ローレライ
ローレライはそこにいた。その男の瞳は何も映さないぬいぐるみの黒目の様な漆黒の瞳をしてただそこにいた
最初に見たのは昼の街角だった、ローレライはゴミ箱の上に座っていてただ私を見ていた
物言わずただ私を見つめていた。
その時は通り過ぎてしまった。
次に出会ったのは突然夜明け前に目覚めてしまった夜だった。
ふらふらとコンビニへ朝食を買いに向かおうとした道でローレライがそこにいる。
ただ街灯のない道の上ぼおーっとした白く痩せ細った体を薄ぼんやりと輝かせながらそこにいた。
その時、私はローレライの瞳に吸い寄せられた。何ももの言わぬ漆黒の瞳。子供の頃家にかかっていた美しい乙女の絵画の瞳を思い出した。
少し懐かしさを感じながら私はコンビニへと向かった。
だけどこの時はあの瞳が忘れられなかった。仕事をしても、勉強をしてもあの漆黒の瞳を忘れられない。
あの男の瞳は何か心の奥底にある私の孤独を理解してくれるような、それかすぐに命を無くしてしまいそうな危うさか
一言では言い表せない何かを感じさせた。
最後にローレライに会ったのは朝焼けの屋上だった。朝焼けの屋上でローレライは朝日の光を後ろに受けながらただ黒い瞳で私を見ていた
ローレライは地面へと誘っている。
私にはそう感じた。ローレライは細い体を持ち上げて屋上の端へと向かう
(このままでは死んでしまう!)そう思った私はすかさず彼の方へ駆け寄った
ローレライは黒い瞳を私に見せたまま地面へと飛び込んでいった
鈍い音を立てローレライだった男は頭から血を流して倒れていた
私はそれを見て心を撫で下ろした
もしこのままローレライの瞳に誘われてたら身を投げていたに違いない
そう思い再び地面を見ると彼の姿形は無くなっていた
※ローレライはドイツの妖怪で少女の姿をしていますが私は男の姿で描きました。
ニンフとかそうですが、女性の姿を表す言葉でも私は男女関係なく表現します。