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セッション定番曲その134:(Sittin' On) The Dock Of The Bay by Otis Redding

歌もの/ソウル系セッションの定番曲。魂のソウルシンガーOtis Reddingが最後に残した穏やかな曲調のバラード。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Otis Redding

当時のファッションや髪型でまるでベテランシンガーのような風格でしたが、Otis Reddingが飛行機事故で亡くなったのはまだ26歳の時でした。この「The Dock Of The Bay」は亡くなる3日前にレコーディングされた曲だと言われており、死後に(彼にとって初めての)全米ナンバーワンになりました。

それまでの曲は激しいジャンプナンバーか、バラードでももっともっと情熱的なものが多かったので、この終始静かで落ち着いた曲は異質なものでした。今ではこの曲でしかOtis Reddingを知らない人もいるかもしれませんが、ぜひ彼の本領を発揮している他の曲も聴いてみてください(後述)。

彼のヒーローだったSam Cookeが濁りのない声で端正に歌う歌手だったのに対して、オーティスはもっと剥き出しの魂をぶつけてくるような歌い方で、だから「ロック時代」にも受け入れられたのだと思います。抜群のリズム感、音圧の強い深い歌声、観客を巻き込むステージング。


ポイント2:The Dock Of The Bay

I left my home in Georgia
Headed for the 'Frisco bay

オーティスは南部のジョージア州で生まれて、テネシー州メンフィスにあるStaxレコードに所属して活動していました。LAにあるライブハウス「Whisky a Go Go」にも出演していて、1967年夏にはサンフランスシスコからも近いMontereyで開催された「Monterey International Pop Festival」に出演してロック/ポップス・ファンからも注目されました。

この曲で彼が佇んでいるのは、そんな縁のあるサンフランスシスコ湾です。「ずいぶん遠いところまで来たなぁ」という思いもあったのでしょうね。

Sittin' in the mornin' sun
I'll be sittin' when the evenin' come
Watching the ships roll in
And then I watch 'em roll away again, yeah

I'm sittin' on the dock of the bay
Watching the tide roll away
Ooh, I'm just sittin' on the dock of the bay
Wastin' time

朝早くから日が暮れるまで、海を眺めて時間を潰しているようです。ここではまだどんな思いで過ごしているのかは分かりませんが、声の調子からそんなに盛り上がっていないのは伺えます。

I left my home in Georgia
Headed for the 'Frisco bay
'Cause I've had nothing to live for
And look like nothin's gonna come my way

やりがいを見つけられずに故郷を離れたものの、これから先にもあまり期待出来ないかもしれないと諦めています。

Look like nothing's gonna change
Everything still remains the same
I can't do what ten people tell me to do
So I guess I'll remain the same, yes

「無常感」とが逆の諦めの境地。ある意味の「悟り」なのかもしれません。
何かが自分を、状況を変えてくれるのを待っているけど、自分からは動こうとしていない。

Sittin' here resting my bones
And this loneliness won't leave me alone
It's two thousand miles I roamed
Just to make this dock my home

ここでも「孤独」と「無力感」が歌われています。故郷を離れてずっと彷徨って、この波止場にたどり着いて、いちおう安住の地にしたけど、これから先は分からないし、どこかへ流れていくかもしれない・・・

1967年の米国西海岸は「Summer of Love」ムーブメントが盛り上がっていて、社会からドロップアウトしてヒッピーになる連中、LSDやドラッグで現実逃避すること、米国流のヨガやメディテーションで精神世界に接近しようとする若者たちも出現していました。そんな時期にそういう喧騒とは離れて、ある意味「大人」っぽい境地で、しかし「社会に馴染めない」共通点は抱えている様子を、穏やかな声で歌ったこの曲が多くの人に聴かれたのは不思議な気もします。

ポイント3:Booker T. & the M.G.'s

オーティスと一緒にMonterey International Pop Festivalのステージに上がって全員スーツ姿で異彩を放っていたのが、鉄壁のバックバンドBooker T. & the M.G.'sです。Staxレコードのスタジオミュージシャンが結成したグループで、オーティスよりも前にグループとしてインストのヒット曲を放っています。

オーティスとはレコーディングでもライブステージで切っても切り離せない関係で、強靭的な粘り腰の演奏で、オーティスのとんでもないエネルギーの歌を支えていました。バンドが一体になったリズム感/グルーヴ感をコピーするのは難しいですが、

Green Onions、どこかで絶対に聞いたことのある曲です

Hip Hug-Her、これもどこかで絶対に聞いたことのある曲

Melting Pot、1971年作品


ポイント4:カバー

Jack Johnson, etc.

The Funki Ducks

Sara Bareilles、力強いスローバラードに

忌野清志郎 with Booker T. & The M.G.'s

柳ジョージ


ポイント5:Otis Reddingを聴け

Try a Little Tenderness

I Can't Turn You Loose

Hard to Handle

Monterey International Pop Festival
火の玉のようなステージング


◼️歌詞


Sittin' in the mornin' sun
I'll be sittin' when the evenin' come
Watching the ships roll in
And then I watch 'em roll away again, yeah

I'm sittin' on the dock of the bay
Watching the tide roll away
Ooh, I'm just sittin' on the dock of the bay
Wastin' time

I left my home in Georgia
Headed for the 'Frisco bay
'Cause I've had nothing to live for
And look like nothin's gonna come my way

So I'm just gonna sit on the dock of the bay
Watching the tide roll away
Ooh, I'm sittin' on the dock of the bay
Wastin' time

Look like nothing's gonna change
Everything still remains the same
I can't do what ten people tell me to do
So I guess I'll remain the same, yes

Sittin' here resting my bones
And this loneliness won't leave me alone
It's two thousand miles I roamed
Just to make this dock my home

Now, I'm just gonna sit at the dock of the bay
Watching the tide roll away
Ooh-wee, I'm sittin' on the dock of the bay
Wastin' time



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