セッション定番曲その98:Black Night by Deep Purple
ロックセッション定番曲。ハードロック期DPの初期ヒット曲です。実はリズムに秘密が・・・
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:ハードロックにおける「シャッフル」のかっこよさとダサさ
Led Zeppelinと比べてダサい扱いをされてしまうこともあったDeep Purpleですが、その原因のひとつがこの「シャッフル(ビート)」の曲かもしれません。いわゆる「跳ねる、3連のリズム」で、ブルースやカントリーには普通にあったものです。それをチャック・ベリーが「スクエアな8ビート」に変えてロックンロールを生み出した訳ですが、初期の録音とか聴くとバックの演奏はまだ微妙にハネてしまっています。手癖は簡単には直らない。
シャッフルは推進力とかスピード感を感じるリズムですが、完全な8ビートが主流だったロック時代に聴くと「田舎臭さ」を感じる場合もありました(私見)。
Black Nightは当時シングル盤だけでアルバムには収録されませんでした。「In Rock」の他の曲の徹底したハードさと比べるとポップな曲です。なぜ緩いシャッフルビートの曲を名刺がわりのシングルにしたのか分かりませんが、確かに「Speed King」をシングルにしてもラジオでは流してくれなかったかも。(Speed Kingも実は早いシャッフルビート、アルバムでは2曲の「Bloodsucker」もけっこうハネてる)
(シングル盤では3:30ぐらいでフェイドアウトしてしまいますが、この録音は4:40ぐらいまであって、その後のヤバいギターソロも聴けます)
こっちは一時期話題になった日本でのライブ録音。長いイントロと最後の狂ったギターソロが聴けます。
このロングバージョンやライブバージョンがもっと早く出ていればこの曲の印象も違っていたかもしれません。
初期のLed Zeppelinにはこういう緩いシャッフルは無かったんじゃないかなぁ。ブルースを徹底的にハードロック化して、ブルースのリズムだったシャッフルは敢えて排除したのかもしれません。後期にはもっと柔軟にリズムで遊ぶようになりましたが。
(追記)
聴き直したら「How Many More Times」がありましたね。Howlin' Wolfのブルースを下敷きにした曲。でも派手なアレンジやドラムのフィルインが効いていて「緩いシャッフル」という印象はありません。
それと比べて、ブルースベースのバンドではなかったDeep Purpleがなぜ敢えてシャッフルビートで曲作りをしたのか・・・?スタジオでジャムりながら曲作りをするスタイルだった彼らなので、ドラムのIan Paiceがこのビートを叩き始めて、そこにみんなが乗っかって・・・という流れかもしれません。
実は同時期のUriah Heepの2大ヒット曲も実はシャッフルビートですが・・・
こっちは徹底的に上物でお化粧して、分厚いコーラスも付けて、シャッフルの隙間を感じさせず、スピード感がありますね。
この「跳ね」問題は根が深くて、初期のハードロック・バンドのドラマーはJazzやR&Bバンド出身の人も多くて、油断するとついついハネてしまう癖が強かったみたいです。しかも何かタメの無い軽いハネ。
ポイント2:高校時代の思い出を少しだけ
高校2年生の文化祭でこの曲やりました(歌いました)。私のロックバンド・デビュー。他のメンバーもまだ「シャッフル」なんて言葉も知らず、ハネるリズムに苦労していました。言語化出来ていないと理解するのに時間が掛かるんですよね。1970年代後半の高校生バンドだから、今の高校生バンドとはレベルが全然違って、バンドメンバーそれぞれが感じているリズム感もバラバラだったんじゃないかと思います。
当時の高校生にもコピーしやすい曲だと最初は思ったのですが、実はどのパートも難しい曲だったと思い知った記憶があります。
ポイント3:歌詞について
Led Zeppelinと比べてDeep Purpleがダサい扱いをされてしまうこともあった他の原因としては「歌詞」があります。Zepも初期こそ古いブルースのフレーズの寄せ集めみたいな歌詞が多かったですが、次第に神話や黒魔術に題材を取った文学的な歌詞に変わっていきました。DPの場合は歌詞は歴代のボーカリストが書いているのだと思いますが、直接的というか深みの無い歌詞が大半でした。それもロックっぽいのですが。
この曲の歌詞も、要は「夜道は暗くて先が見えない、俺の心も迷っている」と言っているだけ。歌う際に表現として工夫するのがなかなか難しい感じです。
ポイント4:元ネタ
Ricky Nelsonが「Summertime」という古い曲をアレンジした歌ったもの(1962年録音)がBlack Nightのリフの元ネタと言われています。
聴いてみると納得ですが、むしろこっちの方がリズムが締まっている気もします。普通のペンタトニックのリフなので、ありがちと言えばありがちですが、今なら著作権云々で揉めていたかもしれないですね。
Wikipediaにはこの曲も「元ネタ」として挙げられています。1966年録音。
リフ=歌メロみたいな軽めの曲ですが、この時期らしいサイケデリックな雰囲気もあって、初期のDeep Purpleが参考にしたバンドだったかもしれません。
ポイント5:シャッフルの復権?
1980年代に突如現れたStevie Ray Vaughan & Double Troubleが「やっぱりシャッフルってかっこいいね」と再認識させてくれた記憶があります。
彼の場合にはハードロックではなくブルースがベースのロックの人なので一緒くたに語るのもおかしいですが。この前のめりの推進力がシャッフルビートの魅力ですね。とにかくギターのキレがすごい。
ポイント6:イントロ、ドラム・フィル
上記の「元ネタ」には無い、特徴的な三連を感じるイントロ。その後のリフに自然に繋がる素晴らしいイントロだと思います。実はドラムとベースギターだけのリフです。録音の関係で軽く聴こえますが、実はドラムはずっと重いパターンを叩いていて、途中のドラム・フィルもIan Paiceならではの丁寧なものです。ただリズムキープするだけでなく、ところどころでパターンを変えて比較的に自由にキメを入れているところが元々ジャズ・ドラマーになりたかった名残りかもしれません。注目してよく聴くとかなり凝った演奏です。
Ritchie Blackmoreからは(仲が悪くなってから)「あいつは何を叩いて一緒だ」と批判されたこともあるIan Paiceですが、最初期からずっとDeep Purpleを聴いていくと、ドラムが安定していることにあらためて気付きます。爆発力もあって破綻の少ない演奏。もっと評価されて欲しいですね。
黒田和良さんのドラム講座
ポイント7:カバー
デスメタルにした「馬鹿カバー」
Joe Lynn Turner、立ち位置のよくわからないカバーではあります。原曲の良いところを何ひとつ反映していない気もする。
色々と聴きましたが、本家を越えるようなバージョンはありませんでした。
◾️歌詞
Black night is not right
I don't feel so bright
I don't care to sit tight
Maybe I'll find on the way down the line
That I'm free, free to be me
Black night is a long way from home
I don't need a dark tree
I don't want a rough sea
I can't feel, I can't see
Maybe I'll find on the way down the line
That I'm free, free to be me
Black night is a long way from home
Black night, black night
I don't need black night
I can't see dark light
Maybe I'll find on the way down the line
That I'm free, free to be me
Black night is a long way from home
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