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セッション定番曲その119:Open Arms by Journey
ロックバラードの定番曲。のびのびと大きく歌いましょう。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Journey
1980年代を代表するヒット曲。Steve Perryのハイトーン・ボーカルを中心にしたドラマチックな曲調をコンパクトにまとめたもの。まだまだラジオの影響力が強かった時代に相応しい曲でした。3拍子(6/8)のゆったりしたリズムが心地いいですね。
別の言い方をすると「バラード曲のジレンマ」に多くのロックバンドが嵌っていくキッカケにもなった曲です。詳しくは後述。
ポイント2:初期Journeyからの変遷
1973年に結成した当初のJourneyはSantanaの色合いを残したバンドでした。ギターは天才少年Neal Schon、オルガンとボーカルにGregg Rolie、翌年には名ドラマーAynsley Dunbarも加わり、ライブのクオリティがとんでもないスーパーグループとして評判になりました。Santanaの「Caravanserai」からラテン色を抜いたジャズファンク/フュージョン的な演奏。ドラムとベース、オルガンが曲の音空間の枠組みを作り、その中をギターが縦横無人に走り回るような演奏。
初期の3枚のアルバムはそんな感じでしたが、ライブの評価の高さに反してなかなかスタジオ録音盤は売れず、何か変化が必要な状態に。
1978年にはSteve Perryがボーカルに加わり、彼が歌詞を書く曲も増え、作風が少しずつポップな方向性に変わっていきます。徐々にメンバー交代も進み、1981年には大ヒットアルバム「Escape」を発表。「Don't Stop Believin'」「Who's Crying Now」そしてこの「Open Arms」などのヒット曲が生まれます。
個人的には初期のJourneyは大好きですが、売れなかったのも分かります。
ポイント3:産業ロック
「産業ロック」というのはどうも日本の音楽業界人による造語のようですが、確かに一定のジャンルのロック曲/ロックバンドを括るのに便利なレッテルでした。全然褒め言葉ではなく「テクニックはあるのにそれを抑えて、FMラジオで流れやすい耳障りの良い曲を量産する連中」というイメージ。要はヒットチャート狙いでレコード会社が制作をコントロールして、プロデューサー主導で作られた毒の無い音楽、だけど聴きやすいからヒットする、と。
確かにこの時期、それまでは割とハードな曲、凝った曲、泥臭い曲などを得意にしていた多くのバンドが「最新のキーボードをフィーチャーして、ギターのハードさを抑えて、分かりやすいメロディをハイトーンで歌う」スタイルに移行していきました。ロックファンというのは厄介な人種で「売れる」ものに嫉妬して批判する傾向がありますね。米国には同様の言葉は無いようですが、なんとなく「あの辺」と括っている雰囲気はあります。
バンド側も「アルバム/シングルなどの録音物」と「ライブステージ」は違うものと割り切っていた節もあります。ラジオでヒット曲を聴いてファンになった女の子がコンサートに行ってみたら、あまりにもハードな演奏の連続でびっくりしたということもあったようです。
Journeyもなんかそういう括りに入れられてしまい、Neal Schonなんかは「やっと売れたけど、何か違うかなぁ」という感じだったのかもしれません。
ポイント4:Mariah Carey
1995年のカバー。これで完全にロマンチックなバラード曲というイメージが定着しました。米国のオーディション番組で女性の参加者がこれを歌うことも多いです。
Céline Dion も歌っています、2014年発表。
こうなるともうお終いですね(言い方・・・)
Dolly Parton はSteve Perryとデュエットしています。
ポイント5:So now I come to you, With open arms
Lying beside you, Here in the dark
Feeling your heartbeat with mine
Softly, you whisper, You're so sincere
How could our love be so blind?
We sailed on together, We drifted apart
And here you are, By my side
恋人同士のふたりはお互いの鼓動が聞こえるくらい隣り合って横たわっていて、彼女は耳元で素敵な言葉を囁きます。それなのにふたりは離れ離れになってしまったようです。そして恋人はまた隣に戻ってきてくれました。
So now I come to you, With open arms
Nothing to hide, Believe what I say
いま君のもとへ向かうよ、両手を広げて
僕には隠すことなんて何も無い、信じて欲しい
「open arms」というのは文字通り両腕を広げて、手の平も広げて、無防備な状態で、いつでも相手を迎え入れて抱きしめられる状態。何か心に隠し事があれば、とれないポーズです。そういう言葉を臆面もなく相手に向かって言える、無償の愛、または慈悲の心。そしてある意味ダサい。
いかにも全てがキラキラしていた1980年代米国のヒット曲という感じです。
ポイント6:カバー例
Boyz II Men
Mariah Careyとデュエットでバラード曲を発表していた彼らなので、自然なカバーですね。完全に毒気無し。
二宮愛
Music Travel Love & Francis Greg
ポイント7:ロックバンドのバラード曲のジレンマ
1980年代以降、多くのロックバンドが、ある意味「生き残る」為に本来のハードな路線とは別にバラード曲を発表していきました。それがラジオ等で流れて耳にとまってヒットすると、そこからファンになった人達はそういう音楽をやるバンド/ミュージシャンだと思い込む訳で、ヒットの代償として「ライブだとイメージが全然違う」とか「あの1曲だけの一発屋」とか言われて、罠に嵌っていきます。死屍累々。1980年代に入ってもハードロックがある程度聴かれていた日本市場とは全然違った状況でした。
もちろんどの曲もよく出来ていますし、演奏も安定していて、歌声/コーラスもむしろハードな曲をやる時よりも破綻が無くて聴きやすい。でも、これらのバンドを思い出す時の曲がこれだけというのも残念。
Mr. Big 「To Be With You」
Extreme 「More Than Words」
White Lion 「When The Children Cry」
Firehouse 「Love of a Lifetime」
Survivor 「The Search Is Over」
Great White 「Save Your Love」
Kingdom Come 「What Love Can Be」
◼️歌詞
Lying beside you, Here in the dark
Feeling your heartbeat with mine
Softly, you whisper, You're so sincere
How could our love be so blind?
We sailed on together, We drifted apart
And here you are, By my side
So now I come to you, With open arms
Nothing to hide, Believe what I say
So here I am, With open arms
Hoping you'll see, What your love means to me
Open arms
Living without you, Living alone
This empty house seems so cold
Wanting to hold you, Wanting you near
How much I wanted you home
But now that you've come back
Turned night into day
I need you to stay
So now I come to you, With open arms
Nothing to hide, Believe what I say
So here I am, With open arms
Hoping you'll see, What your love means to me
Open arms