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町屋のUXから得た気づき。
ある町屋に宿泊した際にその運営チームの方から聞いた言葉。
「 リノベーションの際に大事にしているのは水回り 」
すごく納得したし、新しい気づきをもらえたので、今回はこの言葉にまつわるお話を。
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2年前になりますが、瀬戸内芸術祭を回った後に気になっていた香川にある「宇多津の家」に宿泊しました。宇多津の家は、宇多津町の旧市街地エリア、通称「古街」の真ん中にある町屋をリノベーションした宿泊施設です。
そしてここを運営しているのは「ちいおりアライアンス」という会社。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、アレックス・カーという方が代表を務める会社です。カー氏は、徳島の祖谷の山里という古民家集落の宿泊施設をプロデュースしたことでも知られる、日本各地に残る美しい風景と文化を守り伝えるために執筆や講演、様々な事業を行っている方です。
そんな彼らが祖谷の山里で得たノウハウを活かして運営してるのが、僕らが宿泊した宇多津の家。このような背景があって、彼の活動に興味があった僕は瀬戸内に訪れた際に、少し足を伸ばし訪れてみました。古民家再生や、地域活性に関心ある方には、きっと興味を持っていただける施設と思います。
さて、最初にご紹介したフレーズを改めて。
「リノベーションの際に大事にしているのは水回り」
宇多津の家は、町屋本来の古き良き面を活かしながらも全体的にとても綺麗な作りです。でも中でも特に驚いたのはトイレやお風呂、洗面所。この言葉の通り、たしかに水回りがすごいんです。
綺麗どころか最新設備。お風呂は檜風呂、シャワーヘッドは出を切り替えられるようなタイプで、トイレはセンサーで自動開閉するような最新機能を搭載・・・。
古い町屋での宿泊ということで、水回りはある程度のものを覚悟していたのですが、全くそんなことはなく。ほんとうに驚きました。
でもなぜここまでしたんだろう。
気になり聞いてみると納得の回答をいただきました。
「これは、現代の人のライフスタイルを考慮したリノベーションの結果。古きものを今に持ってくるときに、そのまま持ってくることが全てではない。今のライフスタイルに適した形で持ってくるのが大事なこと。」
なるほどと思いました。
(当時の回想なので言い回しや、単語が正確ではなく申し訳ないのですが、ニュアンスはずれてないはず。)
たしかに宿泊検討者の多くは、町屋で宿泊したくて訪れます。でもだからと言って、必ずしもすべてを当時のまま過ごせる場を求めているわけではない。こうした施設は博物館や資料館ではなく、あくまでそこで一晩過ごす宿泊するための場所。快適に暮らすことがベースにある。
だから今の人たちに当時の良き空間で過ごしてもらうことを主題にしていても、あえてすべてそのままを再現しなかったんです。土間や、和室、欄間や床の間など当時の造りはしっかり活かしつつ、今のライフスタイルと異なり、ネガティブなポイントになりやすい水回りを特に力を入れて改修したそう。
彼らの古き良きものを、今に持ってくるこの手法にとても共感しました。実際そこで過ごした時間はとても快適で、描いていた町屋宿泊からずれることなく、その想像の上をいく体験にしてもらえました。
まとめるとこうしたことでしょうか。
・体験の核となるものはブラさず、磨く。
・同時にネガティブな印象を与え得るポイントをしっかり見極め把握する。
・それらをしっかり対策し、あわよくばプラスにするくらい注力する。
→結果、期待される体験をしっかり提供しながらも、全体の体験が底上げされ感動を生むことへ繋がる。
大事なことですね。
今回のようなケースだと単に当時のスタイルをそのまま再現することは、宿泊施設とした考えた時には、作り手側のエゴになってしまいかねない。これにははっとさせられました。
町屋や古民家だけでなく、他のフレームにも適用できそう。
ネガティブなポイントを当たり前にしない。一度客観して見ること大事ですね。そこにこそ、体験を底上げしてくれるチャンスがあることを実体験を経て感じました。
今回は、そんな気づきをくれたフレーズの紹介でした。
最後に、他にもこの施設でよかった点をリストアップ。
・贅沢な一棟貸しです。二階にベッドタイプの寝室があります。
・金額が安い。時期にもよりますが素泊まりなら、二人で2万円前後です。
・料理はオプションで、宇多津の会席料理屋さんがケータリングしてくれます。これが想像以上に良かったです。和室でゆっくりいただくことができて、その空間をより満喫できました。
・鍵はナンバーロックシステム。チェックイン時に担当の方から説明を受け流必要がありますが、その後の出入りや、チェックアウト時など鍵の受け渡しが必要なくとても楽。
写真でも少しご紹介。
興味持たれた方はこちらの公式サイトから、ぜひチェックを。
アレックス・カー氏が運営する他の施設もとても気になります。次は祖谷の山里行ってみたい。また彼の書籍である「ニッポン景観論」もはっとさせられました。日本への愛ある指摘が、とても勉強になる本です。
もしご興味あればこちらもぜひ。