いことは起こってほしくない。

上旬は夫の病気で家族旅行が中止(飛行機代諸々10万円弱が水の泡)、そのあとわたしも体調を崩してたくさん準備していた東京の自主企画に出演できず、好きなバンドのライブにも行けず、人気の余りプラチナ化したチケットを人に譲ったらライブ当日に整理番号が悪いと文句を言われた。やり取りする前に確認したのに……。ライブに行くことを泣く泣く諦めた時に「きっとその分いいことがあるよ!」と慰めてくれる人が多かったのは救われた。

その後も低空飛行の中、何とか自分との約束だった詩集を形にした。かなり頑張った、と自分では思う。年明けから願掛けのためにつけたままにしていたピアスを外した。

そこから紆余曲折あって(推しの怪我で)大阪公演はないかもとファンが騒然となった。一度は絶望していたライブが無事開催されるとわかったのはライブの数日前。当日昼、その日のために用意していた着物を着付けて、さぁメイクして出かけようと思ったところにちょりの訃報を目にする。美容院に行きネイルをして、あんなに心待ちにしていたライブだけど、これはもう行けないかと思った。一番起こってほしくなかった悪い予感が現実になってしまって、自分の不甲斐なさ、これまで少しでも状況を変えられなかった悔しさや、それでも本人の生きたい人生だったんだからと無理に納得したい気持ちなどがずっと混沌としていた。大人になっても、達観してやり過ごすことができない。ライブは両日とも素晴らしかった。初日の終演後ひとりで飲み、お料理のおいしさに却って虚しくなり、キリンジのエイリアンズを歌いながら堺筋を北上しファミマをはしごして好物のカスタード饅頭を店にある分ぜんぶ買い占めて帰った。二日目は滅多にないダブルアンコールがあったらしい(一年追いかけてるけど初めて聞いた)、一回目のアンコールの後すぐに会場を出て、その頃わたしは吉野家にいた。ついてなさすぎて涙も出ない。お祓いぐらいではどうにもならなさそうな気がする。

そこからは昔の仲間やちょりを慕っていた若い子たちと頻繁に連絡をとり某惑星の原稿を書いていたら時間が過ぎてくれて感情が少しずつ整理されてきた。プラチナチケットを譲った分のいいことって一体なんだったんだろう。カスタード饅頭が一晩で10個も買えたことだろうか。寝起きが悪い息子が味わいもせず朝ごはんがわりに食べていた。買ったわたし自身はほとんど口にしていない。最近はお酒を飲む気にもなれないので、これを機にしばらく禁酒をします。

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