セッション定番曲その10:Sweet Home Alabama by Lynyrd Skynyrd
ロックセッションイベントでの定番曲。リフが魅力的で構成も分かりやすいので、セッション向きですが、内容的に私には歌えません。ニール・ヤングが好きなので。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:アラバマ(州)とニール・ヤング
この曲はニール・ヤングが歌った「アラバマ」へのアンサーソングというか反論がテーマになっています。アラバマ州は米国南部に位置していて、ジョージア州とミシシッピ州の間、大雑把に言ってあまり豊かな州ではありません。長い間、綿花産業が経済の柱でした。当然、黒人奴隷の労働力に支えられて。奴隷の解放や差別撤廃にも消極的で、悪名高いKKKの拠点でもあります。米国南部の歴史の中には「ローザ・パークス(英雄)」や「ジョージ・ウォレス州知事(クソ野郎)」という人名や「血の日曜日事件」という事件名が登場しますが、どれもアラバマ州が舞台です。この辺りは今後、別の曲の中で説明していく予定です。
で、カナダ人のニール・ヤングは「アラバマ」や「サザンマン」などの曲の中で、米国南部のクソ野郎どもの相変わらずの保守性や過去への反省の無さを批判しました。これが大ヒットアルバムに収録されていたので、多くの人が耳にした訳です。CSN&Yのライブアルバムにも「サザンマン」は収録されています(長尺のヘタウマ・ギターソロ入りで)。
ポイント2:Lynyrd Skynyrd
レイナード・スキナードはフロリダから出てきたバンドなのでアラバマが故郷ではないんですが、米国南部州全体が批判んされたと感じたんでしょうね。反論する歌詞の曲を作りました。
Sweet home Alabama, Where the skies are so blue
アラバマいいとこ、空は青いよ、と。
Big wheels keep on turning, Carry me home to see my kin
でっかいタイヤの車を飛ばして、親しい家族や仲間に会いにいくよ。
Well I heard Mr. Young sing about her
Well, I heard ol' Neil put her down
Well, I hope Neil Young will remember
A Southern man don't need him around, anyhow
「故郷」は「彼女(her)なんですね。
「Mr. Young」「ol' Neil」「Neil Young」と「知らない言葉はだいたい固有名詞」だと。
「put her down」は「俺たちの故郷をケナしやがって」と。
ニール・ヤングは本気ですが、レイナード・スキナード側はどこまで本気で反論しようとしていたのは謎です。ヒップホップでいう「ビーフ」みたいな感覚だったのかもしれません。話題になれば儲けものだと。バンドとしては米国南部州代表みたいな立ち位置で売り出されていたので、黙っているのもアレだし、みたいな。白人ばかりのバンドが「南部の保守性」「黒人奴隷への宿罪」の指摘に本気で反発しても説得力無いし。そもそも長髪の彼ら自身が1970年代前半の保守的な地域ではまだまだのけ者扱いだったかもしれないですね。
ポイント3:Muscle Shoals(マッスルショールズ)
Now Muscle Shoals has got the Swampers
And they've been known to pick a song or two
「Muscle Shoals Sound Studio」はアラバマ州シェフィールドにある有名なレコーディングスタジオで、Muscle Shoals Rhythm Sectionあるいは「Swampers」と呼ばれていました。「Swamp」は低湿地、沼地のことで米国南部地方の俗称。一時期、その辺りの音楽や影響を受けた音楽を大雑把に「スワンプミュージック、スワンプロック」と呼んでいましたね。特に英国のバンドへの影響力が大でした。英国のミュージシャン達にとって、ブルースのモノマネをしていたら、より深い表現が南部あたりにあったという感じだったのかと。
Muscle Shoalsスタジオの(セッション)ミュージシャン達はBarry Beckett、Roger Hawkins、Jimmy Johnson、David Hoodなどで、アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケット、パーシー・スレッジなどのレコーディングでバックを務めています。英国のミュージシャン達も一時期マッスルショールズ詣をしていて、Trafficなどは自分達のツアーにマッスルショールズのリズムセクションを連れ出しています。
この歌詞では「Swampersの音楽はいいだろ、君(ニール・ヤング)も好きなんじゃないかい?」と、南部いいとこアピールをしています。
ポイント4:The governor
In Birmingham they love the governor (Boo! Boo! Boo!)
この曲の歌詞で一番分かりにくいのはこのあたりで、「Birmingham」はアラバマ州の都市名、「the governor」というのは「ジョージ・ウォレス州知事(クソ野郎)」で長く州知事を務めて、人種差別撤廃に反対して人種隔離政策を進めて、数々のひどい事件を主導しました。公民権運動のデモ隊に向けて発砲させて前述の「血の日曜日事件」を引き起こしました。そういうクソ野郎を支持していたアラバマ州民(自分達の地位が侵されていくのを恐れていた白人労働者層)がいたのも事実。
で、「バーミンガムあたりじゃ州知事は支持されているね」と一見肯定的に歌っているように聞こえますが、実はその後にブーイングがちゃんと入っているのです。
Now we all did what we could do
(奴を追い出すために)俺たちはやれることを全部やったんだ。
アラバマ州全体が腐敗している訳じゃないんだ、と。
ポイント5:で、結局・・・
歌詞の中でニール・ヤングをこき下ろしているように聞こえる曲ですが、実は歌っているところをちゃんと聞くと、言い訳も入っている、と。米国南部州の人達にとってはカナダ人は北のよそ者だし、CSN&Yの拠点の西海岸(カリフォルニア州)なんてハッパ吸ってラリってるヒッピーしかいない所だし、グラハム・ナッシュなんて英国人だし、どうでもいい訳です。
Now Watergate does not bother me
「ウォーターゲイト(事件)」は共和党(保守派)のニクソン大統領(クソ野郎)がワシントンD.C.で起こした政治的事件ですが、それも「なんか北の方の都会で起こった事件」で米国南部州の人達にとってはどうでもいいというか、遠い世界の話。ドナルド・トランプ(クソ野郎)の支持者を見ても分かるように南北戦争は実はまだ終わっていません。
この曲は米国南部の後進性、閉鎖性なども認めながら「アラバマいいとこ」と歌っている訳です。と考えると、米国南部州以外の人(単なるロック好き)がこれを歌う時には、そういう二重構造というか皮肉も込めて歌うべきなのかもしれません。行ったこともないアラバマを賛美するのではなく。
ポイント6:「Alabama」の発音
歌詞の中に特に発音の難しい箇所はないのですが、強いていえば、この曲は「南部の奴らが歌っている」という想定なので、出来れば少し「南部訛り」で歌えるとそれらしいですね。厳密に言えば南部でも州ごとに違いはあるのですが、大雑把に言うと「鼻にかかったような発音」で「単語の最後の『r』音がはっきり発音されない」のが分かりやすい特徴。鼻にかかって発音されるので「pen」と「pin」の区別しにくいというのが分かりやすいですね。
「Alabama」の発音も「アラバマ」だと明瞭すぎるので、鼻にかけて(口よりも鼻寄りで)発音してみましょう。このあたりはお好みで。
■歌詞
Big wheels keep on turnin'
Carry me home to see my kin
Singin' songs about the southland
I miss Alabamy once again
And I think it's a sin, yes
Well I heard Mr. Young sing about her (Southern man)
Well, I heard ol' Neil put her down
Well, I hope Neil Young will remember
A Southern man don't need him around, anyhow
Sweet home Alabama
Where the skies are so blue
Sweet home Alabama
Lord, I'm coming home to you
In Birmingham they love the governor (Boo! Boo! Boo!)
Now we all did what we could do
Now Watergate does not bother me
Does your conscience bother you?
Tell the truth
Sweet home Alabama
Where the skies are so blue
Sweet home Alabama
Lord, I'm coming home to you
Here I come, Alabama
Now Muscle Shoals has got the Swampers
And they've been known to pick a song or two (Yes, they do)
Lord, they get me off so much
They pick me up when I'm feeling blue
Now how 'bout you?
Sweet home Alabama
Where the skies are so blue
Sweet home Alabama
Lord, I'm coming home to you
Here I come, Alabama
Mont... Montgomery's got the answer
==================================
Alabama by Neil Young
Oh, Alabama
The devil fools with the best laid plan
Swing low, Alabama
You got the spare change, you got to feel strange
And now the moment is all that it meant
Alabama, you got the weight on your shoulders
That's breaking your back
Your Cadillac has got a wheel in the ditch
And a wheel on the track
Oh, Alabama
Banjos playing through the broken glass
Windows down in Alabama
See the old folks tied in white robes
Hear the banjo, don't it take you down home?
Alabama, you got the weight on your shoulders
That's breaking your back
Your Cadillac has got a wheel in the ditch
And a wheel on the track
Oh, Alabama
Can I see you and shake your hand?
Make friends down in Alabama
I'm from a new land, I come to you and
See all this ruin, what are you doing?
Alabama, you've got the rest of the Union
To help you along
What's going wrong?
==================================
Southern Man by Neil Young
Southern man better keep your head
Don't forget what your good book said
Southern change gonna come at last
Now your crosses are burning fast, Southern man
I saw cotton and I saw black
Tall white mansions and little shacks
Southern man, when will you pay them back?
I heard screaming and bullwhips cracking
How long? How long?
Southern man better keep your head
Don't forget what your good book says
Southern change gonna come at last
Now your crosses are burning fast, Southern man
Lily Belle, your hair is golden brown
I've seen your black man coming 'round
Swear by God, I'm gonna cut him down!
I heard screaming and bullwhips cracking
How long? How long?
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