セッション定番曲その86:Ev'ry Time We Say Goodbye
ジャズの歌ものセッション定番曲、魅力的なバラードです。歌詞の世界観をうまく伝えるようにしたいですね。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Every time we say goodbye, I die a little
「サヨナラを交わすたびに、私は少し死んでしまいます」
衝撃的な歌い出しですね。
全体としては短い歌詞ですが、ぐっとこの歌の世界に引き込まれます。
演奏する人も歌う人もこの導入部を大事にして、リスナーにそこから先への期待を膨らませてもらうように集中したいですね。
ゆったりしたテンポのバラードは曲の導入部が「手探り」になりがちなので、フロントを担うメンバーがちゃんと世界観を持って、他のメンバーを引っ張っていく必要があります。
これは悲劇の歌なのでしょうか、それとも希望の歌?
ポイント2:Why the gods above me
Why the gods above me, who must be in the know
Think so little of me, they allow you to go
どうもこの人(主人公)の世界観には「空の上の神様達」が存在するようです。でも宗教的な存在ではなく、運命を司る超越的な存在なのかもしれません。
「全知全能のはずの神様が、なぜ私の気持ちを全然理解してくれず、最愛の人が去ってしまうのを許してしまうの?」
神様に文句を言っていますね・・・。
去るのを決めたのは「最愛のあなた」なはずなのに。
ここまでは悲劇的な物語にしか聞こえませんね。
ポイント3:a lark somewhere, begin to sing
歌詞に動物や植物が登場する時には何かを象徴しているはずですね。
「lark」は「雲雀(ヒバリ)」は「春のおとずれを告げる」「にぎやかにさえずる」というイメージですね。英語では「愉快で楽しいこと」「いたずら」という意味にもなるようです。
When you're near, there's such an air of spring about it
I can hear a lark somewhere, begin to sing about it
「あなたがそばにいると、春の空気に包まれるみたい」
「どこか空高くでヒバリが鳴いて、春のおとずれを告げてくれる」
あれ?なんかいい雰囲気ですね。幸せそう。
ポイント4:the change from major to minor
There's no love song finer
But how strange the change from major to minor
Every time we say goodbye
そんな素敵なラブソングなのに・・・
「サヨナラを交わすたびに、曲調が長調から単調変わってしまう」と。
音楽に例えて周りの空気の変化を描写しています。
ここの箇所のメロディが絶妙です。いわゆる「サウンドペインティング」ですね。この曲調の変化(=周りの空気の変化)をうまく表現したいですね。
ポイント5:Cole Porter先生
私のコラムでもたびたび登場するCole Porter先生。多くのスタンダード曲の作詞作曲を手掛けました。歌詞とメロディ(キーの変化)の一致も両方をひとりで手掛けているからならでは。
ロマンチックなラブソングを沢山書いています。
写真を見ても分かるようにゲイで、恋愛についての観察眼に優れていたのではないかと思います。シンプルな単語で、比喩などもうまく使い、繊細な感情を作品に落とし込んだ曲が多くて、その普遍性が今でも多くの曲が聴かれ、演奏され続けている要因かと思います。
ポイント6:で、曲全体の解釈としては
素晴らしい一日を一緒に過ごしたのに、まだ一緒に住んでいない2人はそれぞれの家に帰らなければならない。
「サヨナラを交わすたびに、私は少し死んだような気分になってしまう」それが繰り返される。
「あなた」は「毎回去ってしまう」という「繰り返される悲しみ」。
愛しているからこそ切ないですよね。
果たして主人公は恋人をしっかり手に入れることが出来るのかどうか?
ちょっとドキドキしますよね。
ポイント7:様々なバージョンを聴いてみましょう
Ella Fitzgerald
上手いけど、個人的には「揺れ動く乙女の心」を表現するにはちょっと立派すぎるかもしれないと思ってしまいます。
Julie London
悲しみよりも「恨めしさ」が聴こえてくる気がします。
Diana Krall
ちょっとクールな女の子が強がって歌っているように聴こえます。
Lady Gaga
ヴァースから歌っています。歌詞を噛み締めるような歌い方。
Simply Red
私が聴いたのはこのバージョンが最初だったかもしれません。ジャズバラードという意識ではなく普通にポップスとして聴いていたのだと思います。
Chet Baker、Paul Bley
John Coltrane
◾️歌詞
Every time we say goodbye, I die a little
Every time we say goodbye, I wonder why a little
Why the gods above me, who must be in the know
Think so little of me, they allow you to go
When you're near, there's such an air of spring about it
I can hear a lark somewhere, begin to sing about it
There's no love song finer
But how strange the change from major to minor
Every time we say goodbye
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